太陽光発電所に投資して安定利回りを確保する東証インフラファンドまとめ
執筆者:川原裕也
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安定した分配金を生み出す投資の一つに「J-REIT(上場不動産投資信託)」があります。
「J-REIT」は、証券市場から集めたお金で不動産物件を購入し、保有物件から得られた賃料収入を投資家に分配するというものです。
その安定性や利回りの高さ、そして間接的に不動産投資ができるというメリットから、人気の投資先となっています。
そして、J-REITの流れを踏襲しながら新しい形の投資先としてスタートしたのが「東証インフラファンド」です。
目次
東証インフラファンドとは
東証が2015年に立ち上げた、インフラに投資することを目的とした投資信託が上場できる市場です。
2016年に第一号となる「タカラレーベンインフラ投資法人」が上場し、これから銘柄数も着実に増えてくることが予想されます。
当面は主に太陽光発電所への投資に特化したインフラファンドが上場することがわかっています。
太陽光発電ファンドの場合、仕組みはこのような感じです。
あなたは再生可能エネルギー(例えば太陽光発電)による電力の普及を望んでいます。しかし、お金がないので到底、太陽光発電のシステムは買えません。
そこで、みんなでお金を一箇所に集めて大規模なメガソーラーを買うことにしました。そして、購入・設立・運営などはすべて、太陽光発電のプロにお任せすることにしました。
あなたは太陽光発電所の運営費用の一部を負担したので、そのお礼として毎年、配当金がもらえます。事実上、大きなメガソーラーのパネル一枚分ぐらいはあなたのお金で購入されていることになるからです。
配当金の元となるのは、実際にみんなで購入した太陽光発電所が生み出した電力の売電収入です。
再生可能エネルギーは固定価格買取制度によって買取価格が決まっていますから、不動産投資と同じように、毎年安定した売電収入が見込めます。
あなたは保有している「太陽光発電所の運営権利」を売却しない限り、毎年継続して配当金を受け取る事が可能です。
自分自身の出資で、再生可能エネルギーの普及を後押しすることができます。それだけでなく、その結果生まれた収入を、配当金(分配金と言います)として、毎年受け取れます。これがインフラファンドの魅力です。
もちろん、再生可能エネルギーに限定されることなく「インフラ」であれば、どのような会社でも上場可能です。
インフラファンドの仕組み
参照:日本取引所グループ
上記が、インフラファンドの仕組みです。後述するREITも仕組みは全く同じです。ここでは、「もし東京電力が太陽光発電ファンドを作ったら?」という例で説明します。
東京電力は多くの太陽光発電所を作り、保有しています。しかし、これをずっと保有しているだけでは成長が足踏みしてしまいます。
そこで、完成した太陽光発電所を太陽光ファンドに売却して、そこで得たお金を使って新しい太陽光発電所を作ることで、成長を加速させることにしました。
上記図の「インフラの提供」を行うのは、東京電力です。東電が売却した太陽光発電所を、インフラファンドが買い取って保有します。
そのインフラファンドを設立するのは、東京電力自身(または関連子会社)です。東電自身がインフラファンドに一部を出資し、そして残りの資金を私たち投資家から集めるケースが多いです。
しかし、ルールとして、インフラファンド自体は具体的な経営ができません。そこで、「資産運用会社」を別途設立します。
インフラファンドは自分で動けないので、実際に指図をしてファンドを動かすのは、「資産運用会社」です。資産運用会社が太陽光発電所の買取や売却の決定など、ファンドの舵取りを行います。
ちなみに、資産運用会社も東京電力の関連会社が行うケースがほとんどです。
インフラファンドが保有している太陽光発電所は、その施設を必要としている人に貸し出されます。
その施設を必要としている人もまた、東京電力です。東京電力(の関連会社)が「オペレーター」となり、インフラファンドから借りた太陽光発電所を使って、実際の運営を行います。
太陽光発電所のレンタル料を、毎月賃料としてインフラファンドに支払い、インフラファンドはそのお金を投資家に分配します。
上記の図を見ると、いろいろな会社が絡んでいることがわかります。しかし、実際にはその道のプロである、ファンドを組成した会社の関連企業がすべての仕事を行うケースが多いです。
インフラは太陽光発電だけじゃない
ここまで、太陽光発電を中心に説明してきました。しかし、インフラファンドはその他にも様々な分野に応用できます。
例えば、「風力発電所」もその代表例です。もしかすると、震災の時に話題となった「地熱発電」に投資するインフラファンドも出てくるかもしれません。
その他には、鉄道や水道、道路、空港、携帯電話の電波塔などもインフラファンドの対象になると思います。例えば、高速道路だったら高速道路の料金が賃料収入の源泉となるわけです。
すでに世界ではオーストラリアやカナダのトロント証券取引所をはじめ、全50銘柄、10.4兆円規模のインフラファンドが上場しています。
ファンドの運用方針は様々です。
- 太陽光発電所だけに投資するファンド
- 太陽光から風力まで再生可能エネルギー全般に投資するファンド
- 「インフラ」であれば電力から水道までなんでも投資するファンド
といったように、それぞれのファンドが独自の運用方針を掲げ、その方針に従って投資を行います。
私たちはファンドの運用方針を見てから、どの会社に出資するか決めることができます。
上場を予定しているインフラファンド
上場を果たしたインフラファンド
現在、東証インフラファンドに上場している銘柄は以下の通りです。
タカラレーベンインフラ投資法人(9281)
メガソーラー事業を行っているマンションデベロッパー。自然エネルギーへの投資を目的とした投資法人。保有物件は太陽光発電所のみとなっています。
いちごグリーンインフラ投資法人(9282)
太陽光発電への投資を中心としており、長期的な収益予想も公開しているユニークな投資法人。J-REITよりも利回りは高めです。
日本再生可能エネルギーインフラ投資法人(9283)
太陽光発電事業を手がけるリニューアブル・ジャパンの再生可能エネルギーファンド。
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)
太陽光発電パネルメーカー大手のカナディアンソーラーが手がけるインフラファンド。投資先はもちろん太陽光発電所です。
東京インフラ・エネルギー投資法人(9285)
半導体関連事業などを手がける未上場企業、アドバンテックの子会社がメインスポンサーを務める太陽光発電ファンドです。
エネクス・インフラ投資法人(9286)
太陽光発電所を中心に、水力発電所や風力発電所への投資も検討されています。伊藤忠エネクスがメインスポンサーとなる、再生可能エネルギー全般に投資するインフラファンドです。
東証インフラファンド市場への上場を予定していると思われるファンド
前田建設工業
世界のインフラファンドビジネスで実績を持つ、オーストラリアのマッコリー(オーストラリア最大の投資銀行)と提携。
スパークス・グループ
独立系投資顧問会社。様々な分野への投資実績があり、すでにメガソーラー物件も多数保有している。
利回りはどれくらいになるか?
J-REITを意識してか、タカラレーベンインフラ投資法人の当初の想定利回りは5%程度となっていました。
上場後は株価の変動によって利回りは変わってきますが、上場時点では不動産投資法人と同じく5%前後の利回りとなる可能性が高いです。
太陽光発電所は20年間の「固定価格買取制度」があるため、収益の安定性は抜群に高いです。不動産のような空室リスクはありません。
しかし、悪天候が続いたり、台風・地震などによって物件に被害が及んだ場合は収益が悪化する恐れもあります。
もっとも、台風には耐えられるレベルで建設されていますし、地震によって被害を被るという点では不動産物件も同じです。空室リスクとの戦いになるオフィスリートなどと比べると、やはり安定性の高さは魅力だと思います。
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出資するにはどこで申し込めばいいの?
上場したインフラファンドは、上場株式と同じように売買されます。つまり、証券会社に口座開設をすれば、通常の株式と同じようにいつでも売ったり、買ったりすることが可能です。
証券会社の口座は無料で開設できます。最初は株価を眺めるための情報収集目的で口座を開くだけでも、情報はたくさん集められると思います。
手数料の安さではSBI証券のようなネット証券に優位があります。しかし、セミナーや情報収集をメインにするなら、野村證券や大和証券といった大手への口座開設も検討してみても良いと思います。
上場しているファンドは、株価(投資口価格)もリアルタイムで変動します。
▼ネット証券の取引手数料を比較した記事はこちら
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いくらぐらいから出資できる?
太陽光発電所に投資をする「タカラレーベンインフラ投資法人」の場合で、1口あたり10万円程度から投資できます。
仮に10万円を利回り5%で投資した場合、分配金として毎年5,000円の収入を得ることができます。
もし、投資資金として10万円を準備できないという場合でも安心です。
「Jリートファンド」のように、REITやインフラファンドを投資対象とするファンド(投資信託)も存在します。
このような、ファンド(投資信託)に投資するファンド(投資信託)のことを、「ファンド・オブ・ファンズ」と呼びます。
ファンド・オブ・ファンズなら、100円程度から投資が可能なので、若い方でも気軽にインフラファンドへの投資をスタートできると思います。
もう一つの方法は「J-REIT ETF」を買うことです。
ETF(上場投資信託)であれば、株式投資と同じようにいつでも自由に売買でき、また信託報酬(投資信託のコスト)も低めに設定されています。
J-REIT ETFは1銘柄あたり2万円以内で購入可能です。
また、分配金の支払月が異なる3つの銘柄を組み合わせることで、合計5万円程度で「J-REIT ETFを使った毎月分配のポートフォリオ」が完成します。
次の記事は、J-REIT ETFの全銘柄解説と、ETFの組み合わせで毎月分配金を得る方法を取り上げます。あわせてご覧ください。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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3件のコメント
太陽光発電への投資手法としては、
① 自己投資 … ある程度の資金を必要とする。またその投資費用の観点から個人では分散が図りにくく、自然災害等のリスクを負いやすいと思われる。
② 私募ファンドの利用 … 小口投資が可能で分散も効く。但し流動性(換金性)や信用性(詐欺の可能性もある。そうでなくても匿名組合だと破綻時の保証が得られない可能性あり)など過大もあり。
③ ソーシャルレンディング(SL)の利用 … 小口投資が可能。太陽光発電そのものというより、その設備投資のための融資という形態を取っているものが多い。それゆえ事業者の信用リスクを負うことになる。また満期まで解約できないのが一般的で、流動性も低い。
④ 上場インフラファンド … 今回登場。
などがありますが、上場しているインフラファンドはJ-REIT同様に東証のチェックが入りますので私募ファンドやSLよりは透明性が高くなること、それに市場で売買されるので流動性が確保されるのが大きなメリットだと個人的には感じます。
まだ市場規模が小さく、知名度が低いですが、アメリカのMLPのようにそれなりの規模に成長していくことを期待したいですね。
長期投資家です。利回りは現在6%をこえよさそうだが、20年後には電力買取価格はぐっとさがっているので、発電施設がほぼ無価値の可能性あり。個人の太陽光発電施設だと契約時に撤去の条項も入っている。20年後に元本が無価値だとすると実際は税込だと3%ちょっとほどの率にしかならない。それなら普通の不動産リートでもっといいのがゴロゴロしている。不動産リートならオフィス等の施設は残る。外部成長で20年後に元本の価値を保てるシナリオは示されていない。20年後にどうなっているのかの説明が明確でないので、太陽光発電インフラファンドへの投資はためらってしまう。
貴重なコメントありがとうございます。実は私も同意見です。
現在、太陽光発電投資が高い利回りを提示できているのは、固定価格買取制度が存在しているからです。
買取価格は年々引き下げられる一方、設備価格も下がっているので現在は大きな問題にはなっていませんが、新しく建設した太陽光発電所の利回りは徐々に下がっていくと思われます。
また、20件後には現在30円や40円の買取価格で設定されている発電所も、市場価格(おそらく数円程度?)での取引となるため、利回りはもちろん資産価値も大きく下がるでしょう。
しかし、本件があまり指摘されていないことや、株価に反映されていないのが現状であり、私自身が何か勘違いをしているか、もしくは随分先の話なのでまだ誰も気に留めていないのかもしれません。