有価証券報告書と決算短信の違いをわかりやすく解説、投資家はどちらを見れば良いか
執筆者:川原裕也
※記事内に広告を含む場合があります
当サイトは更新を終了しました。
長きにわたり当サイトを愛読、応援くださった方々には誠に感謝しております。
※この記事の内容は執筆時点のものです。サービス内容・料金など、現時点の最新情報とは異なる場合がございます。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
投資を検討している銘柄の業績を把握する方法はさまざまです。
- ヤフーファイナンスなどの投資情報サイト
- 会社四季報
- 決算短信
- 有価証券報告書
などで、企業の業績が確認できます。
上のものほど、お手軽に業績をチェックできますが、内容は薄くなります。逆に、下のものほど読むのが大変ですが、内容は濃くなります。
今回は、企業分析には欠かせない「有価証券報告書」と「決算短信」の違いをわかりやすく解説します。また、決算書の入手場所についても取り上げます。
決算短信と有価証券報告書の違い
決算短信と有価証券報告書の違いをわかりやすく示すと、次のようになります。
- 決算短信
- 決算の速報版。必要最低限の情報だけを真っ先に提供するのが目的。
- 有価証券報告書
- 決算の確報版。きちんとした内容を記録として残し、提供するのが目的。
企業は決算日の翌日から、決算書の作成作業に取りかかります。
そして、45日以内に証券取引所に「決算短信」を提出し、3ヶ月以内に財務局に「有価証券報告書」を提出します。
決算日からの流れは以下のとおりです。
- 決算日
- 決算日から45日以内に決算短信を提出
- 決算日から3ヶ月以内に有価証券報告書を提出
※有価証券報告書の「四半期報告書」は四半期決算日から45日以内に提出
重要なポイントは、決算短信と有価証券報告書は提出先が異なるということです。
決算短信の提出先は「取引所(東証など)」ですので、法定義務はありません。あくまでも、証券取引所のルールに従って資料を作成し、期日までに提出する資料です。
一方で、有価証券報告書の提出は金融商品取引法で義務付けられています。また、提出先も「内閣総理大臣(財務局)」となっています。
決算短信には監査報告書の添付は不要ですが、有価証券報告書は公認会計士による監査報告書を付けなければなりません。
※もちろん、上場企業の場合は決算短信も公認会計士に見てもらうのが普通ですから、決算短信の数字と有価証券報告書の数字が著しく乖離することはありません
ちなみに、上場企業の場合、一般的に「決算」というと「決算短信」のことを指します。
決算短信が出た段階で、ニュース等で大きく報道されたり、株価が大きく動くのが普通です。
対して、正式な書類である有価証券報告書がリリースされたタイミングでは、ニュースで取り上げられることや、株価が大きく動くことはまずありません。
投資家が重視するのは決算短信
投資家は主に「決算短信」を重視する傾向があります。
これは、まだ「有価証券報告書(確報版)」が出ていなくても、「決算短信(速報版)」が出た段階で大まかな業績はわかるからです。
大まかな業績がわかった時点で、株価は瞬時に反応しますので、取引時間内に決算短信がリリースされると、株価が急騰・急落することも多いです。
取引時間終了後に決算短信が発表された場合も、次の日に株価が大きく動くのが普通です。
確報版である「有価証券報告書」がリリースされるのは、それから1ヶ月以上先です。もうその頃には、株価は先を行っており来期以降の予想に基づいて動いているのが普通です。
もっとも、数年単位での投資を前提としている「長期投資家」にとっては、目先の株価の動きは大きな問題ではありません。
目先の株価の動きよりも、企業の業績をより詳しく知ることが重要ですから、長期投資家にとっては、有価証券報告書の利用価値は高いのです。
私自身は長期投資家です。
しかし、私もまず最初に「決算短信」から閲覧するようにしています。
決算短信を見て、気になった銘柄があれば、その会社の業績をより深く知るために「有価証券報告書」を見るという感じです。
また、投資初心者が企業の業績を知る上では「決算説会明資料」の閲覧もおすすめです。
初心者は決算説明会資料から見るのがおすすめ
決算説明会資料とは、企業が決算短信のリリース後に行う「決算説明会」で使う「プレゼン資料」のことです。
決算説明会は機関投資家向けに開催されることが多いのですが、プレゼン資料は公開されるので、個人投資家でも閲覧できます。
決算概況をグラフィカルに示しているので、よりわかりやすく、また決算短信や有価証券報告書には書かれていない情報が記載されることも多いです。
決算説明会資料は、後述する「適時開示」にアップする企業もありますし、企業の公式サイトだけにアップする会社もあります。
また、決算説明会資料は、決算短信のリリースから数日後にアップされることも多いです。決算発表から1週間くらいは、企業サイトのIRページをチェックしておくことをおすすめします。
ただし、決算説明会資料は企業側にとって都合よく作成されているのが普通です。
グラフの内容や数字の見せ方が誇張されていることも多いので、注意する必要があります。
決算書の入手場所
有価証券報告書や決算短信といった「決算書」の入手場所には、
- 適時開示情報(東証)
- EDINET(金融庁)
- 企業サイトのIR情報ページ
などがあります。
有価証券報告書を手に入れる
有価証券報告書は、金融庁が運営する「EDINET(エディネット)」か「企業サイトのIR情報ページ」で入手します。
EDINETでは有価証券報告書の他に、大量保有報告書(大株主の異動に関する開示資料)も閲覧できます。
具体的な入手方法は以下の通りです。
1.EDINETにアクセスし「書類検索」をクリック
2.「有価証券報告書」にチェックを入れて、企業名を入力して検索
3.閲覧したい「有価証券報告書」を選択
企業サイトのIR情報ページから入手する場合は、
- 上場企業の公式サイトにアクセス
- 「IR」や「株主・投資家情報」に移動
という手順で、有価証券報告書にたどり着けます。
決算短信を手に入れる
決算短信は、東京証券取引所が運営する「適時開示情報閲覧サービス」で閲覧できます。
開示情報資料は、真っ先にこのサイトで公開されます。過去の開示情報を見たいときは検索機能を利用します。
また、東証の「適時開示情報閲覧サービス」と同じようなサービスを、日本経済新聞も提供しています。
日本経済新聞の運営する「適時開示速報」は、
- カテゴリ別
- キーワード検索
- 適時開示ランキング
などの絞り込みができるため、機能性はこちらの方が高いです。
私はいつも東証の適時開示を見ているので、日経の開示サービスはあまり見る機会がありません。
しかし、開示資料の公開は東証とほぼ同時刻なので、1分1秒を争わない場合は日経の「適時開示速報」を見ても良いでしょう。
日本経済新聞によると、日経の提供するサービスは、あくまでも東証の「適時開示情報閲覧サービス」から取得したものであり、「公開タイミングが遅れる場合もある」としています。
当コーナーは、東京、名古屋、札幌、福岡の各市場に上場する企業、およそ4000の各社が上場先取引所のホームページを通じて一般に開示した情報を、ほぼリアルタイムで自動的に掲載しています。
ただし、技術的な理由などにより取引所ホームページとすべて同一の情報が掲載されているとは限りません。
当コーナーの企業の開示情報は、取引所のホームページで実際に開示されるのとほぼ同じタイミングで掲載されますが、何らかの事情で掲載タイミングが遅れる場合があります。
(日本経済新聞より引用)
また、上場企業の公式サイトでも決算短信の閲覧が可能です。
手順は同じで「IR」や「株主・投資家情報」ページから決算短信にたどり着きます。
その他の役立つサイト
また、有価証券報告書・決算短信など、企業の開示資料を一括で閲覧できるサイトに、
があります。
どちらも、上場企業の分析に役立つ情報を提供しているサイトで、私もよく利用しています。
今回取り上げたサイトは、投資に役立つ便利なサイト リンク集にまとめていますので、あわせてご覧ください。
次の記事:ファンダメンタルズ派はマーケットスピード2をこう使う、マケスピ2が使いにくいと感じる人へ
あわせて読みたい:
会社四季報の見方を徹底解説、株式投資の初心者が知っておきたい基本
あわせて読みたい:
営業キャッシュフローとは?計算方法と直接法・間接法の違いをわかりやすく
こちらの記事もおすすめです
最後まで読んでいただきありがとうございました
こちらの記事にコメントが投稿されました
-
ゆずっこ さんがコメントしました - 2024年12月2日
ゆうちょ銀行のiDeCo(個人型確定拠出年金)ゆうちょAプランの手数料と評判 -
No Name さんがコメントしました - 2024年11月23日
決算書の「百万円」や「千円」の単位を素早く読む方法 -
P さんがコメントしました - 2023年12月18日
決算書の「百万円」や「千円」の単位を素早く読む方法 -
No Name さんがコメントしました - 2023年10月8日
プロスペクト理論とは?投資に活かす方法、あなたの知らない心理学の世界
0件のコメント