ROIとROIC・ROE・ROAの違いとは?投資の収益性を測る押さえておきたい指標

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ROI

企業の決算資料などを見ていると、一部の上場企業が「ROI」や「ROIC」を経営目標として掲げていることがわかります。

ROIとは「Return on Investment」の略称で、日本語では「投資利益率」と呼ばれている指標です。ROICは「投下資本利益率」と呼ばれます。

企業は、保有している現金を様々な事業や資産に投資します。そして、投資した事業を成功に導き「収益」という果実を得るわけです。

一方で、企業には「株主価値を最大化する」という目的もあるわけですから、ただ適当に資金を投じれば良いわけではなく、数あるプロジェクトの中から「最も投資効率が良い投資案件」を厳選して資金を投じなければなりません。

そのためには、どの投資案件にお金を投じるのが最も高い収益を生み出すのか?を考える必要があります。

ROIはこのように、複数の投資対象の投資利益率を比較する際に役立つ指標です。

ROIの数値が高いプロジェクトほど、投資収益率が高く、株主価値を最大化できる投資案件となります。

ROIの計算式

計算する女性

ROIは以下のように計算します。非常にシンプルです。

ROI = 利益 ÷ 投下資本 × 100

例えば、とある投資案件に1,000万円を投じ、その結果300万円の利益を得た場合は、

300万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 30%

となり、ROI(投資利益率)が30%の投資プロジェクトとなります。

一方で、450万円を投資すると120万円のリターンが得られる投資案件Bがあった場合、

120万円 ÷ 450万円 × 100 = 26.6%

となり、ROIは26.6%となります。

  • 投資案件A「投資額1,000万円、利益300万円」
  • 投資案件B「投資額450万円、利益120万円」

という複数の選択肢があった場合、どの投資案件を選択するのが最も効率が良いかは一見わかりにくいのです。

しかし、上記のようにROIを計算してみることで、投資効率が最もよい案件を見つけられます。

ROIとROICの違い

ROICの計算方法

ROIは一般的に使われる指標ですが、その他にも類似の指標がいくつか存在します。

  • ROIC(投下資本利益率)
  • ROE(自己資本利益率)
  • ROA(総資産利益率)

いずれも収益性(投資効率)を測る時に用いられる有名な指標で、覚えておきたいものばかりです。

続いて、上記の指標の違いについて詳しく解説していきます。

まず、名前が似ている「ROIC」との違い。(アールオーアイシーと読みます)

ROICとは「Return on Investment Capital」の略称で、日本語では「投下資本利益率」と呼ばれています。

(ちなみに、前述したROIは「Return on Investment」の略で「投資利益率」でした。)

両者の違いは、

  • 利益の定義の違い
  • 投下資本の定義の違い

の2点です。

ROIは「投資利益率」というザックリとした指標であり、ROICは企業が使う経営指標として、より明確に定義されているものです。

■ROI(投資利益率)の計算式
ROI = 利益 ÷ 投下資本 × 100

■ROIC(投下資本利益率)の計算式
ROIC = (営業利益 × (1 – 実効税率)) ÷ (株主資本+有利子負債)

投資案件の収益性は「利益 ÷ 投資額」というシンプルな計算式で導き出せます。

しかし、ROICの「利益」の部分で使うのは、営業利益に実効税率を掛け合わせた「税引き後営業利益」となります。

日本の実効税率は長らく40%でしたので、一般的には「40%」で計算されることが多いのですが、2017年時点では実効税率は30.86%へと下がっています。

「投下資本」の部分で使うのは、純資産と有利子負債(借入金)をあわせた金額です。

つまり、借金によってレバレッジをかけ、より効率よく営業利益を生み出すことが、ROICを高める上で重要なポイントとなります。

ROIとROIC ポイントまとめ

ROI(投資利益率)
一般的に利用されるザックリした投資収益率の計算に使われる指標。

ROIC(投下資本利益率)
企業が使う経営指標として明確に定義されているもの。

また、解説書を見てみると

  • ROI = 個別の投資案件を収益性を測るときに使う指標
  • ROIC = 企業全体の収益性を測るときに使う指標

と説明されていることもあります。しかし、このあたりは企業の決算説明資料などを見ても曖昧です。

企業評価にROIが用いられているケースはあまり見かけません。一方で、特定の投資案件の評価には「ROIC」が用いられているケースも多いです。

ROICは、経費や売上などのさらに細かい項目に分割することができます。

つまり、経営層が設定したROICの数値を、各事業部門や各部署ごとに落とし込めるようになっているのです。

このような方法を「ROICツリー」と呼んでいます。

投資家にとっても経営者にとっても便利な分析方法ですので、この機会にぜひ覚えておくことをおすすめします。

ROICツリーの詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。

ROICとROEの違い

ROE3要素

ROICとROE(自己資本利益率)という指標は非常に似ています。

どちらも投資利益率を表すための指標だからです。

ROICとROEの違いには大きく2つのポイントがあります。

  • 借入金を含めるか含めないかの違い
  • 投資家目線か経営者目線かの違い

上記の2つについて、それぞれ解説をしていきます。

まず、ROICは純資産(株主資本)と有利子負債(借入金など)を含めて、どれくらいの利益を生み出したかを測る指標です。

一方で、ROEは純資産(株主資本)を使ってどれくらいの利益を生み出したかを測るため、借金の有無は除外して計算しています。

この2つをもう少しわかりやすく説明すると、ROICは企業が経営効率を最大化するために、借金によるレバレッジをかけることも含めて、最適な選択をするために使う指標ということになります。

借金によるレバレッジ効果を使って投資効率を高め、本業による利益(営業利益)を最大にするために計算するのがROICなので、「利益」の部分に「税引き後営業利益」を使います。

一方で、ROEは投資家目線の指標です。

投資家にとっては、営業利益や経常利益ではなく、最終利益(=投資家の利益)が最も重要ですので、「利益」の部分には「(税引き後)当期純利益」を使います。

経営者は営業利益を重視する
営業利益は本業の利益を表すから。よってROICを指標として採用することが多い。

投資家は当期純利益(最終利益)を重視する
投資家に分配される利益は、当期純利益(最終利益)である。よってROEを重視することが多い。

また、純資産(株主資本)は投資家が出資したお金です。

よって、「投資家のお金を上手く活用して、最終利益(つまり投資家に帰属するリターン)を最大化できているか?」を測る意味で、ROEを重視する投資家が多いのです。

ROEは投資家のウォーレン・バフェットが重視している指標としても知られています。

特に、ROEを分割する「デュポン方式」の考え方は、投資家・経営者に限らず覚えておいて損はないでしょう。

ROICとROAの違い

ROICとROAの違い

ある程度投資経験がある人であれば、借金を含めた収益性を測る指標「ROIC」と、「ROA(総資産利益率)」は同じではないか?と思われるかもしれません。

ROICとROAは非常に似ている指標ですが、やはり「経営者目線(ROIC)」と「投資家目線(ROA)」という点で違います。

■ROIC(投下資本利益率)の計算式
ROIC = (営業利益 × (1 – 実効税率)) ÷ (株主資本+有利子負債)

※「営業利益 × (1 – 実効税率)」は「税引き後営業利益」のこと。「通称:NOPAT(ノーパット)」と呼ばれます。

■ROA(総資産利益率)の計算式
ROA = 当期純利益 ÷ 総資産

まず、「利益」の部分ですが、ROAが当期純利益(最終利益)を用いているのに対して、ROICは税引き後営業利益を使っている点で異なります。

これは、ROAが投資家に帰属するリターン(当期純利益)をベースに計算されている一方で、ROICが支払利息などの経常損益に相当する部分を除外した「企業の本業のリターン」をベースに計算されているからです。

そして、「投下資本」の部分でも若干の違いがあります。

ROAは「総資産(純資産・有利子負債・その他すべての負債)」を用いて計算します。

ROICは「純資産+有利子負債」のみを使って計算しているため、(企業にとって)より本業の収益性を測りやすいです。

わかりやすく言うと、

  • ROA:最終利益ベースで見た指標(投資家向け)
  • ROIC:営業利益ベースで見た指標(経営者向け)

となります。

4つの指標を総まとめ

ROI・ROIC・ROE・ROAの4つの指標はいずれも、収益性を測る指標です。

微妙にニュアンスの違いがありますが、本業以外の損益が大きくなるなど、条件が大きく異なるケースを除いて、ほぼ同様の計算結果となります。

  • ROI・ROICは経営側が使う指標
  • ROE・ROAは投資家側が使う指標
  • ただし、いずれも投資先の収益性を測る指標であるという点で同じ

と覚えておくと良いと思います。

ROIの目安

企業分析

では、ROI(またはROIC)はどれくらいの数値であれば良い投資案件だと判断できるのでしょうか。

ROIの平均は業種や投資の種類によって大きく異なるため、一概には言えません。

いくつか事例を挙げてみます。

サイゼリヤのROIは20%

(少し古い話ですが)ファミリーレストランの「サイゼリヤ」は新規出店時の目安として「ROI 20%以上」を設定していたと言われています。

ROIが20%ということは、新規出店をしてから5年間で投下資本を回収できる程度の利益率となります。

5年以内に投資額を回収できるとというシミュレーションができれば新規出店を行い、そうでない場合は新規出店はしない。

このように、ROIを用いた経営判断を行っていたと言われています。

マルイのROIは12%

最近の話ですが、ショッピングモールの「マルイ」で有名な丸井グループは、投資家に対して積極的に経営目標を開示していることで知られています。

マルイの場合、2016年4月にオープンした「博多マルイ」のROIは12%と見積もっています。

つまり、博多マルイの投資額は約8.3年程度で回収するというシミュレーションの元、出店しているわけです。

丸井グループの小売事業全体では2021年3月期のROICを5.3%にするという目標を掲げています。(フィンテック事業はROIC4.1%以上目標)

そして、丸井グループ全体では2016年3月期から2021年3月期までの期間で、ROICを3.3%から4%以上にすることを目標にしています。

マルイのフィンテック事業(エポスカードなど)のような金融ビジネスの場合、どうしても分母となる「株主資本+有利子負債」が巨大になります。

巨額の株主資本と有利子負債がなければ、金融ビジネスを手がけるのは難しいのです。

よって、フィンテック事業のROICは、博多マルイのような店舗運営ビジネスに比べると低くなってしまいます。このように、業種によってもROICの目安は異なってきます。

私自身の太陽光発電所への投資

また、私自身の話ですが、数年前に太陽光発電所への投資を行った際、「生産性向上設備投資促進税制」という制度を活用した経験があります。

その制度を利用するためには、経産省が掲げる一定の条件を満たす必要がありました。

その条件の一つに、投資収益率(ROI)が15%以上(中小企業の場合は5%以上)改善する計画となっているかどうかという条件が盛り込まれていました。

「高度成長期に、製造業のROIが5%前後だった」という実績があるため、経産省が掲げる中小企業のROIのベンチマークを5%としているのかもしれません。

次の記事は、ROE(株主資本利益率)の詳しい解説です。

2014年に「伊藤レポート」が発表されたことをきっかけに、多くの上場企業がROEの向上に取り組みはじめています

投資・経営を行う上で知っておきたい重要指標です。

ROAやROEについてもっと詳しく

最後まで読んでいただきありがとうございました

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