21世紀の資本をわかりやすく解説、「r > g」はお金持ちの原則だ
執筆者:川原裕也
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経済学者トマ・ピケティの「21世紀の資本」を読みました。
21世紀の資本は、カール・マルクスの「資本論」の現代版とも言える内容で、15年間の研究を元に、近年の経済の動きと、未来の経済の予測を示したものです。
2014年に日本語訳が出版されて以降、世界中でベストセラー書籍となりましたが、日本版でも700ページ以上の大作であり、かつ難解であることから、読みこなすのは難しいと言われています。
私自身も一般の人より本は読み慣れている方だと思うのですが、すべてを理解するには至っていません。
しかし、書籍「21世紀の資本」は「伝えたいメッセージは1つか2つであり、あとはそれを証明するために、膨大なデータを用いた説明を行う」という内容になっています。
つまり、研究者ではない私たちはトマ・ピケティが21世紀の資本で「伝えたかったこと」を知るだけでも、非常に価値のある一冊になるということです。
そして、21世紀の資本でトマ・ピケティが伝えたかったことというのが「r > g」という公式です。
この公式は、「(少なくとも今のままでは)これまでもこれからも、お金持ちがよりお金持ちになることは変わらない」ことを示しています。
この記事では、トマ・ピケティが21世紀の資本で伝えたかった要点を、わかりやすくまとめました。
「r > g」とは
「r > g」という公式は、トマ・ピケティが21世紀の資本で掲げている、本書の内容を象徴する式です。
ピケティ自身も書籍の中で、「r > g」という式のことをこのように語っています。
これは本書できわめて重要な役割を果たす。ある意味で、この不等式が私の結論全体の論理を総括しているのである
▶ r > gとは?
r = 資本の平均年間収益率
利益、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったもの。つまり、投資収益率、不労所得の利回りといった意味です。
※おそらく金利(利回り)を示す「rate」の略だと思われます
g = 経済の成長率
所得や産出の年間増加率。
※おそらく成長を示す「growth」の略だと思われます
▶つまり
「r > g」とは資本の平均年間収益率は経済成長率を上回り続けるという公式である。
上記の説明ではわかりにくいと思いますので、噛み砕いてわかりやすく説明します。
「r > g」のうち、「r」は金利や利回りのことを指します。
不動産や株式から得られる配当金、貸金によって生まれる利息など、いわゆる「金融収益」や「不労所得」と呼ばれるものです。
こうした不労所得が得られる資産は、お金持ち(資本家)でなければ手に入れられないため、「不労所得」はよく「お金がお金を生み出す(お金に働かせる)」などと言い表されたりします。
一方で、「g」は経済成長率のことを示します。
言い換えると、労働によって国民が豊かになっていくことであり、「所得の増加率」と言えるものです。
21世紀の資本では、資本収益率(投資利回り、つまり不労所得から得られるリターン)の方が労働によって経済が豊かになるスピードよりも速いことを示しています。
つまり、資本家が得る「投資から得られる収益」は労働者が得る「給与所得や事業所得」よりも常に大きいため、これが格差をさらに広げていきます。そしてこれは、現在もこれからも変わらない公式であるということです。
本書の説明では、戦争や恐慌が起こった場合は一時的に資本収益率が鈍化し、経済成長(労働者)の方が成長率が高くなるものの、長期的にみれば「r > g」の公式は変わらないと説明しています。
21世紀の資本はこうした「労働者にとっては大変残念な真実」を証明すると共に、その解決策を提示しています。
とはいえ、トマ・ピケティの解決策が受けいられるかどうかは誰にもわかりません。
少なくとも現時点では資本家が有利であり、何も変わらなければこれからも資本家が有利であり続けることに代わりはないということです。
ピケティの研究結果によれば、古代から2100年までにおいて、資本収益率(r)は概ね4~5%程度で推移している一方、経済成長率(g)は一時的に増加したものの、21世紀は再び鈍化していくと予想しています。
「r」は資産家が富めるスピード、「g」は国民が労働によって富めるスピードだと考えると、両者の差の分だけ富めるスピード(格差)は広がっていきます。
こちらは、キャピタルロスを考慮したものです。1913年~1950年には第二次世界大戦によって多くの資産(例えば不動産など)が破壊され、その結果資本家が得るリターン(r)は一時的に鈍化しています。
しかしそれでも、「r > g」の公式が崩れることは短期的であり、長期的にはこの公式は維持されるとトマ・ピケティは語っています。なお、ピケティによると国家の税制競争によって21世紀には資産課税は次第になくなると予想しているようです。
お金持ちである資本家になるということ
本書では、あくまでも「r > g」の証明と格差社会の原因、ピケティなりの解決策の提案をするに留まります。
しかし、このような事実を知ってしまった以上、私たちはこうした事実を受け止め、少なくともお金持ちになりたいのであれば「資本家」を目指すべきだと考えます。
私が考える、お金持ちになるための4つの原則については、「貯金ゼロでも大丈夫!誰にも頼らずお金持ちになる方法」という記事で解説しています。
資本家というと「お金儲けばかりで汗水をたらさずに稼いでいる」という批判が、国内ではたくさんあろうかと思います。
しかし、これからはさらにグローバル化は進むわけですから、「日本のような先進国の国民は資本家に転じ(または労働者としての顔と資本家としての顔を両方持ち)、新興国(発展途上国)の成長を支えることで収益を得る」ということをしていかなければ、経済成長率(労働) VS 経済成長率(労働)での勝負は、成長が著しい新興国には到底勝つことができません。
新興国の労働者は、日本の労働者よりも何倍もの成長スピードで豊かになっているのです。
そしてもう一つ、格差社会を是正するためには、富裕層に対する税金を増やすなど、資本家が社会に還元することによって経済を循環させることが重要です。
AI時代の持たざるものにならないために
私たちは格差がなくなることを期待しています。しかし、格差がなくなることをただ期待するだけではなく、将来においても格差がなくならなかった場合に備え、それに対応できる「構え」を作ることが最も重要です。
自分の身は自分で守るということです。
例えば、近年では「AI(人工知能)」によって多くの作業が自動化され、これまで必要だった仕事が奪われるとの指摘があります。
実際、みずほフィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャルグループといった大手の銀行も、中長期的に店舗の統廃合を進めたり、人員の削減を進めることがニュースで報道されていました。
特に近いうちにやってくるのは、「自動運転」の分野です。
例えば、AIや自動運転が発展することで、将来「タクシードライバー」という職業がなくなったとします。
この場合、現在のタクシードライバー(労働者)は職を失うため、代わりとなる新しい仕事を見つけなければなりません。
しかし、専門的なスキルを身につけるのはそう簡単ではないですし、新しい職によって得られる収入は、現在のタクシードライバー以下の金額になる可能性も高いでしょう。
この時に、少しでも保有している資産から得られる投資収益があれば、収入が少し下がっても生活していくことができるかもしれないのですが…
一方で、移動手段としてのタクシーの需要がなくなることはありません。
「自動運転のタクシー」という資産は、タクシー利用者が支払う運賃で「不労所得」を生み出します。
そして、自動運転で稼動するロボタクシーが稼いだお金は、
- ロボタクシー会社の経営者
- ロボタクシー会社に務める専門知識のある従業員
- ロボタクシー会社に融資している銀行(資本家)
- ロボタクシー会社に出資している投資家(資本家)
の4人で分けられます。
このうち、一切の労働なしで不労所得を得ているのは、銀行と投資家である「資本家」です。(実際には、資本家はリスクを追うことで、チャレンジの機会を創出する役割を担っていると言えます)
先ほども述べましたが、「汗水をたらさずに不労所得を得ている資本家がけしからん」かどうかの議論は置いておいて、少なくとも世の中がそういう仕組みになっており、これは将来も続きそうであることを「21世紀の資本」は証明しています。
私たちはそうした事実を踏まえ、自分の身は自分で守るという意識のもと、将来にそなえる「構え」を作っていかなければならないのです。
もっとも、格差是正をするためには「富裕層からの富の再分配(富裕層に対する課税など)」が必要ですが、それを主導できるのは政治家であり、また富裕層自身です。
まずは自分自身が富まないことには世界は変えることはできません。富めないものがどれだけ「格差社会を解消せよ」と叫んだところで、そう簡単に現状は変えられないものです。
このように考えると、著名投資家のウォーレン・バフェットやマイクロソフト創業者のビル・ゲイツのように、世界有数の資産家でありながらも声高く「富裕層にもっと課税すべき」と言える人は賞賛に値すると思います。
続いての記事は「富裕層になるにはどうすれば良い?まずはお金持ちの割合や年収から学ぶ」です。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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