千円札は拾うなと言った人の会社が倒産した理由

お金持ち総研

六本木ヒルズ

他人の成功を見て羨ましいと思ったことはないですか?

特に同じような境遇の人が投資やビジネスで大成功を収めたことを知った時、「なぜ、その成功者は私ではなかったのだろう」と考えたことはないでしょうか。大きな成功を収めたいと思っている人ほど、一度は二度はこのように考えた経験があると思います。

しかし、他人の成功というのは外側から見るとキラキラしていますが、内情は外からはわからないものです。

成功しているように見えても、一寸先は闇だったり、派手でお金をたくさん持っているように見えても、家計は借金まみれだったり。こういうことは非常に多いのが現状です。

実際、「有名な企業や成功した起業家の予期しない転落」と聞いて、思い当たる事例がいくつかあるのではないでしょうか。

なぜ、人が羨むような成功から一転して転落してしまうのか。今日はその理由について考えてみたいと思います。

成功と転落は表裏一体である

成功

私は、「成功と転落は表裏一体である」と考えています。

よく、「地に足をつけて行動するべきだ」と言われますが、これは成功とは少し遠い行動のように思えます。なぜなら、真面目な日本人にとっては地に足をつけた行動は多くの人がとっている行動だからです。

皆がやっている行動、皆と同じ考え方をしても、成功は掴めません。

だからといって、他の人が疑問視するような行動や考え方、つまり「浮足立った行動」にも問題があります。人がやらないようなこと、常識はずれな考え方は成功への近道だと思いますが、それを続けることは危険を伴う可能性が高いと感じます。

つまり、「地に足のついた行動」と「浮足立った行動」の両輪を上手く回すことが大切であり、「どちらが良い」と一方に決めつけてしまうことは、本当の意味で成功者の考え方ではないと思っています。

例えば、目の前に千円札が落ちていたらどうするでしょうか。

多くの人はその千円札を拾ってラッキーだと思うでしょう。しかし、あえてそれを拾わないという行動をとった時、新しい発想・考え方に出会えるかもしれません。常識外の行動を取ることが、成功への大きな一歩であることは間違いないでしょう。

成長とは「自分を捨てる勇気」から生まれます。これまでの自分や世間の中で、常識で当たり前の習慣だったことをやめてみることで、新たな発想が生まれ、それが次の成長へと繋がります。

今までの積み重ねで上手くやろうとすると、劇的な成長はできず、保守的な成長にとどまってしまいます。

常識はずれの行動で急成長した会社の末路とは

破綻

その昔、「ワイキューブ」という常識はずれの行動で急成長したベンチャー企業がありました。「ありました。」という過去形で語っているということは、今はもう存在しない会社だということです。

ワイキューブは企業向けに人材に関するコンサルティングや企業のブランディングを行っていた会社です。

社員の成長こそが会社の成長と考えており、優秀な社員を集め成長させることを社内での重要なミッションに設定していました。企業の競争力の源泉は「人・モノ・金」と言われますから、優秀な人材の獲得・育成に投資することは、至極まっとうな考え方だと思います。

しかし一方で、お金の使い方が常識はずれだったのです。

お金は実際に使ってみなければ、上手く使えるようにならないと考え、社員にもお金の使い方を学ばせるべく大きな決済権限を持たせることにしました。また、成果主義を導入し結果を出している社員であれば勤務時間も週休も自由。

そして、優秀な人材に「この会社に就職したい」と思ってもらえるように「ブランド」への投資も惜しみませんでした。

話題性を作るためにワイキューブが行ったことは、

  • 社内に豪華なワインセラーやバーを作る
  • 売上5億円の時に月額賃料1,200万円のオフィスに移転
  • 優秀な社員を雇うために1人あたり800万円の採用費
  • (ベンチャー企業で)社員の平均年収1000万円

などなど。いずれも常識はずれの行動ばかりです。
人材とブランドへの投資を重視していたワイキューブは、銀行からの借入を話題づくり(ブランディング)や人材獲得に注ぎこみ、担保となるような不動産や設備などはほとんど持ちませんでした。

ワイキューブが狙っていたのは、リクルートのポジションです。人材業界を握るリクルートは、優秀な人材にいち早くアプローチを取ることができ、低コストで超一流の有能な社員を集めることができます。

優秀な社員が集まればどんな事業をやっても上手く行く。ワイキューブの安田佳生社長はそのように考えていました。たしかに、リクルートの社員といえば起業家が多く、同社は様々な分野への事業拡大で成功していますよね。

その結果、ワイキューブは急激に成長し、一時は46億円もの売上を築くに至りました。当時のベンチャー企業で46億円の売上というのは相当なものなので、この時点で成功を手にしていたと言えるのかもしれません。

新規事業が作れず売上が剥落

売上が落ち込む

人材とブランドに投資し続け、企業としては良い形となっていたワイキューブ。

新規事業として「企業ブランディング事業」を開始し、積極投資を続けました。しかし、新規事業は投資額に対して売上が思うように伸びず、その代わりに既存事業であった「採用事業」に陰りが見え始めました。

どんな事業であれ、時代の変化とともにいずれ陰りが見えます。しかし、新規事業を生み出すことは本当に難しく、そこで企業の著しい成長が停滞するというのは、ベンチャー企業を中心によくある話です。

ワイキューブもそういった状況に陥っていました。

そこで起こったのがリーマンショックです。採用関連の事業は景気に左右されますから、リーマンショックの煽りを受けて売上が剥落、さらに銀行も融資の返済を迫り、完全に行き詰まってしまいました。

その結果、2011年3月30日に40億円の負債を背負い民事再生の適用申請をし、ワイキューブは倒産に追い込まれました。

ワイキューブの倒産から学べること

売上を上げる

ワイキューブ社はなぜ倒産したのでしょうか。

後から振り返ってみると危険なところもたくさんありましたが、成長が求められているベンチャー企業としては仕方がない側面もあり、また人材やブランドへの投資を惜しまないなど、経営方法としては正しい行動をとっていると思えし部分もたくさんあります。

私も会社を経営しているので、同じ経営者としてその原因について考えてみました。

まず最初に思い当たる部分は、売上の伸びに対して固定費を増やしていることです。

設備や不動産などの固定資産になるようなものは持っていないということだったのですが、「優秀な人材に支払う人件費」や「豪華なオフィスを維持する賃料」はワイキューブにとって大きな固定費になっていたはずです。

固定費が高い企業というのは、売上が拡大している時は良いのですが、少しでも売上が落ち込むと急激に資金繰りが苦しくなります。

ワイキューブは事業拡大を裏付けとしてかなり借入を行っていたので、そうした行き過ぎのレバレッジ経営が売上低下やリーマンショックといった環境の変化に耐え切れなかったのだと思います。

また、ブランディングへの投資について、事業内容の裏付けによる評価ではなく、派手さや話題作りを中心に費用を投下していたと考えられることです。

派手なお金の使い方や話題性で価値を高めようとする方法は、ビジネスでも芸能界でもよく見られる手法です。実際、話題を呼んでブランディングに成功すると、ブランドだけで売上が作れるというのは、ルイヴィトンのようなラグジュアリーブランドを見れば明らかです。

しかし、ブランドを作ることは並大抵ではなく、多くの場合はブームとともに話題がつき、知名度を維持していくことが難しくなります。意図的に作り上げたブランディング競争は、大手との資金力勝負にもなるので、それを持続させていくことは本当に難しいことだと思います。

こうした事例からそれを痛感するからこそ、私は長年に渡って成功し続けている著名な芸能人や、ルイヴィトンのようなブランドは本当に凄いなぁといつも感じています。

経営においても投資においても、ワイキューブの破綻から学べることは本当に多いと思います。

今日読んだ本はこちら。
千円札は拾うな。 – 安田 佳生