会社四季報の見方を徹底解説、株式投資の初心者が知っておきたい基本
執筆者:川原裕也
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個人投資家が企業情報を入手する上で欠かせないと言って良いほど重要なアイテム「会社四季報」について説明します。
会社四季報は東洋経済新報社が発行している企業データブックで、全上場企業の業績や従業員数、平均年収などの概要が記載されています。
平均年収などが記載されていることから、企業のことを少しでも知るための手がかりとして就活に活用する人もいます。(ちなみに、同じく東洋経済新報社が発行しているデータブックに「就職四季報」というものもあります)
自分が保有している銘柄や、好きな会社であれば、企業の公式サイトのIRページなどから最新の動向を知ることができます。
しかし、そうではない銘柄を発掘をするためにはまず「おおまかな概要となる上辺の情報」を知ることが大切です。
会社四季報には上場している数千社の情報がすべて掲載されているので、パラパラページをめくっていくだけでも思わぬお宝銘柄の存在に気づくことができます。
実際、プロの個人投資家でも会社四季報を擦り切れるほど見ているという方が少なくありません。
今回は、会社四季報の見方や発売日などについて、詳しく解説をしていきたいと思います。
目次
初心者でも理解できる会社四季報の見方
会社四季報の企業ページには数多くの情報がぎっしりと詰まっていますが、1つずつ理解していけばさほど難しくはありません。
むしろ、会社四季報の見方を一通りマスターしておけば、投資判断に役立つ「指標」なども理解できるようになります。一度覚えておくと一生ものと言って良いほど役立つ知識ばかりなので、自分の好きな銘柄の情報を見つつ、会社四季報の読み方をマスターしてください。
証券コード
すべての上場企業には4桁の証券コードが割り当てられています。
ヤフーファイナンスなどで企業の情報を調べたい時、銘柄名を入力することもできますが、大抵の場合は4桁の証券コードを入力するだけでも、その企業の情報にアクセスできます。
保有銘柄やお気に入りの会社の証券コードを覚えておくと、何かと便利です。
例外はあるものの、証券コードは東証が定めた33業種に基づいて割り振られているので一定の法則性があります。
例えば、トヨタ自動車は7203、日産は7201、ホンダは7267と言った具合に、「輸送用機器」業種に割り当てられている銘柄の証券コードは「72」から始まる事が多いです。
決算
上場企業の多くは3月決算です。会社四季報に「3月」と書かれている場合は、3月末が決算日であることを示します。
決算月は企業によって様々ですが、ベンチャー企業などは12月決算が多いです。また、イオンなどの小売業は2月決算が多いです。
銘柄によっては決算日を「◯月◯日」と具体的に定めているケースもあります。例えば、証券コード9843のニトリの決算日は2月20日なので、四季報にもそのように記載されています。
設立
会社の設立日です。株式会社として法人登記した日が記載されます。
注意したいのは、経営統合などによって2社が合併し、新会社が誕生した場合です。このようなケースでは、新会社が発足した日が会社設立日となるため、歴史のある大手企業でも会社設立日が浅くなっています。
上場
証券取引所に上場した日付が記載されています。
たまに、東証マザーズ市場から東証一部に指定替えするケースもありますが、このような場合でもこの日付は変わりません。
最初に証券取引所に上場した日付がそのまま残ります。
特色
その銘柄についての簡単な概要が書かれています。
毎期の会社四季報でコメント文が変わるので、個人的には一番最初に目が行く部分の一つです。
連結事業
連結事業の構成比率と売上高営業利益率を示しています。その企業がどんな事業を展開しているのかがすぐにわかる重要な項目です。連結事業なので、連結子会社などの事業もすべて含まれているデータとなります。
多くの上場企業は複数の事業を展開しています。記事執筆時点のトヨタの四季報には、
自動車91(9)、金融7(18)、他2(6)
と書かれています。
これはトヨタの場合、自動車関連事業が売上の91%を占めていて、その事業の売上高営業利益率が9%であることを示しています。同じように、売上構成比率は7%と小さいですが利益率の高い金融事業をやっていることもわかります。
トヨタは、連結子会社に「トヨタファイナンス」というクレジットカードや自動車ローンを手がける事業をやっているので、それが金融事業にあらわれています。
大手電機メーカーのソニーも、映画等を手がけるソニー・ピクチャーズや、金融事業となるソニー銀行、ソニー損保などを手がけていますよね。会社四季報の連結事業の項目を見ると、それらの事業の売上比率や利益率がわかります。
連結事業の項目を見ると、「売上のメインになっているのはA事業だけど、その事業はほとんど利益が出ていなくて、実際に利益貢献しているのはB事業だ」というようなケースをすぐに見抜けます。
海外
海外売上高比率を示しています。
例えば、トヨタ自動車(7203)の記事執筆時点の海外売上比率を見てみると、「78 <16.3>」と書かれています。これは、2016年3月末時点での海外売上比率が78%だということを示しています。トヨタは売上の大半を海外であげているということですね。
国内での事業が中心で、海外売上がほとんどない銘柄は、この項目は省かれています。
業種
東証が定めた33業種のうち、いずれかが記載されています。
概ねその企業の業種を反映していますが、あらゆる上場企業が33業種の中のどれかに強制的に分類されるので、参考程度という感じです。
例えば、ケネディクス(4321)は不動産事業をメインにしている会社ですが、会社四季報には「サービス業」と書かれています。
東洋経済新報社のコメント
会社四季報を発行している東洋経済新報社のコメントが書かれています。
「新規事業に投資している」とか「赤字から脱出できずにいる」といったコメントが、中立的な意見として書かれています。
会社四季報は記者が実際に取材をして制作しているので、どこにも出回っていないような情報が記載されていることも珍しくありません。
「特色」の部分と合わせて、毎期ごとにコメントは変わるので、一番最初にチェックしておきたい部分でもあります。
本社
本社の住所や電話番号が記載されています。
従業員
連結の従業員数と単独の従業員数を示しています。
例えば、ソフトバンクグループ(9984)は記事執筆時点で連結の従業員数が63,591名です。これに対して単独の従業員数は199名となっています。
ソフトバンクのような大企業の従業員数が199名?と思われるかもしれません。
これは、ソフトバンクが持株会社制を採用していることで起こる現象です。本社機能ではほとんど事業を行わない仕組みをとっているので、199人でも十分です。
ソフトバンクの携帯事業などは「ソフトバンクモバイル株式会社」が担当しているため、そこで働く従業員は連結子会社の部分に割り当てられます。
上場企業の場合、連結子会社が複数あることも多いので、従業員数にしても業績にしても、すべて「連結」で確認することをおすすめします。
また、従業員の平均年齢や平均年収も公開されています。
証券
株式に関する内容が記載されています。
「上」は上場している証券取引所を示しており、「東京」と書かれていれば東京証券取引所に上場しているという意味です。
「幹」は幹事証券を示しており、その企業の上場をお手伝いをした証券会社名が記載されています。
「名」は株主名簿管理人のことで株主名簿の管理を行う金融機関の名前が記載されます。大抵は信託銀行がこの業務を担います。
「監」は監査法人です。
銀行
その企業が取引している銀行を示しています。
ベンチャー企業等の場合、銀行が1社だけということも珍しくありません。「この企業のメインバンクは◯◯銀行なのか」というようなことがわかります。
URL
企業サイトのURLが記載されています。
株式
発行済株式数と売買単位が書かれています。
[貸借]と書かれている銘柄は、貸借銘柄として空売りができます。[優待]と書かれている銘柄は、株主優待がある企業です。
また、時価総額の隣に[225]と書かれている銘柄は、日経225銘柄に採用されていることを示します。
時価総額は企業規模を大まかに把握する上で役立つ指標です。
また、発行済株式数が少なく浮動株比率が小さい銘柄は逆日歩が付きやすい特徴があります。
財務
企業の総資産や資本金はここに掲載されています。
自己資本比率や有利子負債(借金)などは確認しておいた方が良いと思います。
有利子負債が0となっている会社は無借金経営ということです。
指標等
ROE、ROAなど、投資の時に役立つ主要指標が示されています。
ROEの意味や活用法についてはこちらの記事で明らかにしています。
あわせて読みたい:
ROE(自己資本利益率)とは、ウォーレン・バフェットが好む理由と問題点
キャッシュフロー
財務3表の1つであるキャッシュフローがまとめられています。
営業キャッシュフローは本業によって稼いだお金で、一般的にはプラスです。営業キャッシュフローが3期連続マイナスになる企業は危険と言われます。
投資キャッシュフローは設備などを購入すればマイナス、売却するとプラスになるので、一般的にはマイナスです。
財務キャッシュフローは銀行などから調達したお金です。お金を調達すればプラス、返済すればマイナスです。
現金等は、企業が保有している現金を示します。
カッコ内は前期のキャッシュフローを示しています。
あわせて読みたい:
営業キャッシュフローとは?計算方法と直接法・間接法の違いをわかりやすく
株主
大株主の一覧と保有株数、そして保有株比率がまとめられています。
その下に
- 外国:外国人持株比率
- 投信:投資信託の保有比率
- 浮動株:株式市場に出回っている株
- 特定株:創業者や親会社の持ち分など基本的に市場に出回らない株
が記載されています。
発行済株式数が多くても、特定株が大半を占めている銘柄は、流動性が低いです。
連結
主な連結子会社がリストアップされています。
業績
過去の売上や営業利益といった業績がまとめられています。
「連」は連結決算を示し、「中」は中間決算を表しています。
また「予」が付いている未来の業績は、東洋経済新報社による業績予想であり、会社側が公式に発表しているものではありません。
会社側が公式に発表している業績予想は最下部の「会」の部分です。
配当
過去の配当金の実績と将来の予想です。
前述の「業績」欄にも1株あたりの配当金が記載されています。
しかし、業績欄の配当金は「年間配当」を示しています。企業の中には中間決算と本決算の年2回に配当金を出すところも多いです。
過去の配当実績を見ることで、配当金は年1回しか出さないのか、年2回に分けて出すのか、または業績に関係なく無配当の経営方針なのかわかります。
配当予想は東洋経済新報社の記者による予想です。
また、予想配当利回りやBPS(1株あたり純資産)も記載されています。
資本異動
資本異動の項目には、過去の発行株式数の増減が記録されています。
例えば、公募増資を行うと発行株式数は増えますし、自社株買いをして買った自社株を消却すると発行株式数は減ります。
また、株式交換によって企業買収をした場合も発行株式数は増えます。
- 公:公募増資
- 三者:第三者割当増資
- 消却:自社株買い後に金庫株を消却
- 交換:株式交換による買収
格付
格付けを取得している会社は、その格付が記載されます。
業種
東洋経済新報社が設定した、より具体的な業種とその業界での時価総額の順位を掲載しています。
比較会社
類似企業が記載されています。
四半期進捗率
上場企業は四半期決算を採用しているため、3ヶ月に1回の決算を行います。
例えば、3月決算の会社なら
- 4-6月 第1四半期(通称1Q)
- 7-9月 第2四半期(通称2Q・中間決算)
- 10-12月 第3四半期(通称3Q)
- 1-3月 第4四半期(通称4Q・本決算)
となります。
一部の企業は本決算を発表するタイミングで、来期の業績予想を出しています。
季節に売上が左右されない業種の場合、1Qで業績予想に対する売上進捗率25%、2Qで50%、3Qで75%、4Qで100%となるのが普通です。
1Qの時点で進捗率が25%を超えている場合は、予想よりも順調だと考えられますし、逆に25%を下回っていれば出遅れていると判断できます。
会社四季報の場合は、今期の進捗率が記載されるのと合わせて、過去3期の平均進捗率が記載されています。
企業の中には、進捗率が4Qに偏重するなど、季節によって進捗率が偏るビジネスをおこなっているところも多いのですが、過去3期の平均と比較することで、この要因を加味した上での判断ができます。
役員
その企業の社長をはじめ、役員の名前が並んでいます。
会社四季報の発売日は年4回
名前のとおり、会社四季報は「春・夏・秋・冬」の四季に合わせて年4回発売されます。
- 春版 3月15日
- 夏版 6月15日
- 秋版 9月15日
- 冬版 12月15日
※発売日は前後する場合があります。
郵送で年間購読していると、発売日の1日前ぐらいに自宅に配送されるのでおすすめです。書店でも1日前から置いてあるところはあると思います。
ライバル誌である日経会社情報の存在
会社四季報とあわせて同じく「春・夏・秋・冬」の年4回発行されているのが、日経会社情報です。
日経会社情報も会社四季報と同じで、上場企業のデータブックとなっています。
違うのは、発行元が東洋経済新報社ではなく日本経済新聞社であるということ。
四季報派と日経会社情報派に分かれますが、圧倒的にシェアが高いのは会社四季報です。
以前は、ダイヤモンドZaiなどでおなじみのダイヤモンド社が「株」データブックという第3の企業情報データブックを発行していたのですが、こちらは現在休刊となっています。
興味のある人は、両方手にとって試し読みしてみても良いと思います。自分にとって読みやすい情報誌の方が、投資にも役立つと思います。
四季報速報という早耳情報がアツい
会社四季報の発売日は3月・6月・9月・12月ですが、発行前に「四季報速報」と言う名称で発売前の情報を一部見ることができます。
四季報に掲載されるであろうほぼ確定的な情報を先取りできるので、投資情報としてはかなり活用できると思っています。
四季報速報を見る方法は2つあります。
- 会社四季報オンライン(有料)
- ネット証券が配信する会員向けニュース(無料)
楽天証券などに口座開設をしていれば、その銘柄のニュース一覧に【四季報速報】として最新版の情報が飛んできます。コストをかけなくても取れる情報なので、ぜひチェックしてみてください。
会社四季報をネットで見る方法
会社四季報の見方をまとめます。
東洋経済新報社から購入する
会社四季報の発行元である東洋経済新報社は、様々な形で会社四季報を発行しています。
通常版・ワイド版
書店で購入できます。ワイド版の方がサイズが大きく文字が見やすいです。
CD-ROM
コンピューターにインストールして使うタイプの四季報です。価格は高いですが、多彩な分析機能ができプロ投資家の愛用者も多いです。ダウンロード購入ができます。
スマホアプリ
iPhone・Android用のスマホアプリです。基本無料ですが、最新版の四季報を閲覧するには有料課金が必要です。
会社四季報オンライン
オンライン版でWEBページから閲覧できます。データ量が多いのがメリットです。価格はプランによって異なりますが、最低でも月額1,100円(税込)~なのでやや高めです。
ネット証券なら無料で閲覧できます
ネット証券に口座開設をすると、会社四季報は無料で閲覧できます。
口座開設には費用がかからないので、お金をかけずに最新版の四季報をチェックしたい方におすすめの方法です。
会社四季報が閲覧できるネット証券は以下の通りです。
証券会社が配信している会社四季報は、発売日と同時に自動的に最新版に切り替わるので、常に最新の四季報を確認することができます。
会社四季報についてわからないことがあればいつでも質問してください。また、間違いの指摘などもお受けいたします。
質問の受付はこちらのフォームよりお願いします。
▼会社四季報オンラインのプレミアムに登録しました。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
こちらの記事にコメントが投稿されました
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