PSR(株価売上高倍率)とは?赤字会社の割高・割安がわかるPER・PBRに続く指標

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PSR

株価の割高・割安を測る指標にPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)があります。

これら2つの指標は、株式投資をするなら最初に覚えておきたいほどよく知られています。

しかし、PERやPBRに続く第3の指標として「PSR(株価売上高倍率)」があることはあまり知られていません。なぜなら、PSRはすごくマイナーな指標で、一般的な株式投資では使われることが少ないからです。

PSRは主に赤字の会社(未上場会社やベンチャー企業など)の割高・割安を測る指標として活用できます

今回は、PSR(株価売上高倍率)の使い方と利用シーンについて解説します。

PSRの計算方法

PSR(株価売上高倍率)の計算方法

PSRは「Price to Sales Ratio」の略称で、日本語では「株価売上高倍率」といいます。

売上高に対して株価が割高か割安かを判断するための指標で、その会社が赤字でも、債務超過でも計算できるのが特徴です。

▶PSRの計算方法
PSR = 時価総額 ÷ 売上高

▶1株あたりに直した場合(計算結果は同じ)
PSR = 株価 ÷ 1株あたり売上高

▶参考(PERの計算方法)
PER = 株価 ÷ 1株あたり純利益

詳細記事:PER(株価収益率)のやさしい説明、3分でわかる投資の基礎

▶参考(PBRの計算方法)
PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産

詳細記事:PBR(株価純資産倍率)のことがスッキリわかるたった1つの考え方

上記を見てもわかるとおり、計算に利益を用いるPERは、赤字の会社には適用できません。また、PBRも純資産がマイナス(債務超過)の場合は計算できません。

ITバブル期の頃は、株価が高騰し「赤字の会社や、まだほとんど利益が出ていない会社が、将来への期待だけで買われる」という事態が起こりました。

PERは通常15倍程度が適切と言われていますが、バブルのような状態になるとPERは100倍を大きく超えるほどの異常値になることもあり、もはや割高・割安を判断できる指標としては使えません。

このような「現在は赤字だけど将来の期待だけで買われているベンチャー企業」であっても、その裏付けとして売上だけは伸びるものです。(売上が伸びていなければそもそも成長しているとは言えないため)

そこで、売上の伸びに着目した「PSR」での評価を検討します。

なぜPSRが一般的ではないのか?

PSRがPERやPBRに比べて一般的ではない理由は、上場企業の多くは(基本的には)黒字だからです。

一般的な個人投資家は、上場企業(黒字の会社)を比較するため、PERやPBRを使います。

逆に、赤字であることも多い未上場会社は、上場していないため「株価」が存在せず、別の方法で企業価値が算出される機会が多いです。

このように考えると、PSRが活用されるシーンとして最もふさわしいのは、赤字のままIPO(新規上場)する企業の価値を算出する時や、上場したばかりの新興企業を評価する時となります。

PSRの目安

計算機

一般的に、PSRは20倍以上なら割高、0.5倍以下なら割安と言われており、この倍率がひとつの基準となります。

しかし、注意すべき点もたくさんあります。

PSRはその計算方法からもわかるとおり「利益率が高い銘柄ほど割高になり、利益率が低い銘柄ほど割安に見えてしまう」という特性があります。

例えば、小売業のように利益率が低い(薄利多売の)ビジネスの場合、売上はやたら大きいのに利益がほとんど出ていないということが少なくありません。

しかし、売上の金額が大きいためPSRが低くなり「割安」に見えてしまいがちです。

一方で、IT企業のように利益率が高いビジネスの場合、原価がほとんどかからず、利益はたくさん出ているのに売上が極端に小さいという状態が起こります。

こうした企業の場合PSRが高くなり「割高」に見えてしまう可能性があります。

この問題を解消する方法は2つあります。

▶同業同士で比較する
同じ業種、できれば似たような企業同士でPSRを比較することで、より正しく割高・割安が判断できます。

▶PSRの変化率(成長率)を見る
現在のPSRに注目するだけでなく、来期の売上予想に対する変化率を見ます。(つまり、売上高成長率が高いかどうかという点を合わせてチェックします)

余談ですが、M&A(企業買収)を繰り返すことで、売上だけが大きく成長しているにも関わらず、それらのM&Aはことごとく失敗し、利益にほとんど結びついていない会社も多いです。

こうした企業をPSRだけで評価してしまうと「割安」という誤った投資判断を招きかねません。

PSR単体での評価は避け、他の様々な指標を組み合わせて投資判断を行うことをおすすめします。

活用例

マネーフォワード

記事執筆時点(2017年10月)で直近では、会計ソフトや家計簿アプリで有名な「マネーフォワード」が上場しました。

家計簿アプリや会計ソフトは一度顧客を獲得すると、そう簡単に顧客が離れない仕組みです。(つまり顧客にとって乗り換えコストが高いビジネス)

そこで、他社の顧客を自社に引き込むために積極的な広告宣伝を行う必要があります。

上場時点では積極的な広告宣伝費を投下することで顧客獲得に注力しており、マネーフォワードは赤字の状態でIPO(新規上場)することになりました。

この時のマネーフォワードの目論見書に記載されていた数値から「想定時価総額」は243.1億円となっており、売上高は前期が15.4億円、今期の予想が26.8億円でした。

▶IPO銘柄の想定時価総額の算出方法はこちらの記事で解説しています

マネーフォワードの赤字は当面継続するものの、新規会員の積極的な獲得によって、売上は毎年倍々ゲームで増えているという状況です。

マネーフォワードの上場においてはPSR(株価売上高倍率)を用いた割高・割安の判断ができます。

▶前期(2016年11月)の売上高をベースにしたPSR
243.1 ÷ 15.4 = 15.78

▶今期予想(2017年11月)をベースにしたPSR
243.1 ÷ 26.8 = 9.07

※単位は億円

当面赤字が続くマネーフォワードは、PERやPBRではその成長力を測ることができません。

しかし、PSRが20倍以下なので、将来の売上成長を考えると決して割高ではないことがわかります。

その後のマネーフォワードの株価はどうなった?

2021年11月23日 追記:
その後、4年が経ってマネーフォワードの株価はどうなったでしょう?

株価は右肩上がりで推移し、時価総額は4,526円になりました。(上場前の想定時価総額から18.6倍の上昇)

マネーフォワードは上場してからも、ずっと赤字が続いています。しかし株価は18倍以上になり、PSRなどの指標を見てマネーフォワード株を買った人はみんな大きな利益を得ることができました。

一方、売上高は上場時の予想売上高が26.8億円でしたが、2021年11月期の会社予想では152.5億円と、こちらも5.7倍に増加しています。

しかしPSRで見てみると、時価総額4,526億円 ÷ 売上高152.5億円 = 29.6倍となっており、上場前の予想PSR9倍と比べてずいぶん割高になっています。

先ほど、「割高の一つの基準」として示したPSR20倍も超えていますから、今の株価水準は(PSRで見る限り)割安とは言い難いでしょう。

この4年間で、株価も売上高も大きく伸びたマネーフォワード株ですが、売上の伸びよりも株価の加速の方が早いペースで進んでいる。とも言えます。

割高な銘柄は期待度が高い

ファンドマネージャー

以前、PER(株価収益率)の記事でも詳しく解説した内容と重複しますが、PSRにおいても大切な視点を忘れてはなりません。

「PSRが高い = 割高」というのは、これまで説明してきた通り正しいです。

しかし、これは逆に言うと「PSRが高いということは、それだけその企業が高い成長率を維持できると期待している投資家が多い」ということです。

もし、赤字の新興企業の銘柄への投資を検討するのであれば、

・割安と判断して低PSR銘柄に投資をする

・さらに高い成長率を期待して、成長期待の高い高PSR銘柄に投資をする

というどちらの考え方も正しいです。

重要なポイントとしては、

1.まず最初に自分の中で、その企業の将来の成長率が明確に想定できている

2.その軸に対してPSRが高いか低いか

を判断することです。

PSRはあくまでも、「現在の売上高に対する評価」であり、株価というのは「他の投資家の評価」に過ぎません。

その数字に対して自分の評価をもって、割高・割安を判断することが大切です。

次の記事は「シャープレシオのわかりやすい説明、計算方法や目安の数値のまとめ」です。

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執筆者の詳細プロフィール
右も左もわからない状態で株式投資をはじめ、10年以上が経ちました。その間に、引きこもりになったり、会社を設立したり、いろいろなことがありました。「いい人」がたくさんいる世界の実現が目標です。「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」 - アインシュタイン 姉妹サイト「今日の経営」でも記事を書いています。

より良い情報をお届けするため、川原裕也 がメンテナンスを担当いたしました。( 更新)

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