ROICツリーとは?経営や投資に活かせるバリュードライバー分析のやり方

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ROIツリー

以前の記事で、ROIC(投下資本利益率)について詳しく説明しました。

ROE(株主資本利益率)やROIC(投下資本利益率)はどちらも、経営効率を測る指標です。より少ないお金を使って、大きなリターンを稼ぐことが、ROEやROICを高める方法です。

また、これらの指標は「売上高営業利益率」や「投下資本回転率」に要素分解できます。つまり、営業利益率や投下資本回転率を上げればROICは上昇し、結果的に経営者や投資家へのリターンは大きくなります。

しかし、一言で「営業利益率や投下資本回転率を上げよ」と言われても、一体何から手を付けて良いのかわかりません。

そこで、営業利益率や投下資本回転率のようなROICの構成要素をさらに細かく分解し、ツリー状にしたものがROICツリーです。

ROICツリーは、特定の指標を要素分解し、その指標を改善するためのキー(主要因)を見つけることから、バリュードライバー分析とも呼ばれます。

ROICツリーは主に経営者が用いる分析指標ですが、最終的に企業からリターンを得る株式投資家にとっても役立つ指標です。

企業を細かく分析していくことで、これまでとは違った視点で投資先企業を見ることができます。

これまでの説明がわからなくても問題ありません、今回はできる限り丁寧にROICツリーの使い方を解説します。

ROICツリーが投資家にとって重要な理由

分析

著名投資家のウォーレン・バフェット氏をはじめ、多くの投資家はROE(株主資本利益率)を重視します。

ROEは企業の経営効率(少ないお金で大きな利益を生み出せているかどうか)を測る指標として適しており、最近では、JPX日経400のような主要指標においても活用されています。

投資家がROEを重視する理由は、最終的な利益(税引き後の当期純利益)を株主のお金(株主資本)で割ったものが、ROEの計算方法だからです。

→ROEの計算方法についてはこちらの記事を参照

わかりやすく説明すると、特定の企業に100万円を投資した場合、毎年20万円の純利益を稼いでくれるならROE20%、6万円の利益しか稼げないならROEは6%の企業となります。

せっかく投資するなら、より多くのリターンをもたらしてくれる企業に投資したいですから、高ROE企業が投資家に注目されるのは当然のことと言えます。

ROICも経営効率を測る指標ですが、こちらは主に「経営者」が重視する指標です。

「税引き後営業利益 ÷ (株主資本+有利子負債)」でROICが計算できます。計算に使う利益が最終利益(投資家利益)ではなく税引き後の営業利益であること、投下資本が投資家から集めたお金(株主資本)だけでなく、借金も含めた上で計算する点がROEとの違いです。

ROEが要素分析できることについては「デュポン式」の記事で解説しましたが、ROICも同じように要素分解できます。

細かい点は省きますが、ざっくり表にするとこのような認識となります。

投資家が重視 経営者や銀行が重視 従業員が重視
ROE ROIC ROICツリー

最終的な投資家リターンを測る指標としてROEがあり、その前段階として、企業のリターンを最大化しなければならない経営者が重視する指標としてROICがあり、それを細かく砕いて現場レベルまで落とし込んだものがROICツリーであるというと、理解しやすいと思います。

ROICを分解してツリーを作る

分解

投資家が重視するROE(株主資本利益率)が、

  • 売上高純利益率
  • 総資産回転率
  • 財務レバレッジ

という3つの指標に要素分解できることは、デュポンシステムの記事で解説しました。

これと同様に、(税引前)ROIC(投下資本利益率)も

  • (税引前)売上高営業利益率
  • 投下資本回転率

という2つの要素に分解できます。(税金は無視して税引前で考えるのが一般的です)

そして、売上高営業利益率や投下資本回転率も同様に、さらに細かく分解することができ、それをまとめたものが冒頭の画像で示したROICツリーとなります。

ROIツリー

代表的なROICツリーは上記のようなものですが、ROIツリーは各企業ごとに異なります。

なぜなら、ROICを改善するための「バリュードライバー分析(主要因となる項目を発見するための分析)」こそが、ROICツリーを作成する目的だからです。

それぞれの項目について見ていきます。

ROIC(最終的に改善したい指標)は2つの要素から構成されています。売上高営業利益率と投下資本回転率を改善すれば、おのずとROICを高めることができます。

売上高営業利益率
売上高に対する利益率を高めることは、ROICを改善する第一の要素としてあげられます。

そして、売上高営業利益率をさらに分解すると、「販管費」と「原価」に分けられます。

販管費はさらに、研究開発費や人件費、広告宣伝費などに分解でき、経費を使いすぎている費用項目(バリュードライバー)を特定し、その部分をコストカットすることで、販管費が改善します。

販管費の改善は売上高営業利益率の改善に貢献し、さらには最終目標指標としているROICの改善にも貢献します。これが、ROICツリーの考え方です。

同じように原価についても、「材料費」や「労務費」、「製造経費」に分解でき、試行錯誤の結果「材料費」をより安く調達する方法が見つかれば、ROICの改善に役立ちます。

投下資本回転率
投下資本回転率は(少ない投下資本で)効率よく売上を上げているかどうかを測る指標です。

投下資本回転率を高めるためには、固定資産の効率性を改善する必要があります。

固定資産回転率は、現在保有している固定資産の金額の何倍の売上をあげているかを測る指標で、「売上高 ÷ 固定資産の額」で計算できます。

保有する固定資産をより少なく、売上をより大きくすることで資産効率を高められます。

また、固定資産はさらに「有形固定資産」と「無形固定資産」に分解できます。

例えば、ITソフトウェアと不動産を保有している会社が、ROICツリーによるバリュードライバー分析を行ったとします。

ITソフトウェアは売上に貢献しており「無形固定資産回転率」は高かったものの、不動産は資産に対する売上が小さく「有形固定資産回転率」が低いという結果がわかりました。

その結果、不動産を売却し、ITソフトウェアへの投資に注力することで、固定資産回転率が向上し、結果的に投下資本回転率の改善、しいてはROICの上昇につながるという考え方です。

運転資本回転日数も同様です。(ROICツリーの説明では運転資本回転率で説明しているケースもあります)

無駄な在庫を減らし、売掛金の早期回収や仕入れ債務の支払いサイクルを長期化することで、資金繰りを安定させることができ、これが運転資本回転日数の向上に繋がります。

ROICツリーは自由に作って良い

積み木で遊ぶ子供

ROICツリーはバリュードライバー(主要因)を分析するために作るものですから、投資家が投資先企業ごとにカスタマイズして自由に作っても構いません。(というよりもそうすべきだと私は考えます)

例えば、IT企業の分析であれば「販管費率」の中に「サーバー費用」などが含まれていてもよいでしょう。

企業によってはROICツリーを公開しているケースもあります。例えば、ニッポンハムやオムロンのROICツリーは以下のようになっており、独自のROICツリーを作る上での参考になります。

オムロンのROICツリー
出典:オムロン(PDF)

日本ハムのROICツリー
出典:ニッポンハム(PDF)

このように原因を分解していくことで、将来のROEやROICを予想する手がかりを見つけることができます。

ROICツリーが閲覧できる無料ツール

パソコンを使う

ROICツリーはエクセルなどを使って自分で作ることもできますが、上場企業のデータであれば誰でもすぐ閲覧できます

GMOクリック証券が口座開設者に無料で提供している「財務分析ツール」では、すべての上場企業のROICツリーの推移が閲覧できます

下記はソフトバンクのROICツリーを、GMOクリック証券のツールで表示したものです。ROICツリーを構成しているそれぞれの指標について、その推移を含めて確認できる便利なツールです。

ソフトバンクのROICツリー

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企業価値の分析を重視する投資家にとって、GMOクリック証券の提供する財務分析ツールは強力な武器になると思います。

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