未上場の私募リートの利回りと投資口価格
国内リートには、東証REIT市場に上場している「Jリート(上場リート)」と未上場の「私募リート(非上場オープンエンド型不動産投資法人)」があります。
私たち個人投資家が自由に売買できるのは上場しているJリートの方であり、私募リートは一般的ではありません。
というのも、私募リートは主に金融機関や生命保険会社といった機関投資家向けに証券を販売することが多く、個人投資家を含めた一般公募は行わないことがほとんどです。
私募リートの情報サイトも存在しますが、その内容は非公開であり適格機関投資家のみが、情報共有できるようになっています。
また、近年では個人投資家向けの私募リートとも言える「不動産クラウドファンディング」が普及してきました。不動産クラウドファンディングを活用することで、1万円程度の少額からリート投資に参加することが可能です。
目次
私募リートの特徴
私募リートは上場リートとどう違うのか?
利回りや投資口価格はどれくらい?と言った、私募リートの特徴についてまとめます。
投資口価格は1億円規模
また、上場リートは株価と同じく刻一刻と投資口価格が変動しますが、私募リートは年間数回の決算時点でのみ投資口価格が決まるので、安定性が高いです。
安定性が高いと言うとメリットのように思えますが、私募リートは流動性が低い(誰にでも簡単に売れるわけではない)ので、投資口価格が大きく下落してしまっても、手放すのは難しいというデメリットもあります。
上場リートとの違いとして、1物件あたりの取得価格は小さくなりがちです。上場リートでは数百億円の大規模物件をポートフォリオに組み入れることも多いですが、私募リートの場合は上場リートと比較して運用資産残高が小さくなるため、数十億円規模の物件が中心となります。
不動産証券化協会の調査データ等によれば、上場リートがポートフォリオに組み入れている投資不動産の1物件当たりの規模は、平均で約40億円となっています。私募リートでも、組み入れられる不動産の取得価格は数十億円規模の物件が一般的だと考えられます。
利回りが特に高いというわけではない
「非上場」と聞くと「公にはならない美味しい裏話」のように思えますが、私募リートだからといって特別に分配金利回りが高いわけではありません。
2015年3月時点での情報となりますが、平均利回りは4%程度、LTVは40%程度となっており、安定した運用を行っている私募リートが多いことがわかります。
2012年の記事となりますが、東洋経済オンラインに分かりやすい比較表が載っていました。私募リートと合わせて私募不動産ファンドとの違いも掲載されています。
私募リートの銘柄まとめ
実際にどのような私募リートがあるのか調べてみたところ、2015年3月時点で13銘柄の私募リートが存在していました。
- 野村不動産プライベートリート投資法人
- 日本オープンエンド不動産投資法人(三菱地所)
- 三井不動産プライベートリート投資法人
- ジャパン・プライベート・リート投資法人(ゴールドマン・サックス)
- DREAMプライベートリート投資法人(三菱商事)
- 大和証券レジデンシャル・プライベートリート投資法人
- ブローディア・プライベートリート投資法人(東急不動産)
- ケネディクス・プライベートリート投資法人
- 丸紅プライベートリート投資法人
- 東京海上プライベートリート投資法人
- SCリアルティプライベートリート投資法人(住友商事)
- 日本土地建物プライベートリート投資法人
- SGAM投資法人
佐川急便が物流系の私募リートを運用しているのが興味深いですね。
REIT市場の成長によって、私募リートも順調に資産規模を拡大していることがわかります。
不動産クラウドファンディングの衝撃
これまで、未上場の私募リートに個人投資家が参加することは困難でした。
しかし、それに代わる投資方法として、最近は「不動産クラウドファンディング」が注目されています。
不動産クラウドファンディングと私募リートを比較すると以下のようになります。(不動産クラウドファンディングも私募リートの一種と言えますが)
▶不動産クラウドファンディングの特徴
1.個人投資家が1万円程度から参加できる
本記事でも述べている通り、従来の私募リートは機関投資家向けの販売がほとんどで、最低でも投資額は1億円からというのが普通でした。
しかし、不動産クラウドファンディングは個人投資家が1万円程度から、間接的に不動産に投資できます。
2.1つのファンドで1つの物件に投資
不動産クラウドファンディングは1つのファンド自体が小さく、取得する物件も中古型の案件が多いです。
また、1つのファンドで1つの物件に投資をするため、投資家が自ら「どの物件に投資をするか」を決められます。
一方で、私募リートやJリートは、1つの巨大なファンドが巨額の資金をもって、複数の大型物件を束ねてポートフォリオにして運用します。
中には、決して良いとは言えない物件も混ざっていることがあります。
3.レバレッジをかけない
Jリートや私募リートは、出資額に対して50%程度のレバレッジ(借入)をかけて投資をします。
しかし、不動産クラウドファンディングは基本的にレバレッジをかけず、投資家から集めた現金で物件を購入・所有することが多いです。
4.価格変動がない
私募リートも不動産クラウドファンディングも、Jリートのような価格変動がないので安心です。
不動産クラウドファンディングはすでに一部の上場企業が取り組みを始めています。
オーナーズブック
不動産投資分野で上場を果たしたロードスターキャピタル(3482)は、以前からソーシャルレンディング「オーナーズブック」を手がけています。
オーナーズブックは、不動産担保ローンを希望する事業者と投資家をマッチングさせるサービスで、基本的には「不動産担保付き債券」の投資に近い商品です。
しかし、すでにオーナーズブックは「投資型の不動産クラウドファンディング」を組成することを発表しています。
オーナーズブックには私も参加していますが、不動産担保がついて利回り5%前後の投資が行えるので良いサービスだと感じています。
あわせて読みたい:
オーナーズブックの不動産投資は評判?都心マンションに1万円から投資
TATERU FUNDING
TATERU FUNDING(タテルファンディング)は、TATERU(1435)が展開している不動産クラウドファンディングです。
TATERU社は「TATERU」ブランドで投資用アパートを販売している会社です。
タテルファンディングは、この投資用アパートを1口5万円で証券化し、複数の投資家で共同保有する仕組みです。
利回りは5%程度、運用期間も1年程度となっており、レバレッジをかけないで不動産を保有するのが最大の特徴です。
最近では個人投資家の人気も高まってきており、投資案件の募集がスタートするとすぐに予定募集額が埋まってしまうほどです。
タテルファンディングについては「不動産投資を諦める前に、タテルファンディングの共同投資という方法も」という記事で詳しく紹介しています。
ビットリアルティ
ビットリアルティは、不動産投資ファンドを運営する大手の「ケネディクス(4321)」と「野村総合研究所(4307)」が共同で設立した会社です。
まだサービスがリリースされていないため詳細は不明ですが、ビットリアルティは不動産クラウドファンディングに特化してビジネスを展開していくとのこと。
ブルームバーグの報道内容をまとめると、
- 1口1万円から投資できる
- ネット申し込みだけで購入可能
- 運用期間は半年から2年程度
- 利回りは4%以下を想定
となっています。
機関投資家向け組成の私募ファンドにクラウドファンディングの投資家も参加できる
と書かれていることからも、「私募リートの小口化」がフィンテックによって現実のものになろうとしていることがわかります。
ビットリアルティの詳細解説はこちら。
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bitREALTY(ビットリアルティ)をホンネで評価、不動産投資の新しいカタチ
私募リートの話が来たら要注意
これまでお話をしてきたように、私募リートは機関投資家向けに販売されることがほとんどです。よほどの富裕層であれば別なのかもしれませんが、基本的に一般の個人投資家が投資する案件ではありません。
私募リートに参加してみたい、少額から不動産投資を行いたい場合は上場企業などの大手が運用している「不動産クラウドファンディング」の活用をおすすめします。
もし、私募リートの投資話が来たら「投資詐欺ではないか?」と疑う心を持ちましょう。私募リートの利回りが特に高いわけではないので、透明性の高い上場リートでも、十分資産運用はできると思います。

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最後まで読んでいただきありがとうございました
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shun さんがコメントしました - 2019年2月2日
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kazmi さんがコメントしました - 2019年1月28日
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