鎌倉投信「結い2101」の評判、ひふみ投信と利回りを比較してわかったこと
執筆者:川原裕也
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投資信託を運用する資産運用会社には、大きく分けて2つの種類があります。
1つは「大手金融機関」に属する資産運用会社で、「三井住友DSアセットマネジメント」や「大和アセットマネジメント」などがあげられます。
そしてもう一つが「独立系の資産運用会社」と呼ばれる存在で、「鎌倉投信」や「ひふみ投信」などが代表的です。
鎌倉投信のような独立系の資産運用会社は、大手金融機関には属していませんが、「投資家目線で作られた投資信託」であることが多いため、
- 投資状況の説明の透明化
- はっきりとしたコンセプトに基づいた投資
- 低コストでの運営
が徹底されており、個人投資家や投信ブロガーから支持されています。
また、最近では、一定の基準を満たした投資信託にのみ「つみたてNISA」に採用できるという方針が打ち出されましたが、独立系資産運用会社の投資信託はいずれも低コストで運営されているため、つみたてNISAの商品にも問題なく採用されています。
今回はその中の1社である、鎌倉投信の「結い2101」という投資信託について詳しくまとめます。
鎌倉投信は、テレビ番組「カンブリア宮殿」でも取り上げられた実績があります。
目次
良い会社を支援する投資信託
世の中を良くしたいと考えている起業家がいます。そうした起業家に「投資」という形で支援を行うのが、株式投資の本来の意味です。
株式投資によってその企業の株を買うということは、起業家と同じ船に乗ってビジネスをより良くしていくということでもあります。
起業家は投資家から集めたお金(と多くの投資家から支持されているという信頼)を武器に、銀行などから借入をしたり、取引先との信頼を厚くします。
その結果、起業家1人では実現できなかったビジネスを、大きく飛躍させ、成功に導くことができます。
このように、社会が良くなるためには起業家が必要であり、起業家が成功するためにはそれを支援する投資家が必要であるということです。
鎌倉投信の「結い2101」はまさに、こうした「良い会社」を支援するために作られた投資信託です。
結い2101の特徴として掲げられている5つのポイントの1つに、以下のようなコメントがあります。
2. いい投資は社会的利益にも寄与します
「いい会社をふやしましょう!」これが鎌倉投信の合い言葉です。 いい会社が増えれば、社会に様々な価値が創造され、雇用が生まれ、その会社に関わる多くの人の幸福感も拡がります。 いい投資は、自分への利益をもたらすだけではなく、社会的な利益も増やすことにもなるのです。
また、短期的な利益を追求するタイプの投資信託ではなく、長期投資によって良い会社をじっくり育てていく旨の考え方も示されています。
みなさんからお預かりしたお金をもとに、これからの日本にほんとうに必要とされる“いい会社”に投資をし、その株式を長く保有し続けることで資産を増やします。鎌倉投信が考える“いい会社”とは、短期的な利益追求や株価を目標とするような会社ではありません。木が年輪を刻むように、社会との調和を図りながらゆっくりと長い時間をかけて成長する会社です。
長期的に良い会社に投資するスタイルは、コモンズ投信の「コモンズ30ファンド」に似ています。
ちなみに、鎌倉投信の「結い2101」の「2101」は、2101年に向けて投資をしていくという意味があり、100年スパンで成長する「本当に良い会社」を発見し投資するのが同社の運用方針です。
結い2101の特徴
長期的なビジョンを持った運営を行う「結い2101」ですが、過去の運用実績を見る限り、「バイ・アンド・ホールド(買って保有し続ける)」戦略ではなく、定期的にポートフォリオの中身を入れ替えていることがわかります。
また、投資対象は日本企業のみですが、投資信託の目論見書では「日本を含むグローバル」となっています。
投資対象は「良い会社」となりますが、その定義として以下のいずれかにあてはまる会社に投資を行います。
- 人
- 人材を活かせる会社
- 共生
- 循環型社会を創造する会社
- 匠
- 日本の匠な技術・感動的なサービスを提供する会社
結い2101の投資判断のプロセスは以下の通り。
1.上場企業 約3,600社、非上場企業 約5,000社が投資対象
投資対象に非上場企業が含まれているという点が大きな特徴。
↓
2.「人・共生・匠」のいずれかに該当しているか
鎌倉投信が掲げる「人・共生・匠」な会社であるかどうかの判断。
↓
3.割安・財務健全性の判断
もちろん、コンセプトだけでなく、株価が割安かどうか、財務がしっかりしているかなどの判断も行う。
↓
4.流動性
資金量の多い投資信託が株式を売買しても問題のない流動性(取引量)が確保されているかどうかの判断。
独立系資産運用会社の中でも、「未上場企業に投資する」というのは結い2101ならではの特徴だと思います。
最新の目論見書を見ても、ポートフォリオ全体の約5%程度を非上場株に投資していることがわかっています。
分配金は基本的に出さない
鎌倉投信の結い2101は、基本的に分配金を出しません。
換金をしたい場合は、保有する投資信託を一部解約することで、いつでもキャッシュ化できます。
投資信託では、分配金を発生させるとその金額に対して「課税」されます。つまり、分配金を出すことで複利効果を最大にできないのです。
※補足:配当落ち後(分配金落ち後)の基準価額が、取得した平均基準価格を下回る場合は「元金払戻金(特別分配金)」となり、非課税です
複利効果は時間とともに大きな結果をもたらしますから、結い2101が分配金を出さない(または自動的に再投資する)という判断は悪くないと思いますし、他の独立系資産運用会社の投信でも基本的に分配金は出していません。
2013年に一度だけ1万口あたり500円の分配金を出した実績がありますが、分配金は自動的に再投資される仕組みとなっています。
販売方法は直接販売のみ
通常、投資信託は証券会社を通じて購入します。
しかし、鎌倉投信の結い2101は証券会社では販売されておらず、鎌倉投信のホームページに直接アクセスして、資料請求をし、口座開設する必要があります。
独立系の資産運用会社の中でも、同じく直販にこだわっているのが「さわかみ投信」です。
一方で、「コモンズ投信」や「ひふみ投信」は、直接販売と合わせて証券会社や銀行を通じた販売も行っています。
この点は、資産運用会社によって対応が分かれています。
独立系の資産運用会社は、倒産を心配する方もいると思います。
しかし、投資信託はすべて資産運用会社の財産と、顧客の預かり資産を切り離して管理する「分別管理」が徹底されています。
仮に、鎌倉投信の業績が悪くなって倒産したとしても、顧客の預かり資産は無傷です。顧客資産の管理は三井住友信託銀行が行っています。
ちなみに、投資信託は元本保証ではありませんので損益によって生じたマイナスは補償されません。
低い信託報酬で運用
※販売会社を通さないことで信託報酬を低く抑えています
結い2101は特定の指数に連動しない「アクティブファンド」です。
アクティブファンドは総じて手数料(信託報酬)が高いのが特徴ですが、鎌倉投信の結い2101は直販にこだわっていることもあり、低コストなアクティブファンドとなっています。
低コスト運営が評価され、結い2101は「つみたてNISA」にも採用されています。(つみたてNISAは、金融庁が示した一定の基準を満たす良い投資信託しか取り扱うことができない仕組みです)
▶鎌倉投信 結い2101の手数料
- 購入時手数料:0円
- 信託報酬:年率1.1%(税込)
- 信託財産留保額:0円
低リスクでの運用を徹底
結い2101で非常に特徴的なのは「キャッシュ比率の高さ」です。
月次報告書などに記載されている運用状況を見ると、株式が約60%、債券が約5%、キャッシュが約35%程度での運用が続いています。(2017年9月時点)
キャッシュ比率が高いということは、顧客から預かった資産をそのまま(1円の利益も生み出さない状態で)持て余しているということです。
これは、一般的な投資信託からすると「ちゃんと仕事をしろ!」とクレームが入ってもおかしくない状況なのですが、鎌倉投信ではキャッシュ比率について以下のように説明しています。
流動性の低い銘柄が入っていると資金化するのが大変になります。そこで「結い 2101」では長期的には目標とする安定的なキャッシュ比率を30%(株式組み入れ比率70%)として、運営していく予定です。
東京の株式市場の価格変動リスクはだいたい20%程度。
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現在の「結い 2101」の価格変動リスクは実績で9%台。運用開始以前からお伝えしている価格変動リスクを10%以内にするという運用方針で、これからも安心をお届けしながら、いい会社を応援する運用を実践していきます
鎌倉投信はあえて高いリターンを目指していません。投資信託なので元本保証は出来ませんが、悪い環境下でもマイナスを極力抑え、今日よりも明日、明日よりも明後日と少しずつ資産を増やしていく年輪運用を目指しています。
つまり、鎌倉投信の結い2101はリターン追求よりもリスクを抑えた運用を目指すので、キャッシュ比率は30%程度保つ方針だということです。
これは、私たち顧客としては納得できる人、できない人に大きく分かれそうです。
実際、鎌倉投信の結い2101の過去5年間の実績を見るとTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価に劣っています。
- 青:結い2101
- 赤:日経平均株価
- 緑:TOPIX
※記事執筆時点(2017年9月26日)時点の情報です
一般的に、「TOPIXを下回る運用をするのはプロとして失格」と言われます。
実際、鎌倉投信の結い2101は「コンセプトは良いけど結果(リターン)がついてきていない」という批判の声があることも事実です。
なぜ、結い2101はTOPIXや日経平均株価に負けてしまうのか。その理由は、先ほど説明した「7割の力で戦い3割の現金を温存する」という戦略に基づいているからです。
続いて、結い2101の利回りやリターンについて詳しく見ていきます。
鎌倉投信の結い2101とひふみ投信の利回りを比較
同じく独立系の資産運用会社であるレオス・キャピタルワークスが運営するのが「ひふみ投信(ひふみプラス)」という投資信託です。
ひふみ投信は圧倒的なリターンを生み出していることから、個人投資家にも人気の投資信託です。両者とTOPIXを比較すると、下記のようになります。
- 赤:ひふみ投信
- 緑:TOPIX
- 青:結い2101
ひふみ投信はTOPIXを圧倒的に上回るリターンを続けていますが、結い2101はTOPIXを下回っています。
独立系資産運用会社の投資信託の利回り(年率リターン)を比べてみました。
ファンド名 | 1年 | 3年 | 5年 |
---|---|---|---|
結い2101 | 15.67% | 6.46% | 11.73% |
ひふみ投信 | 39.55% | 18.69% | 27.32% |
コモンズ30ファンド | 23.31% | 11.87% | 18.64% |
さわかみファンド | 21.32% | 9.10% | 19.49% |
TOPIX | 24.16% | 10.26% | 19.49% |
※年率リターンです
※TOPIXのリターンはETF「上場TOPIX」を採用
※いずれも記事執筆時点(2017.9.26)の情報です。
TOPIXを上回るリターンについては「赤文字」で示しています。
上記の表を見る限り、1年間、3年間、5年間のすべての期間において年率リターンがTOPIXを上回っているのは「ひふみ投信のみ」となっています。
一方で、鎌倉投信の結い2101は、1年、3年、5年のいずれもTOPIXを下回る結果となっており、これなら、TOPIXのETFでも買っておいた方が良いという残念な結果となっています。
シャープレシオで比較
続いて、シャープレシオで比較してみたいと思います。
シャープレシオとは、「リスク1単位あたりのリターン」のことで、リスク考慮済みリターンだと考えていただければ良いと思います。
わかりやすく説明すると、大きくレバレッジをかけてリスクを取れば、当然「ハイリスク・ハイリターン」な投資ができます。
しかし、前述の利回り比較では、年率リターンだけを示しているため「リスク」がどれくらい内包されているのかは見えにくいです。
また、鎌倉投信が低リスクな運用を方針として掲げているという内容は、「シャープレシオを最大化することを目的としている」と言い換えることができます。
リスク考慮済みのシャープレシオで比較してみると下記のような結果となります。
ファンド名 | 1年 | 3年 | 5年 |
---|---|---|---|
結い2101 | 7.16 | 0.88 | 1.37 |
ひふみ投信 | 6.28 | 1.42 | 1.88 |
コモンズ30ファンド | 4.01 | 0.76 | 1.25 |
さわかみファンド | 3.22 | 0.58 | 1.26 |
TOPIX | 3.37 | 0.64 | 1.20 |
※TOPIXのリターンはETF「上場TOPIX」を採用
※いずれも記事執筆時点(2017.9.26)の情報です。
同じく、TOPIXを上回るシャープレシオについては「赤文字」で示しています。
一部、TOPIXよりもシャープレシオが下回っているファンドがありますが、基本的にはすべてのファンドが対TOPIX比で長期のシャープレシオを上回っており、「TOPIXを上回る、安定的なリターン」を出せていることがわかります。
投資のプロはお客さまの大切な資産を預かっている手前、無理な博打は打てず、安定性を非常に重視して運用しているということです。
年率リターンの比較では、結い2101は最も低い評価であったことは事実です。
しかし、シャープレシオで比較してみると「最も優秀」もしくは「ひふみ投信に次いで優秀」となっています。
ひふみ投信がモンスター級のファンドであることは異論がないと思いますが、シャープレシオで見ると「鎌倉投信」も良い運用ができていることがわかります。
結い2101の評価
TOPIXを下回るリターンによって、何かと批判も多い結い2101ですが、シャープレシオを含めて比較すると優秀な投資信託であることがわかりました。
これは、リターンを追求するか「リターンだけでなく安定性も気にするか」という投資方針の違いなので、どちらが良いかは私たち投資家が決めることです。
鎌倉投信は当初から、「リターンを追求するのではなく、リスクを抑えた運用をする」としており、その結果として「30%以上の現金を確保する」ということも戦略的に行っています。
そういう意味では、鎌倉投信の運用が下手ということではなく、鎌倉投信はあくまでも戦略通りの投資を実行できているわけです。
結い2101を選択するかどうかは、この点をしっかりと理解できるかどうかがポイントかと思います。
ただ、どれだけ「リスクを考慮した運用をしている」と言っても、やはり投資家としてはリターンが欲しいもの。
ひふみ投信など他のファンドが鎌倉投信よりも高い利回りをあげているとなれば、そちらに資金が集まるのも当然のように思いますし、私自身もどうせなら少しでも多くのリターンを得たいと思っています。
そういう意味でも、結い2101には「TOPIXを上回るパフォーマンスを出しながらシャープレシオは低い」という結果になるまで頑張って欲しいです。
一部の証券会社では、投資信託を保有するだけで毎月継続的にポイントがもらえます。
受け取ったポイントは、実質的な運用コストの低減につながります。
同じ投資信託の商品を買うなら、ポイント還元が受けられる証券会社での購入がお得です。
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1件のコメント
いつも楽しく拝見してます。
最後のシャープレシオが低くていいといのは少し違うかなと。
というのもレバレッジをきかせるなり外物に為替ヘッジをせず投資するなりすれば簡単に対TOPIX高リターン高リスクは実現できるからです。
リスク選好的な投機家は高いボラを好みますが、リスク回避的な投資家が好む効率的な運用、すなわち高シャープレシオ高リターン運用は、低シャープレシオ高リターンの運用よりはるかに難しいです。
ボラが高くていいなら博打を打ち続ければいずれ大勝ちするときもあるが、確実に儲け続けたいならリスクのコントロールとリターンの追求を両立させなければならない、その方が当然難しいということになります。