MSCIとFTSEの違いを調べてみた、インデックス運用で知っておきたい株価指数

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MSCIとFTSE

日経平均株価やNYダウのような、特定の指数に連動する投資信託を「インデックスファンド(パッシブファンド)」と言います。

インデックスファンドには、低コストで運用できたり、経済活動によって生み出された利益・経済成長が取り込めたりする利点があるため、長期の資産形成に向いていると言われます。

国内株式への投資では、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に連動する投資信託が一般的ですが、世界に目を向けると「MSCI」や「FTSE」と名の付く株価指数に連動する投資信託が多いです。

この記事では、世界の様々な株価指数を算出し、投資の世界でも頻繁に利用されている「MSCI」に関する説明を行います。

あわせて、MSCIとともに知名度の高い「FTSE」についても言及し、両者の違いを明らかにします。

MSCIとは?

MSCI

MSCIは「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」の略称で、社名でもあり、同社が算出する指数の総称でもあります。

歴史上、米モルガン・スタンレー社とは関係の深い会社ですが、モルガン・スタンレーは2009年にMSCI社の全株式を売却しており、現在MSCI社は完全に独立した企業となっています。

MSCI社は、株価指数の算出をはじめ、様々な金融サービスを手がけている会社です。ニューヨーク証券取引所に上場しており、株式を買うことも可能です。

記事執筆時点(2019年7月23日時点)でMSCI社の時価総額は2兆円を超えています。

世界的に知名度の高い格付け会社であるムーディーズの時価総額が約4兆円、スタンダード・アンド・プアーズの時価総額が6.5兆円程度ですので、左記の企業に比べると規模は小さいです。

とはいえ、MSCI社は米国企業の中でも大企業の部類に入っていることがわかります。

続いて、MSCIの代表的な株価指数をまとめます。

MSCI ACWI(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス)

世界経済

MSCIが算出している株価指数の中で、最も広範囲に及ぶ指数が「MSCI ACWI & Frontier Markets Index」です。

※ACWI = All Country World Index(全世界指数)

MSCI ACWI & Frontier Markets Indexは、全69カ国の株式を対象とした株価の平均指数です。

  1. 先進国株式:23カ国
  2. 新興国株式:23カ国
  3. フロンティア市場の株式(新興国よりも貧しい発展途上国):23カ国
  4. 計:69カ国

MSCIの算出方法は時価総額加重平均なので、規模の大きい株式ほど指数に与える影響が大きくなります。

MSCI ACWI & Frontier Markets Indexには、新興国よりも貧しいフロンティア市場の株式も含まれていますが、その影響度は極めて小さいものとなっています。

逆に、時価総額の大きい米国株(マイクロソフトやアップル、アマゾンなど)の組入比率が高くなっているのが特長です。

フロンティア市場の株式は、まだまだ時価総額が小さかったり、リスクが大きかったり、また様々な法律の規制があることから、投資対象としては一般的ではありません。

よって、MSCI ACWI & Frontier Markets Indexをベンチマークとした投資信託は一般的ではなく、おそらく国内では買うことができないと思われます。

フロンティア市場の株式を除外した「MSCI ACWI(MSCI All Country World Index)」が、「全世界株式の指数」として一般的に知られている指数です。

  1. 先進国株式:23カ国
  2. 新興国株式:23カ国
  3. 計:46カ国

の株式によって算出されており、投資対象国の時価総額の85%以上をカバーしています。

MSCI ACWIの公式サイト

MSCI コクサイ・インデックス

株価指数

先進国23カ国・新興国23カ国からなる「MSCI ACWI」を、先進国と新興国に分けたインデックスが、

  • MSCI ワールド・インデックス(先進国23カ国)
  • MSCI エマージング・マーケット・インデックス(新興国23カ国)

です。

これらの指数も知名度は高いのですが、日本の運用業界においては「MSCI コクサイ・インデックス」が最も有名です。

MSCI コクサイ・インデックスとは、日本人が海外(先進国)に投資をする上で活用できる株価指数で、MSCI ワールド・インデックス(先進国23カ国)から、日本株式だけを除外した先進国22カ国で構成されています。

ただし、指数は米ドルベースで計算されるのが普通で、海外では「MSCI Kokusai Index」と表記されます。

私たち日本人が株式で資産運用することを考えた場合、基本となるのが

  • TOPIXまたは日経平均株価(日本の株式)
  • MSCI コクサイ・インデックス(日本を除く先進国の株式)

の2つの指数に連動する投資信託を組み合わせることです。

MSCI コクサイ・インデックスに連動する投資信託としては、eMAXIS Slim 先進国株式や、ニッセイ外国株式インデックスファンドが有名です。

MSCIとFTSEの違い

FTSE

MSCIは株価指数などを算出している米国の企業です。

対して、イギリスのロンドンを拠点とする指数算出企業として有名なのがFTSEです。

FTSEは「FTSE Russell」の名前でサービスを展開しており、MSCIと同様に様々な指数を組成・算出しています。

→FTSE Russellの公式サイト

多くの投資信託が、MSCIの算出した指数をベンチマークとしています。

一方で、低コストインデックスファンドで絶大な人気を誇る「バンガード社」の投資信託・ETFは、FTSEの算出した株価指数をベンチマークとしています。

ベンチマークが異なれば当然、将来のリターンにも差が生じます。(微々たるものですが)

MSCIとFTSEの株価指数で異なる点は2つあります。

  1. FTSEは小型株を含み、MSCIは小型株を含まない
  2. 先進国と新興国に含める対象国が微妙に異なる

上記2点について、詳しく見ていきます。ちなみに、算出方法はどちらも時価総額加重平均なので同じです。

FTSEは小型株を含み、MSCIは小型株を含まない

利回り

MSCIとFTSEの最大の違いは、小型株を含むかどうかです。

MSCIが算出するインデックスは、大型株・中型株のみが対象となり、小型株は対象外です。よって、投資対象国の時価総額の85%をカバーしています。

対するFTSEが算出するインデックスは、大型株・中型株・小型株のすべてを含むため、投資対象国の時価総額の98%をカバーすることができています。

例えば、先進国・新興国をあわせた「全世界株式」のインデックスで比較すると以下のようになります。

MSCI

MSCI ACWI(MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス)をベンチマークに採用している投資信託は、

  • eMAXIS Slim 先進国株式
  • ニッセイ外国株式インデックスファンド

など。

先進国23カ国・新興国23カ国の計46カ国の大型株・中型株が投資対象。

FTSE

FTSE グローバル・オールキャップ・インデックスをベンチマークに採用している投資信託は、

  • 楽天・全世界株式インデックスファンド
  • バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)

など。

先進国25カ国・新興国23カ国の計48カ国の大型株・中型株・小型株が投資対象。(2020年までに計50カ国になる見通し、詳しくは後述)

先進国と新興国に含める対象国が微妙に異なる

決断する

MSCIとFTSEのもう1つの違いは、投資対象となる国が違う点です。

代表的なところで言うと、MSCIは韓国株を「新興国株式」に分類していますが、FTSEでは「先進国株式」に分類しています。

2019年3月時点の資料「FTSE classification of equity markets」と、やや古いのですが2017年2月時点の資料「MSCI 指数ハンドブック」を元にして、各社の分類を比較してみました。

▼先進国に分類している国々

国名 FTSE MSCI
オーストラリア
オーストリア
ベルギー・ルクセンブルク
カナダ
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
香港
アイルランド
イスラエル
イタリア
日本
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
ポーランド
ポルトガル
シンガポール
韓国
スペイン
スウェーデン
スイス
イギリス
アメリカ
合計 25カ国 23カ国

MSCIは韓国・ポーランドを「新興国」に分類していることから、先進国の分類数は23カ国です。

また、FTSEでは「ベルギー・ルクセンブルク」を1カ国として記載していますが、MSCIは「ベルギー」と表記しており、ルクセンブルクの表記はありません。

おそらくですが、これは表記上の違いだけであり、MSCIにおいてもベルギー株の中にルクセンブルクを含んでいると思われます。

▼新興国に分類している国々

国名 FTSE MSCI
韓国
ポーランド
ブラジル
チェコ共和国
ギリシャ
ハンガリー
マレーシア
メキシコ
南アフリカ
台湾
タイ
トルコ
チリ
中国
コロンビア
エジプト
インド
インドネシア
クウェート
パキスタン
ペルー
フィリピン
カタール
ロシア
UAE(アラブ首長国連邦)
合計 23カ国 23カ国

FTSEは2020年3月までに「サウジアラビア」「中国A株」を新たな新興国として追加し、以降は計25カ国が新興国に分類されます。

FTSEが新興国に分類している「クウェート」と「パキスタン」は、MSCIではフロンティア市場に位置づけています。

また、FTSEが先進国に分類していた「韓国」と「ポーランド」は、MSCIは新興国に分類しています。

先進国にも新興国にも分類されていない国々は、フロンティア市場に分類されているか、もしくはフロンティア市場にも分類されていない小さな国々となります。

投資対象国や分類方法は定期的に見直しが行われているため、将来的にMSCIがクウェートやパキスタンの株式を「新興国株式」に組み入れる可能性も十分あります。

利回りはどちらの方が高い?

分ける

上記を比較してみてわかることは、FTSEの方がより幅広い株式・国々に分散投資しているということです。

現代ポートフォリオ理論に基づけば、より幅広い株式・国々に分散投資をする方が、リスク・リターンは高くなります。

もちろん、将来どちらのリターンが高くなるのかは誰にもわかりませんが、記事執筆時点では若干FTSEの方が高リターンになっているようです。

▼年率リターンの比較(2019年6月末時点・米ドルベース)

期間 FTSE MSCI
1年 6.1% 6.3%
3年 12.1% 12.2%
5年 6.7% 6.7
10年 10.7% 10.7%
15年 7.7% 7.6%
20年 5.6% 5.3%

FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの比較
※出典:わたしのインデックス

FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動する投資信託については、下記の記事をご覧ください。

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執筆者の詳細プロフィール
右も左もわからない状態で株式投資をはじめ、10年以上が経ちました。その間に、引きこもりになったり、会社を設立したり、いろいろなことがありました。「いい人」がたくさんいる世界の実現が目標です。「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」 - アインシュタイン 姉妹サイト「今日の経営」でも記事を書いています。

より良い情報をお届けするため、川原裕也 がメンテナンスを担当いたしました。( 更新)

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