是川銀蔵から投資を学ぶ!「最後の相場師」の成功と失敗からわかること

株式投資の虎

是川銀蔵

先日、是川銀蔵の「相場師一代」という本を読みました。

是川銀蔵は1970年~80年代にかけて活躍した投資家(とうよりも投機家)で、「最後の相場師」と呼ばれている人物です。

おそらく一般の知名度はそれほど高くないと思いますが、株式投資の世界では知る人ぞ知る有名人であり、その実績や生き様から間違いなく日本の歴史に残る偉大な人物だと思っています。

「相場師一代」は是川銀蔵に関する本の中でも、是川銀蔵自身が書いた2冊の書籍のうちの1つです。

今回は書籍「相場師一代」の中で是川銀蔵が語った名言をヒントに、投資で成功するための方法を探ってみました。

投資に対する心構え

相場のサイクル

是川銀蔵が「相場師一代」の中で何度も語っているのが、株式投資の心理学についてです。

株式市場や経済の動きには一定のサイクルがあり、大きく下げればそれだけ大きな反発が起こること。そして、そのチャンスを上手く掴むことが投資で成功するためのコツだと言っています。

どんな下げ相場であっても、必ず底に落ち着き、下げ幅が大きいほどそれだけ上げ相場の反動は大きい、というのも株式相場の鉄則である。

経済の波が下降線を辿っていても、それは永久的な下降ではなく、下ることが次への状態に移行する、エネルギーになる。また、経済が上昇線を辿っていれば、それは次の状態として下降へのエネルギーを貯えつつある。

これは、よく言われる「上がり続ける相場はない、下がり続ける相場もない」ということですが、是川銀蔵が言うと説得力がありますね。

おそらく、多くの人がこの言葉を聞いて「当たり前のこと」と思ったと思います。

しかし、是川銀蔵は株式市場や経済の上下動に上手く乗ることがいかに難しいかについて語っています。なぜなら、人間には恐怖と欲望という心理があるからです。

株式投資は、誰でも実力以上のものをやればとまどい、不安心理がつきまとう。それが失敗につながるのである。

株式市場では下げ相場は売り手にとっては打撃だが、一方で、買い手は最大のチャンスを迎えていることになる。これも株式投資の真実なのである

いかに相場に熟練した投資家でも、下げ相場の過程では不安にかられ、持ちこたえられずに手持ちの株を投げ出してしまう。事実わたしも何度かこうした心理状況の中で痛い目にあわされたことがある。

不安に襲われ、持ちこたえられず安値で投げてしまうために大損を出すのだ。しかし、手持ちの余剰資金で投資活動をしていれば、不安はあっても投げるまで追い込まれることはない。投げない限り実損はないわけである。

どれだけ経験を積んだプロの投資家でも、リーマンショック級の下げが永遠に続いたら、「経済が崩壊するのではないか?資本主義はこれで終わりなのではないか?」などと考えてしまうものです。

素人だろうとプロだろうと関係なく、下げ相場でポジションを抱えていれば大きな不安に襲われます。

これに対する是川銀蔵のアドバイスは、「余剰資金で投資をすること」です。心理的な余裕を確保しておくことで、相場を冷静に見ることができます。

いつの時代も破綻するのはレバレッジをかけて取引をしていた人間だけであり、余剰資金で投資をしている人は破産することはありません。さらに言えば、投資に興味がない人はどれだけ株価が暴落しようとも関係のない話なのです。

過去にも、ヴィクター・ニーダーホッファーやジェシー・リバモアのような神がかった実力を持った投機家が、レバレッジによって破綻に追い込まれています。(是川銀蔵も何度も破産を経験しています)

▶得られた学び
株式投資で勝つための鉄則は、「自制心を保つこと」であり、自制心を保つためには冷静さや心理的な余裕が不可欠であり、そしてそれを作り出すのは「余裕を持ったポジション」という資金管理だということです。

カメ三則

カメ三則

カメ三則」とは、是川銀蔵が意識している投資で成功するための方法です。

1.銘柄は水面下にある優良なものを選んでじっと待つこと
2.経済、相場の動きからは常に目を離さず自分で勉強する
3.過大な思惑はせず、手持ち資金の中で行動する

投資にはさまざまなスタイルがあります。相場が動き出してからその波に乗る人もいれば、波に対して逆行(逆張り)する人など。

是川銀蔵は、経済や相場の動きを徹底的に勉強することで未来を予測し、「次はこの銘柄が上がる」という想定のもと、先回り買いをして、その株が上がるまでじっと待つスタイルでした。

この投資方法は自分の予測が当たれば、一番乗りで相場の上昇に乗ることができます。

しかし、あくまでも予測に基いて行動しているため、100%の当たりが保証されているわけではありません。

是川銀蔵のカメ三則では、どれだけ自分の相場予測に自信があっても、レバレッジをかけて全力で勝負するのではなく、手持ち資金の範囲で投資をすることの重要性も語られています。

大量の読書・勉強をする

読書する男性

是川銀蔵は、とにかく勉強家・努力家であることを自称しています。

気になったことは自分で納得がいくまで調べないと気がすまない性格で、3年間も図書館にこもって勉強をしたり、入院中に医学書を読み漁ったりしていました。

この時、是川銀蔵には妻と2人の子供がいましたが、彼女たちに極貧生活を強いながらも、自分自身も図書館の水道の水で空腹を満たし、勉強に励んだそうです。

三度目の倒産を経験した後、図書館に三年間通い、独学で日本をはじめとする世界経済とそれをとりまく諸問題を徹底的に勉強したことだ。

米代も払えない貧窮生活の中で三年間、毎日のように嵐山から大阪の図書館へ通いつづけ、経済関係の本や資料をあさりつくした。

経済に係る著作をすべて読破した。世界各国の数十年にわたる経済統計を調べ、物価、景気、株価の変動や消費動向を徹底的に分析した。  初めは一、二年で結論がでるか、と思っていたのだが、二年経ってもまるで先が見えてこないまま三年間も図書館通いが続いた。

想像を絶する貧困生活の中で、私は将来の自分の生きる道を見つけるために、必死で勉強を続けた。図書館から帰った後も毎晩、家で十二時、一時過ぎまでノートを整理し、自分だけの資料を作っていった。こういった生活を夢中で三年間続ける間、十キロもやせてしまったが、徐々に見えてきたのである。

ちなみにですが、是川銀蔵は中卒です。(14歳の頃から働いているので、もしかすると中学を中退していたのかもしれません)

学歴がなかったとしても、独学を続けていれば驚くような結果を生み出すことは可能なのです。

そして経済の勉強だけではなく、簿記や会計などとにかく大量の本を読み、勉強の虫であったことが、本書で何度も語られています。

勉強は仕事以上に夢中でやった。何も学校だけが勉強のできるところではない。仕事の終わった後、ソロバン、簿記、会計をはじめ、社会、経済まで毎晩深夜まで勉強をした

ともかく、自分で研究し、確信を得たことに対しては、いかなる力にも屈しなかったし、その信念を貫き通した。

自分で一度確信したことを他人の横槍で曲げてしまうことは結局、研究、分析、判断がまだそこまで行きついていないということなのだ。

こうした信念を突き通す頑固な考えは特に、株式市場で成功を手にする上で必要不可欠だと思います。

あらゆるニュース、ネットの情報が「下げ」だと言っていても、自分の分析で株価が「上がる」と思えた時にそちらに張れるかどうか、このような場面で相場師としての真価が問われます。

真面目で女遊びはしない

誘惑

私も本書を読むまで知らなかったのですが、是川銀蔵は酒も女もやらないというほど真面目な性格でした。このような生真面目な性格が、相場師としての魅力を高めているのでしょう。

肺結核と診断され入院生活を送っていた是川銀蔵は、大量の医学書を読み漁り、人間の生命について勉強をはじめました。

その結果、人間は自然の法則に従って生活をすれば100年以上は生きられる構造になっているものの、

  • アルコール
  • 梅毒

が原因で寿命を縮めているとの結論に至りました。

また、食生活についても見直し「野菜、果物、穀類」を主食として、肉類をなるべく避けるようにしたそうです。

是川銀蔵は当初、肉中心の生活で野菜はほとんど摂っていませんでしたが、この一件があってから食生活を大きく見直しました。結局、(当時は不治の病と考えられていたであろう)肺結核が改善し、是川銀蔵はその後も95歳まで長生きしています。

アルコール類についても、元々苦手だったようですがこの時の学びによって完全に止めました。

「人間の生命は自然の法則に従って生活していれば百年以上生きられる構造になっている。それが、六十年、七十年、八十年生きただけで長生きしている、といわれるようになったのは人間が自然の法則に反する生活をするようになったからだ」  と結論づけている。  なぜ自然の法則を破り始めたのか。それは人間の生活が向上し、贅沢をするようになったため、人間の生命は本来の生命力だけで生きられないようになってしまったのだ。

10代の頃から社会に出て様々な事業を経営し、時には相場で大成功を納めて大金を手にしたとあれば、当然、夜の誘惑も増えるはずです。

しかし、是川銀蔵は昔から女遊びは一切せず、そういった誘惑があっても手を出さなかったと語っています。

梅毒の方はまったく心配なかった。若い時から事業を経営していたからやる気ならいくらでも女道楽はできたが、いっさいその道には走らずにいた。おかげで梅毒にもならずにすんだ。今後も女道楽はしちゃいかんと強く自分を律した。

社長だから、酒や女の誘惑はのべつ声がかかった。しかしそういう極道はいっさい相手にしなかった。

もしそういう極道を立場にまかせしておったら、私はとうの昔に棺桶に入っていただろう。なんぼでも極道ができる立場にいながらしなかったのは、いま考えてみても、やはり、私は普通じゃなかったと思うのだ。私は、おそろしく意志の強い性格を先天的に持っていたことは間違いないようだ。

私は十六歳で独立して以来、女極道と酒だけは絶対にやらないと心に誓っている。酒がなくちゃあなりたたない付き合いは、にべもなく断わったし、芸者の色目にも乗らなかった。これまでそれを正真正銘押し通してきたのである。だから、連中と一緒に飲んでバカ騒ぎするなんてことにはいや気がさしていたのである。やることは他にいくらでもあった。

少し話は変わりますが、私が好きな投資家であるウォーレン・バフェットはこのように言っています。

人生はとかく最も弱い部分から侵食される。これは、ほとんどのビジネスとほとんどの人間にあてはまり、今のところまだだれも深く考察していない面白い発見だ。

自分の経験から言うと、人間の大きな弱点はふたつある。それは酒とレバレッジだ。わたしは、多くの人びとが酒と借金によるレバレッジで失敗するのを目のあたりにしてきた」

一般的に、人生を台無しにしてしまう要素として語られるのは、「酒・女遊び・薬物」などです。

しかし、人には誰しも「弱い部分」があり、そうした弱点から人生が侵食されていくのでしょう。

酒や女遊び以外にも、「金銭欲」だったり「見栄」だったり、はたまた「自分の能力を過大評価する癖」や「自分を過小評価しすぎる癖」、そして「ネガティブに考えすぎてしまう癖」なども人間によく見られる「弱点」のような気がします。

弱点は人によって異なりますが、自分自身では「これをやっちゃいけない、こういう部分が自分の悪い癖だ」とはなんとなく理解しているものです。

しかし、頭ではわかっていてもやめられない、ついやってしまう。だからこそ弱点なのです

是川銀蔵が「相場師一代」で「女遊びは一切やらなかった」と何度も語っているのを見て、私はこう思いました。

是川銀蔵は女遊びに興味がなかったわけではなく、(一般の多くの男性と同じように)興味はあった。しかし、それにハマってはいけないと考えていたため、あえて遠ざけるよう強く意識していた

これが、本書で是川銀蔵が「女遊びは一切しなかった」と何度も書いている理由ではないかと思います。

誰にでも弱点はあるものです。しかし、その弱点を防ぐように強い意志を持つことが、成功できるかどうかにかかっている。是川銀蔵はこう言いたかったのではないでしょうか。

これだと思ったら、どんな困難があってもやり通す。しかし、やっちゃあいけないことはどんな誘惑があっても手を出さない。この意志の強さがいまの相場師・是川銀蔵を作ったのだと思っている。

株で成功することの難しさ

金の卵

実はこの「相場師一代」という本ですが、最初の出だしはこのような内容で始まっています。

そこで私は自らの人生を自らの手で綴ることにより、株で成功することは不可能に近いという事実を伝える使命があると思い、筆をとることにした。

世間の人達は、私があたかもこの〝不可能〟を覆して株の売買で成功し、巨万の富を得たと思っているであろう。しかし、決してそうではない。私は実際、今でもすっからかん。財産も何も残ってはいない。このことを著書で警告したいのである。

是川銀蔵はこれまでに、事業家として何度も破産、そして投機家としても破産または破産寸前の経験をしています。

是川銀蔵 投資五ヵ条

チェックリスト

最後に、是川銀蔵が「相場師一代」の中で記した、「投資五ヵ条」をまとめます。

前述の「カメ三則」は投資の具体的な手法に近いものですが、「投資五ヵ条」は投資全般に対する考え方をまとめたものです。

1.銘柄は人が奨めるものでなく、自分で勉強して選ぶ
2.二年後の経済の変化を自分で予測し大局観を持つ
3.株価には妥当な水準がある。値上がり株の深追いは禁物
4.株価は最終的に業績で決まる。腕力相場は敬遠する
5.不測の事態などリスクはつきものと心得る

いずれも、これまでも、そしてこれからも役立つ普遍的な内容だと思います。

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