個人向け国債の変動10年と銀行の普通預金はどちらが良い?金利やリスクを考察
執筆者:川原裕也
※記事内に広告を含む場合があります
当サイトは更新を終了しました。
長きにわたり当サイトを愛読、応援くださった方々には誠に感謝しております。
※この記事の内容は執筆時点のものです。サービス内容・料金など、現時点の最新情報とは異なる場合がございます。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
ハイリスク・ハイリターンな株式に対して、安全な資産であると言われるのが「債券」です。
国内でも、証券会社などを通じて企業が発行する「社債」や国が発行する「国債(個人向け国債)」を購入できます。
しかし日本ではまだまだ債券投資は一般的ではなく、債券投資の代替方法として銀行預金(定期預金や普通預金)を活用する方も多いです。
今回は、安全な運用を目指す場合、個人向け国債と銀行の普通預金ではどちらを選ぶ方が良いかを考えてみます。
3種類の個人向け国債
株式と同じく、債券(国債)も「債券市場」で売買されています。
しかし債券市場は機関投資家向けに開かれているものであるため、私たち個人投資家が国債を買う場合は通常「個人向け国債」という商品を選びます。
個人向け国債は毎月発行されており、全国の証券会社や銀行を通じて、1口あたり1万円から購入可能です。(ネットでも購入できます)
個人向け国債には3つの商品があります。
- 変動10(変動金利型 10年満期)
- 固定5(固定金利型 5年満期)
- 固定3(固定金利型 3年満期)
名前のとおり、上記3つの商品は、金利タイプと満期が異なります。
固定金利型は、満期まで金利が変わることはありません。(満期のことを、債券投資では「償還日」といいます)
つまり、将来いくらの利息(金利収入)が得られるかが、購入した時点で確定します。
一方、変動金利型の商品「変動10」は、市場金利の変動に伴い、半年ごとに適用金利が変わります。
つまり、受取利息が増えたり、減ったりするため、満期を迎えた時点で、トータルの利息収入がいくらになるのかは、購入した時点では確定しません。
金融理論では、満期が最も長く、かつ金利が変動型である「変動10」は、個人向け国債の中で最もリスクの高い商品と言えます。
リスクが高いと言っても、国債は原則として元本保証なので、(国が破綻でもしない限りは)元本割れが起こることはありません。
中途解約しても元本割れしない
個人向け国債に3つの商品があることを述べました。
続いて、3つの個人向け国債に共通する特徴と、各商品の金利についてわかりやすく解説します。
下記は、3つの個人向け国債すべてに共通する項目です。
- 利払いは年2回(半年ごと)
- 購入金額は最低1万円から1万円単位
- 額面、償還金額は100円
- 発行後1年が経過するといつでも中途換金が可能(額面で償還)
- 受取利息は20.315%の税金が差し引かれる(銀行預金の受取利息と同じ)
- 金利の下限は年率0.05%
上記で気になるポイントをまとめておきます。
通常、1度購入した債券は、
- 満期(償還日)まで保有する
- 途中で売却する(中途解約する)
という2つの方法で現金化を行います。
新発債券の場合、満期(償還日)まで保有すれば額面で償還されます。
言い換えると、最初に10万円を投資したら、保有期間中に定期的な利息収入を受け取り、満期(償還日)に10万円がそのまま返ってくるということです。
一方、途中で売却する「中途解約」を選んだ場合、その時点における市場での債券価格で現金化します。
つまり、最初に投資した10万円分の債券を、11万円で売却できたり、9万円で売却することになる可能性があります。
しかし個人向け国債に関しては、国が「元本保証」するという特殊な商品生になっています。
市場価格に関係なく、購入後1年が経過すればいつ売却(解約)しても、10万円分の債券は10万円として返ってきます。
ただし中途解約する場合は「直前2回分の税引前利息 ✕ 0.79685」の金額が差し引かれた状態で返ってきます。
つまり、中途解約しても元本割れはしないものの、利息の一部をペナルティとして返還しなければならないということです。
とはいえ、中途解約しても元本が保証されるという個人向け国債ならではの特徴は、「私たち個人投資家にとって非常にありがたい制度」であることは間違いありません。
個人向け国債の金利
3種類の個人向け国債はそれぞれ、金利が異なります。
- 変動10
- 基準金利 ✕ 0.66
- 固定5
- 基準金利 - 0.05%
- 固定3
- 基準金利 - 0.03%
基準金利は主に、10年国債利回り(10年国債の市場金利)を元に決まります。
※基準金利の詳しい解説は、財務省の個人向け国債についてのよくある質問を参照してください。
当然、10年国債利回りがゼロになったり、マイナス利回り(マイナス金利)になると、個人向け国債への投資妙味はなくなってしまいます。
こうした問題に対処するため、個人向け国債ではすべての商品において「金利の下限は年率0.05%」と定められています。(個人向け国債だけの特例です)
記事執筆時点(2020年2月)では、市場金利は「マイナス金利」の状態です。
つまり国債を保有すれば、実質的には収益がマイナスになってしまうという、いわばありえない状態となっています。
しかし個人向け国債に関しては、マイナス金利であろうと問題ありません。
なぜなら、中途解約時の元本保証と、下限金利(年率0.05%)が定められているからです。
マイナス金利の状況で個人向け国債に投資をするということはつまり「市場金利よりも高利回りで運用できる」ことを意味します。
上記のとおり、昨今の低金利下では、個人向け国債の金利は、下限となる年0.05%に張り付いたままです。
しかし、大手銀行の普通預金金利や定期預金金利が、個人向け国債をさらに下回っていることからも、個人向け国債への投資メリットは大きいと言えます。
個人向け国債の金利上昇リスク
記事執筆時点において「現在のマイナス金利は歴史上、稀に見る低金利」であることから、「将来的に金利が下がる可能性よりも、金利が上がる可能性の方が高い」と言われています。
仮に近い将来、金利が上昇すると考えた場合、「固定金利」を選ぶよりも「変動金利」を選ぶ方がお得です。
なぜなら、変動金利タイプである「変動10」は、金利が下がると受け取り利息が減りますが、金利が上昇するとそれにスライドする形で適用金利が上がるため、受取利息が増えるからです。
一方、固定金利タイプである「固定5」や「固定3」は、金利が上昇しても受け取り利息は固定されたままですので、その恩恵を受けることはできません。
通常は、今後さらに金利が下がると固定金利の債券を持っている方がお得になるのですが、個人向け国債には「年0.05%の下限金利」が設定されているため、「変動10」を買っても、一定以上は受け取り利息が減ることはないのです。
■変動金利タイプと固定金利タイプ、金利の上昇・下落で得するか、損するか
- 変動金利
- 金利上昇:得する、金利下落:年0.05%の下限金利によって損しない
- 固定金利
- 金利上昇:損する、金利下落:固定金利なので損しない
このように比較してみると、現在の低金利の状況では「変動10」の選択に優位があると言えます。
もし「固定3」や「固定5」を持っている方がいましたら、将来的に市場金利が大きく上昇した場合には、中途解約を視野に入れておきましょう。
銀行の普通預金が美味しい
銀行の普通預金は市場金利を反映して設定されるのが普通です。
記事執筆時点(2020年2月)では、某メガバンクの預金金利は以下のようになっていました。
- 普通預金:0.001%
- 定期預金:0.01%
バブル期には年6%もの金利収入が得られました。しかし現状は、預金してもほとんど利息はつきません。
これなら、年0.05%の利回りで運用できる「個人向け国債 変動10」に投資をした方がお得であることは言うまでもありません。メガバンクの定期預金よりも、5倍も高い金利で運用できます。
しかし、銀行の中には「非常に高い普通預金金利」を提供するところもあります。
それが、
- 楽天銀行(マネーブリッジ)
- GMOあおぞらネット銀行(証券コネクト口座)
- あおぞら銀行 BANK
などです。
楽天銀行は、楽天証券の口座と連携することで利用できる「マネーブリッジ」で、普通預金金利を年0.1%に優遇しています。
※2022年4月1日:更新
マネーブリッジの優遇金利が改定されました。2022年4月1日以降は、預金額のうち300万円を超える部分については、優遇金利が下がります。預金額300万円以下の部分については従来どおり変更ありません。
GMOあおぞらネット銀行は、GMOクリック証券との口座連携で「証券コネクト口座」を利用でき、普通預金金利を年0.11%に優遇しています。
あおぞら銀行 BANKは、特別な条件なく、普通預金金利が年0.2%です。
※いずれも記事執筆時点(2020年2月18日)の金利です
もちろん、国債は国の信用リスクに依存しますが、銀行預金は銀行の信用リスクに依存します。
国よりも銀行の方が破綻リスクは大きいです。(メガバンクなどに比べると、楽天銀行やGMOあおぞらネット銀行の方が破綻の可能性は高いでしょう)
こうした理由から、楽天銀行やGMOあおぞらネット銀行などにお金を預けるのが怖いと感じる方もいるかもしれません。
しかし、日本の銀行には「ペイオフ(預金保険制度)」があるため、普通預金においては最大1,000万円までを国が補償してくれます。
これは楽天銀行だろうと、GMOあおぞらネット銀行だろうと、もちろんメガバンクだろうと同じです。
もし銀行が破綻しても、1,000万円までは補償される。
こうした制度を考えると、年0.05%の個人向け国債「変動10」を買うよりも、普通預金金利の高い銀行で運用する方が、得られる利息収入は大きくなります。
そしてなによりも、普通預金での運用には
- なじみがあり、手軽に利用できる
- いつでも自由に入金・出金できる(中途解約のペナルティなし)
- 市場金利に応じて金利がスライドする(可能性が高い)
という3つの不変のメリットがあります。
中途解約してもペナルティが一切ない、手軽に利用できるというのは、普通預金の最大の強みです。
合わせて読みたい記事
最後まで読んでいただきありがとうございました
こちらの記事にコメントが投稿されました
-
ゆずっこ さんがコメントしました - 2024年12月2日
ゆうちょ銀行のiDeCo(個人型確定拠出年金)ゆうちょAプランの手数料と評判 -
No Name さんがコメントしました - 2024年11月23日
決算書の「百万円」や「千円」の単位を素早く読む方法 -
P さんがコメントしました - 2023年12月18日
決算書の「百万円」や「千円」の単位を素早く読む方法 -
No Name さんがコメントしました - 2023年10月8日
プロスペクト理論とは?投資に活かす方法、あなたの知らない心理学の世界
0件のコメント