SBIプライム証券のSBBO-Xを使うメリット・デメリット、ダークプールとは?
執筆者:川原裕也
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ネット証券大手のSBI証券と、SBIホールディングス傘下のSBI BITSが共同設立した、「SBIプライム証券」は大口の株式取引手数料を無料化しています。
これまで、ネット証券の間では、株式取引手数料の引き下げ競争が激化していました。
最近では大口向けの信用取引手数料が無料化される動きも出てきましたが、SBIプライム証券が新しく打ち出したのは「現物取引手数料の完全無料化」です。
あくまでも、大口顧客向けのサービスとなりますが、株式取引手数料は完全無料になりました。
なお、SBIプライム証券は預かり資産1,000万円以上の方なら、(手数料無料にはなりませんが)手数料の割引も行っています。
この記事では、株式取引手数料0円を実現したSBIプライム証券の「SBBO-X(エスビービーオークロス)」の詳細と、「ダークプール」の仕組みを解説します。
目次
SBBO-Xとは?
SBIプライム証券の「SBBO-X(エスビービーオークロス)」は、「ダークプール」と呼ばれる仕組みを使ったサービスです。
「SBI BEST BID OFFER – X」の略称で、様々な取引所の中から「最も有利な価格で約定できる取引所に自動発注するシステム」のことです。
私たちは普段、東京証券取引所をはじめとする「取引所(立会市場)」で株式の売買を行います。
私たちは最初に証券会社に注文を出し、証券会社はそれを取り次ぐ形で、取引所に発注を行います。そして、取引所で売買が成立したときに、はじめて株式を購入(売却)できる仕組みです。
しかし、東京証券取引所以外にも、株式の売買が行える場所があります。
その代表的なものが、夜間取引ができるPTS市場(私設取引所)の存在です。
また、証券取引所が提供する立会外市場(ToSTNeT・ダークプール)も存在しますが、こちらはこれまで機関投資家だけに開放されていたため、私たちが普段利用することはありませんでした。
まとめると、株式取引が行われる場所には、
- 取引所(立会市場)
- ToSTNeT(立会外市場・ダークプール)
- 私設取引所(PTS市場)
の3つがあり、SBBO-Xを利用することで「上記の中から最も有利な価格で約定できる取引所に自動的に発注できる」ようになります。
SBBO-Xの対象となるPTS市場は、SBIジャパンネクスト証券が運営する「ジャパンネクストPTS(JNX)」のみとなります。
チャイエックスPTS(Chi-X)は対象外ですが、PTSではJNXの方が圧倒的に取引量が多いので、これは大きなデメリットにはなりません。
ダークプールとは?
SBBO-Xのようなサービスは、業界用語で「ダークプール」と呼ばれています。
ダークプールについて解説する前に、SOR(スマート・オーダー・ルーティング)の説明を簡単に行っておきます。
SOR注文((スマート・オーダー・ルーティング注文)とは、上記で「株式取引が行われる場所」として述べた「1.取引所(立会市場)」と「3.私設取引所(PTS市場)」において、有利な取引所を自動選択する注文方法です。
現在は、多くのネット証券でSOR注文が導入されています。
SOR注文を活用することで、東京証券取引所・PTS市場を問わず、その瞬間に最も有利な価格で約定できる取引所を選ぶことができます。
SBBO-Xは、SOR注文に「2.ToSTNeT(立会外市場)」を加えたものです。
「1.取引所(立会市場)」と「3.私設取引所(PTS市場)」はともに「取引所」ですので、発注価格と発注数量が一般公開されています。
私たち一般の投資家でも、証券会社にログインして板情報を見れば、現在出ている注文状況や、過去の約定履歴(歩み値)、そして出来高などが閲覧できます。
一方で「2.ToSTNeT(立会外市場)」は取引所の外で売買される仕組みですので、取引状況が一般には公開されません。
多くの投資家が知りえないところで(合法的に)隠れた取引が行われているのです。このように「表に出ない取引」のことを「ダークプール」と言います。
ダークプールとは何ですか?
取引所外取引の一種で、取引所を通さずお客さまの注文を証券会社内でつけ合わせ(マッチング)を行い、取引所の立会外市場(ToSTNeT)に同時に取次いで約定させる取引です。出典:SBBO-X(SBI Best Bid Offer) よくある質問
ダークプールは証券会社が取引所に注文を出さず、証券会社の中で取引が完結します。よって、証券会社が取引所に支払う手数料(場口銭)が不要となり、証券会社にとってコストダウンにつながります。
SBIプライム証券のSBBO-Xを利用することで、株式取引手数料を割引もしくは無料にできるのには、こうした背景があります。
なお、発注数量の一部がダークプール(立会外市場)で約定し、残りがSORに流れて東証またはPTSで約定するというケースもあります。
最適な形で注文を通せるシステムが整っているため、どのような注文でも、不利になることはありません。
ダークプールを使った他社サービスとの比較
ブルームバーグのニュース「成長続く日本株「ダークプール」、シェアPTS抜く-背後に最良執行」でも書かれているとおり、ダークプールの取引量は年々増加しています。
上記のニュースのデータでは、対取引所のダークプールのシェアは5%程度とまだまだ小さいです。しかし、その取引量は2016年の時点でPTS市場を抜いています。
また、取引量の増加に伴い、SBIプライム証券の他にも、ダークプールに取り次ぐ証券会社が増えています。
記事更新時点(2019年11月)では、マネックス証券が新たにSOR注文・ダークプールに対応しました。
楽天証券はSOR注文に対応済みですが、ダークプールには未対応です。
また、松井証券ではダークプール取引の結果を公開しています。
ダークプールは証券会社内での自己取引を含めたマッチングが中心で、取引所取引とは異なり売買状況が公表されないため、機関投資家にとっては大口取引を秘匿するメリットがあった。
一方では、取引の透明性に問題を指摘する市場関係者もいた。そのため、松井証券では、取引の透明性確保を目的に次の情報開示を行っている(7月末時点、8月7日公表資料より)。
◇利用可能者のうち1.2万人余り(対象者の97%)が同サービスを選択、価格改善は100万円当たり300円
◇東証での約定より不利なケースの出現度合いは、0.1%未満
◇利用者アンケートでは、5割の顧客が価格改善の頻度が高いと実感出典:個人投資家におけるダークプール利用(日本電子計算株式会社)
売買金額100万円に対して、300円の改善が見込めるというのは、大きなメリットだと思います。
一方で、ダークプールやSORは精度の高いシステムではあるものの、0.1%未満の確率で不利な約定になってしまうこともあるようです。
ただ、全体としてみると半数以上の利用者が「株式取引コストの低下を実感している」とのこと。
続いて、各社が展開しているサービスを比較します。
SBI証券 – SBBO-X
- マッチング方式
- 自社内マッチング(SBI証券のダークプール)
- 利用条件
- 500万円以上の預かり資産(詳しくは後述)
- ダークプールの利用料
- 無料
- 株式取引手数料の割引
- 通常手数料の10%~100%割引(100%割引 = 無料)
SBI証券のSBBO-Xは、ダークプールの利用料が無料になるだけでなく、通常の株式取引手数料の割引も受けられます。
つまり、SBBO-Xを利用することで「有利な価格で約定する可能性 + 通常の株式取引手数料の割引」という2重のメリットを享受することが可能です。
取引手数料の割引率はランクに応じて10%~100%となります。最高ランクになると現物株式手数料が100%割引(つまり無料)となります。
SBI証券の顧客同士、そしてSBI証券のダークプールに連携する他の証券会社の注文を自社内でマッチングさせます。
もし、マッチングしなかった場合はSOR注文へと回され、東証またはPTS市場の中から最も有利な取引所へと注文が取り次がれます。
メリットの大きいSBI証券のSBBO-Xですが、利用には一定の条件が必要です。(詳細は後述します)
参照:SBBO-X(SBI Best Bid Offer) – SBI証券
松井証券 – ベストマッチ(約定価格改善サービス)
- マッチング方式
- 自社内マッチング(松井証券のダークプール)
- 利用条件
- 信用取引口座を開設していること
- ダークプールの利用料
- 東証よりも有利な価格で約定した場合、改善金額相当額の30%を成功報酬として別途徴収
- 株式取引手数料の割引
- なし
松井証券は「ベストマッチ(約定価格改善サービス)」という名前でダークプールのサービスを提供しています。
松井証券の顧客同士、そして同社のシステムに連携する他の証券会社の顧客の注文をマッチングさせることで、東証よりも有利な価格での約定を目指します。
SBIプライム証券の「SBBO-X」は、株式取引手数料の割引がありましたが、松井証券の場合は、ベストマッチを利用する場合でも、通常通りの株式取引手数料がかかります。
加えて、有利な価格で約定した場合に限り「利用手数料」として「有利になった約定金額の30%」が成果報酬として徴収されます。
なお、松井証券はPTS取引を提供していますが、公式サイトを確認する限りでは、ベストマッチの発注先は「立会外市場 or 東証」となっており、PTS市場には連携していないようです。
auカブコム証券 – SOR注文
- マッチング方式
- モルガン・スタンレーMUFG証券が運営するダークプール(MSプール)
- 利用条件
- なし(誰でも利用可能)
- ダークプールの利用料
- 無料
- 株式取引手数料の割引
- 取引手数料の割引はなし(有利な価格で約定できるサービスのみ)
auカブコム証券のサービス名は「SOR注文」となっていますが、東証とPTSだけでなく、ダークプールへの取次もあります。
auカブコム証券が採用しているのは、モルガン・スタンレーMUFG証券が運営する「MSプール」です。
モルガン・スタンレーは機関投資家の顧客が多いことが想定されるため、ダークプール(立会外市場)の注文数が多いと考えられます。
もし、ダークプールで約定しなかった場合は、東証とPTS市場のうち、有利な市場へと注文が取り次がれます。
SBBO-Xのように、株式取引手数料の割引はありませんが、有利な価格で約定した場合に成功報酬が取られることはありません。
参照:SOR(スマート・オーダー・ルーティング)注文 – auカブコム証券
マネックス証券 – SOR注文
- マッチング方式
- 自社内マッチング(マネックス証券のダークプール)
- 利用条件
- ダークプールの利用は、信用取引口座または先物オプション取引口座の開設者のみ
- ダークプールの利用料
- 無料
- 株式取引手数料の割引
- 取引手数料の割引はなし(有利な価格で約定できるサービスのみ)
他社より1歩遅れてスタートしたマネックス証券のSOR注文は、東証とPTS(ジャパンネクストPTS)の中から、自動的に有利な市場へと注文を流します。
SOR注文は誰でも利用できますが、これに加えてダークプールを利用する場合は、信用取引口座もしくは先物オプション取引口座の開設が必要です。
ダークプールでは、マネックス証券内で売買注文のマッチングをし、それを東証の立会外取引システム(ToSTNeT)に取り次いで約定させます。
マネックス証券によると、ダークプールでマッチングする取引相手は、マネックス証券とは資本関係がない機関投資家に限定するとのことです。
また、SOR注文を通じてどの程度の改善効果(有利な約定)が得られたかを確認できる他、PTSで約定した場合は「JNX」、ダークプールで約定した場合は「ToSTNeT」と表示される仕組みです。
マネックス証券では、SOR注文やダークプールの問題点として指摘されている「不利な約定」に透明性をもたせるため、約定価格の改善効果について、株式会社QUICKの検証と評価を受けています。
第三者機関であるQUICKの評価・検証の結果については毎月「執行評価レポート」として、マネックス証券のサイトにて公開します。
スマートプラス – スマート取引
- マッチング方式
- 不明
- 利用条件
- なし(誰でも利用可能)
- ダークプールの利用料
- 東証よりも有利な価格で約定した場合、改善金額相当額の50%を成功報酬として別途徴収
- 株式取引手数料の割引
- 現物・信用取引ともに0円
スマートプラスは2017年に設立された新しい証券会社です。
ダークプールのマッチング方式は不明ですが、設立当初から「大和証券」が携わっているため、大和証券の顧客とマッチングしているのかもしれません。(詳細不明です)
株式取引アプリのサービス名は「STREAM(ストリーム)」です。
驚くべきなのは、STREAMの株式取引手数料は現物・信用取引ともに無料だということです。
STREAMでは、「東証よりも有利な価格で約定した場合に限り、その差額の50%を成果報酬としてもらう」という手数料体系を設定しています。
- 東証と同じ価格で約定した場合
- 現物取引・信用取引ともに手数料は0円
- 東証よりも6円有利な価格で約定した場合
- 有利になった価格の50%に相当する3円が手数料として徴収される
私たちにとって有利になった時だけ手数料が発生するため、ウィンウィンの関係になります。
なお、STREAMはPTS市場に参加していませんので、発注先は「ダークプール(立会外市場) or 東証」となります。
スマートプラスのSTREAMについては、下記の記事を参照ください。
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SBBO-Xの利用メリット
SBBO-Xを利用するメリットは、大きく3つあります。
- 株式取引手数料が割引になる(最大無料)
- 東証よりも有利な価格で約定する場合がある
- 呼び値がすべて0.1円刻み
SBBO-Xでは、株価の呼び値はすべて0.1円刻みとなっています。
東証は、株価によって1円刻み・10円刻みなど様々です。SBBO-Xでは、0.1円単位で価格が形成されるため、東証と比べて0.1円でも有利になる可能性を秘めています。
SBBO-Xには、デメリットはほとんどありません。
利用にあたって一定の条件が設けられていることと、上記で松井証券の公開データが示していた通り、ごくわずかな確率(0.1%未満)で不利な価格で約定する場合があるという程度です。
株式取引手数料の割引率は、ランクによって決まります。
ランクの判定基準は「月間の国内株式の売買代金」です。売買代金が大きくなる大口のデイトレーダーほど優遇される仕組みですね。
ランクと手数料の割引利率は以下の通りです。
- プラチナ:100%(手数料無料)
- ゴールド:約50%
- シルバー:約20%
- ブロンズ:約10%
もっともランクが低い「ブロンズ」でも、株式取引手数料は10%割引となります。
SBBO-Xの利用条件と申込み方法
SBBO-Xは現在、一定の利用条件が必要なサービスとなっています。
以前は利用条件の敷居がやや高かったのですが、その後条件が改定され、より多くの個人投資家がSBBO-Xを利用できるようになりました。
▼SBBO-X 利用条件
- 個人:20歳以上かつ国内現物取引の取引経験が1年以上
- 法人:国内現物株式の取引経験が1年以上
※取引経験は、「お客様の登録情報」や「SBI証券での取引履歴」を元に判定
申込み方法は以下の通りです。
- SBI証券にログインする
- お客様情報 設定・変更へ移動
- お取引関連・口座情報へ移動
- 国内株式 SBBO-Xサービス欄の「変更」をクリック
徐々に話題となっているSTREAM(ストリーム)も株式取引手数料の割引・無料化を実現しています。同じく、ダークプールを活用した証券会社です。
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