幼いころから帝王学を学んだ超大金持ちの御曹司はなぜ破産に追い込まれたのか

お金持ち総研

社長の椅子

幼いころから「天才」と言われている子どもを見て、この子は将来どんな大物になるのだろうと思ったことはありませんか?

私は学生の頃、ギタリストを目指して頑張っていました。その時、テレビの特集で「天才ギター少年」なる子が取り上げられているのを見て、私より10歳以上も幼い子どもが、自分より上手にギターを弾いている現実にショックを受けました。

この年齢でこれだけ上手いんだから、将来どれだけ上手くなるんだろう。。。

そう考えると、自分の年齢と才能のなさにただ愕然とするしかありませんでした。しかし、不思議なことにそれから15年が経った現在でも、その子が著名ギタリストとして世間を賑わしているという話は聞きません。

私が本当に不思議だと思うのは、「幼い頃から才能を発揮していた」「幼い頃から英才教育を受けていた」という人が、必ずしも将来大きな成功を約束されているわけではないという現実です。

英才教育を受けて育った大王製紙の御曹司

社長

幼いころから帝王学を学び、将来を背負って立つことを望まれていた、大王製紙の御曹司である井川意高氏もその一人です。

大王製紙といえば「エリエール」のティッシュやトイレットペーパーなどを始め、誰もが知る日本を代表する製紙会社です。

井川意高氏は大王製紙の創業家3代目として生まれ、超が付くほどの大金持ちであり、申し分のない教育環境で育ちました。そして、42歳という若さで大王製紙の第6代社長に就任するという、絵に描いたような成功者です。(女優の藤原紀香さんとの熱愛報道もありましたよね)

しかし、2011年に井川氏は大王製紙を追われることになります。その理由は、井川氏が大王製紙の子会社7社から合計85億8,000万円を不正に借り入れていたからです。

なぜそのような巨額の資金を不正に借り入れなくてはならなかったのか。それは、ギャンブルによって100億円以上の損失を出したからです。

日本を代表する企業の創業家社長がギャンブルによる転落。

その華麗なる人生から、井川意高氏の人生がこのように狂ってしまうことは誰もが予想できなかったと思います。

資産家を破産に追い込むカジノという場所

カジノ

井川意高氏がのめり込んでいたのはカジノの「バカラ」というゲームです。

バカラはカジノゲームの一種であり、トランプが使われる。バカラは高額な掛け金をかける人が多い。

バカラとは、「バンカー(胴元役)」と、「プレイヤー(客役)」の、仮想の二人による勝負で、どちらが勝つかを客が予想して賭けるゲームである。実際にゲームをプレイしているのは仮想の人物であるため、客が出来ることは予想することだけで、それ以外でゲームに介入することが出来ない(カードを引く引かないの選択権を持たないなど)。

私はバカラをやったことがないので、ルールについて詳しく知らないのですが、バカラは運の要素が強いカードゲームと聞きます。運が勝敗を左右するからこそ、熱狂的なギャンブラーに好まれるのだとか。

経営者は勝負師でもあります。その昔、ソニーが家庭用にシェアの拡大を図ったビデオテープレコーダ「ベータ」は、製品・戦略のすべてが間違っていなかったのに、ビデオ戦争で「VHS」に敗れたと言われています。(その結果、VHSが業界標準として普及したことは有名です)

巨大な企業同士の勝負では、時としてどれだけ戦略が上手くても運の要素が勝敗を左右することもある。だからこそ、常にそういう状況で戦っている経営者にとって、バカラというカードゲームが魅力的に感じるのかもしれません。

元から井川氏の金銭感覚は世間の常識を遥かに超えていたようですが、1億、2億の負けは、最終的に破産する106億円という負けには遠く及びません。

井川氏が大きく負けだしたのは、海外のカジノにのめり込むようになってからです。

30代前半だった被告が返済に費やしたのは、貯金「1億円」や、母親が秘密裏に用立てた「2億5千万円」など。一般のサラリーマンには想像を絶する金額だが、学生時代から都内の高級クラブで飲み歩いていたという御曹司は懲りなかった。「海外のカジノなら、アメリカで上場している会社が経営していたり、政府に監督されている。イカサマはない」。18年以降、銀行や証券会社から計20億円以上を借り、海外カジノのVIPルームに勝負の場を移した。

海外のカジノには、VIP待遇というものがあります。VIPになると、往復の飛行機代やホテル宿泊費、食費なども含めてすべてカジノ側が負担してくれます。それくらいの高待遇で向かえても、カジノ側にとっては利益が出るぐらい上客の落とす金額が大きいということです。

22年には年間33回海外に渡航、カジノに興じた被告。軍資金の借り入れに窮し、依頼先はファミリー企業や連結子会社に移っていく。

サンクコストと成功体験のワナ

破産

なぜ、井川氏は破滅してしまったのか。本当の原因は私のような一般人には理解できないのでしょうが、その理由について考えてみた結果、3つの原因があったのではないかと思いました。

  • サンクコスト効果
  • 過去の成功体験
  • こうでなくてはならないというプライド

サンクコスト効果とは過去の負け額が後の意思決定に影響する心理のことを言います。

例えば、最初は100円ずつ賭けていたのに、連続して負けてしまい、トータルの負け額が3,000円になると、その焦りから負けを取り戻そうとして、1回あたり3,000円を賭けるという大勝負に出てしまう。というようなギャンブルでありがちな行動です。

投資においてもそうですが、過去の負けはその都度リセットして、毎回冷静な判断で取り組むというのが正常な行動です。しかし、過去の負けが尾を引いて正常な行動が取れなくなることが、人間の心理には存在します。

「運とツキさえ回ってくれば、500万円を5億円に増やすことだってできる。現に150万円を4時間半で22億円にしたことだってあるじゃないか。目の前にある20億円を30億円、40億円にまで増やし、今までの借金をすべて取り返すことだってできるはず

数百万円の種銭からスタートし、あるときは5億円、別のときには7億円の勝ち逃げに成功したことがある。それどころか、12億円、15億円という巨額の大勝ちも経験済みだ。  通算で100回以上カジノへ通い詰める中、億単位の勝利を収めた成功体験は忘れがたい快哉をもたらした。

また、バカラでは150万円が数時間で22億円に化けることもあるようで、一度こういった体験をしてしまうと、過去の成功体験から逃れることは容易ではなくなります。

運の要素が大きいバカラにおいては関係がないのかもしれませんが、

ハラーズ社のカジノは、顧客を逃さずにどこまでお金を搾りとれるかについて高度な予測を行っている。
顧客の持つカード情報に、ゲームの結果からその人の属性までが記録されて、分析される。
そして、それぞれのギャンブラーがいくらまでならお金をすってもそれを楽しめて、またここに戻ってきてくれるかどうかを予測する。
この魔法の損失額数値を「痛みポイント」と呼んでいる。

というカジノの戦略的な運営手法も存在します。

負けた金額が大きく、後に引き返せない」という心理と「過去の成功体験に裏付けられた負けを取り返せる可能性があるという希望」の両方が絡み合って、簡単には抜け出せないギャンブルのワナにハマっていくのではないでしょうか。

加えて、井川氏のような「勝ち続けてきた人生」を過ごしてきた人にとっては、「こうでなくてはならない」「負けることは許されない」というプライドやプレッシャーは少なからず存在したはずです。

仮に私が大王製紙の御曹司だったとしても、一度でも子会社のお金に手を付けてしまったら、もう行き着くところまで行かなければ、引き返せないと思います。

私がここで改めて大切だと思うのは、一番大切なことは頭の良さではなくリスク管理能力であるということです。そして、リスク管理能力はどれだけ頭が良くても身につけることが難しいスキルではないかと思うのです。

ソフトバンクの孫正義社長も「リスクを取って3割の負けなら再起できるが、それ以上になると再起できなくなる」とカンブリア宮殿で語っていました。どれだけ正しい行動をとっても、時には負けることがあるとわかった上でリスクを取る。だからこそ、リスクコントロールをしっかりとする必要があるのです。

ギャンブルで失敗する経営者は多い

破産

ギャンブルで破滅する経営者は少なくありません。その他にも探すとニュースになっている事例がいくつかあります。下記は、今回紹介した井川氏のエピソードとは全く関係のない話です。

闇カジノの「魔力」に取りつかれた男に待っていたのは、懲戒解雇と逮捕という転落の人生だった。
勤務先の資金計1億7000万円を着服したとして、ジャスダック上場の情報通信会社「ソリトンシステムズ」(東京都新宿区)元執行役員、野村和弘容疑者(59)が今月7日、業務上横領容疑で警視庁捜査2課に逮捕された。違法なバカラ賭博にのめり込み、貯金が底をついたら、会社のカネに手を出して遊び続けた。着服した全額を含む約2億円もの大金を失うのに、3カ月とかからなかった。

少なくとも、馬鹿では経営者は務まりません。上記の野村氏も公認会計士の資格を持っている、数字のプロフェッショナルです。なぜこのような優秀な人がギャンブルにハマって破滅してしまうのか。

頭が良いからこそ、数字では語れない「運」の世界に魅力を感じるのでしょうか。

ちなみに、バカラはイタリア語で「ゼロ(破産)」を意味するのだそうです。

今回読んだ本はこちら。
熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録