仕手株で損する理由とそれでも興味がある方へのアドバイス
執筆者:川原裕也
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仕手株(してかぶ)とは、特定の人物やグループが意図的に株価を操作し、通常では考えにくい急騰を演出する銘柄のことです。
わかりやすく説明すると、「時価総額の小さい小型株」を特定の人物が市場で買い占めます。
買い占められた銘柄は市場での流通量が少なくなるため、需要と供給の関係で値上がりしやすい状態になります。(流通量が少ない = レアなものは値上がりしやすい)
(買い占めによって)流通量が少なくなるということは、その株がプレミアム化するということです。
レアなもの(希少性の高いもの)が値上がりしやすいことは、ダイヤモンドが高値で取引されていることからも私たちは実感しています。
また、新発売のゲーム機など品薄状態が続いていると、ネットオークションなどで定価以上の高値で売買されることもあります。
これらはいずれも、需要に対して供給量が少ないことから生じる価格の高騰です。
仕手相場を演出する「仕手筋(してすじ)」は、この原則を上手く利用し、急騰相場で儲けようと企んでいます。
これまで決して目立つことがなかった小型株が短期間で株価2倍、3倍になると、市場でも注目され、デイトレーダーのような短期筋をはじめ多くの人がその銘柄の取引に参加し始めます。
こうして、突然急騰した銘柄が市場で人気化したタイミングで、この相場を仕掛けた仕手筋は静かに保有株を売り抜けます。
仕手株に選ばれる銘柄は大抵、業績が悪くパッとしない地味な銘柄です。仕手筋が売り抜けた後は、「レア化し、値上がりしやすい状態 → (仕手筋が売り抜けた分だけ)流通量が増加し、値下がりしやすい状態(供給過剰)」となります。
さらに、こうした銘柄は業績も悪く値上がりした真の理由は「仕手筋が仕掛けただけ」なので、仕手筋がいなくなったあとは急落するだけです。
何も知らない個人投資家は、急騰して人気化した銘柄に飛びつき、急落によって大きな損失を被ってしまうのです。
鉄砲取引による仕手
鉄砲取引を使って、大きな仕手相場を築くケースもあります。
私が記憶しているのは、その昔、東証マザーズに上場していたOHT(オー・エイチ・ティー)という銘柄です。(現在は上場廃止)
OHTは「鉄砲取引」という方法で大相場を演出し、その後急落しました。
鉄砲取引とは、信用口座を活用して株価操縦を行う手法で、もちろん違法です。
鉄砲とは、注文を出して売買を成立させておきながら、株券や代金を証券会社に払わないという不正な取引のこと。注文するだけして決済しない行為を、発射したら戻ってこない鉄砲の弾に例えたとされる。
まず最初に、仕手筋は(架空名義を含めた)複数の証券口座から信用取引を使って株価を吊り上げます。
上手く株価操縦しながら値段を吊り上げて、最終的に安値で買い集めていた保有株を売却して出金し、逃亡してしまいます。
残ったのは架空名義の信用口座で購入している株だけとなりますが、すでに逃亡しているため株価が下がると放置された信用建玉に追証が発生します。
しかし、すでに犯人は逃亡しているので、信用建玉で発生した損失は放置されたままとなり、結果的に証券会社が被るしかなくなってしまうのです。
元から理由なく吊り上げられた株価は、最終的に大きな急落を引き起こします。
この事件によって、証券会社が被った被害総額は20億とも100億とも言われています。
株価の大きな急落によって信用取引の追証を支払えない人が増加、また仕手相場を仕掛けた本尊からも追証を回収できないことによる貸し倒れ損失です。
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私が仕手株の取引をやめた理由
私はその昔、デイトレードなどの短期売買を積極的におこなっていました。その流れで、倒産株でも仕手株でも関係なく、なんでも取引をしていました。
しかし今では、「仕手株には手を出さない」ことにしています。
私がなぜ仕手株の取引をやめたかというと、「ハコ企業には手を出すな!不公正ファイナンスを知ると投資力が格段に上がる理由」に書いたように、仕手株には反社会勢力や反市場精力(ヤクザなど)が関わっていることが少なくないからです。
詳しくは、ハコ企業について書いた記事を読んでいただきたいのですが、こうした銘柄を取引することは、反社会勢力や反市場勢力に手を貸す行為になるのではないか?と考えるようになりました。
つまり、仕手株のような「黒いマネー」が入った銘柄には一切手を出さず、無視することが市場の健全化に繋がるのです。
もちろん、すべての仕手株に黒いマネーが入っているわけではありませんので、手を出すべきではない銘柄なのか、遊びで手を出しても良い銘柄なのかは判断する必要があります。
仕手株で儲けるには
一度、前述の内容をまとめておきます。
1.仕手株は仕掛けた人物が儲かるように仕組まれるため、一般の参加者は損失を被りやすい
2.反社会勢力が絡んでいるため、銘柄によっては取引すること自体、そうした勢力に力を貸すことに繋がる
こうした理由から、株式初心者もそうでない方も仕手株への関与はおすすめしません。
しかし、短期間で数倍に値上がりする仕手株が魅力的に見えてしまうのもまた事実。
もし、仕手相場に参加して利益を得ようとするのであれば、デイトレードなどの短期売買で利ざやを取るのが最も安全かつ確実な方法です。
仕手株への参加者が増えると、値動きが荒くなるため、デイトレードやスキャルピングを得意としている人にとっては格好の銘柄となります。
しかし、仕手株はそもそも業績などの裏付けがなく株価が上がっていること、そして仕手筋が売り抜けた後はその銘柄に集まっている資金量も少なくなることから、急落した後のリバウンドは期待できません。
危険を感じたら「損切り」を徹底できる人でなければ、仕手株で大きな損失を被り、短期売買が塩漬け状態になってしまうこともあるので要注意です。
加藤 暠とネット仕手筋
仕手筋の歴史は古くからあります。
昔は、経営権を取得できるレベルまで株を買い占めて、企業を脅し、市場では売りさばけない大量の保有株を最終的に企業に買い取らせるということもあったようです。
仕手筋がどのような人物なのかは謎に包まれていますが、その実績から名前が知られている人物や、最近では「ネット仕手筋」と呼ばれる方々も登場しています。
加藤 暠(かとうあきら)
仕手筋の中でもダントツの知名度を誇るのが、加藤 暠(かとうあきら)です。
いわゆる「K氏銘柄」というのは、加藤 暠がその昔に手掛けた銘柄のことを指します。
加藤 暠は、1980年代に「誠備グループ」という仕手集団を使って仕手相場を演出し、「兜町の風雲児」と呼ばれるほどの存在になりました。
その後は息を潜めていましたが、リーマンショック後の回復期に「般若の会」という名前で相場に復帰し、新日本理化(4406)の仕手相場を演出したと言われています。
新日本理化の株価は1年で20倍近く急騰しました。
しかし、加藤 暠は2015年についに起訴され、その後2016年に死亡。
結局、加藤 暠が仕手の本尊だったかどうかは闇に包まれたまま、裁判は終了しました。
ネット仕手筋
「ネット仕手筋」というのは、ここ最近、市場関係者の間で問題となっている手口で株価を吊り上げる方々です。
数年前までは「Yahoo!ファイナンス掲示板」で展開されていましたが、最近はLINEやTwitterなどのSNSをうまく活用して、証券取引等監視委員会(SESC)の目につきにくい場所で株価操作を行っています。
具体的な手口としては、まずSNSなどで影響力をつけるために嘘の売買報告などを投稿し、あたかも自分が「カリスマトレーダー」のような演出を行います。
すると、そのSNSを見た一部の人がそれを信じ、いわゆる「信者化」します。
信者がある程度増えると、時価総額の低い小型株の操作は可能となります。
あとは、「仕掛けたい小型株を買い集める → SNSで◯◯の銘柄を大口が買い集めていますなどと投稿 → 信者達がそれを信じ◯◯を購入 → 株価が急騰 → 仕掛人であるネット仕手筋は売り抜け」という手順で、信者から搾取するのがネット仕手筋の特徴です。
SNSを用いた現代ならではの手法と言えますが、こうした行為は決して許されるものではありません。
株式市場を健全な場所にするためにも、こうした仕手取引には参加しないことをおすすめします。
次は、「IPO初心者が投資で失敗しないために覚えておくべき8つのキーワード」です。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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