PER(株価収益率)のやさしい説明、3分でわかる投資の基礎
執筆者:川原裕也
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現在の株価が割高か割安かを簡単に判断できる指標に「PER(株価収益率)」というものがあります。(読み方はピーイーアール、たまにパーと言う人もいる)
PERは株式投資を語る際、必ずといってよいほど出てくる定番の指標です。
企業のファンダメンタルズ分析をするなら、その入口は「PERから」といっても間違いではありません。しかし、初心者向けの定番指標と言っても、PERはとても使える指標です。
今回はPERの計算方法と、実践で使う時の注意点を解説します。
目次
PERの大まかな見方
一般的に、PERが高いほど割高で、PERが低いほど割安と言われます。
例えば、PERが8倍だからこの株は割安、PERが100倍だから割高だと言った具合です。
一般的には、
- PER10倍以下:割安
- PER15倍:適切
- PER30倍以上:割高
という認識を持っている投資家が多いように思います。
実はPERは個別銘柄だけに適用されるものではなく、TOPIX(東証株価指数)のPERというものも存在します。つまり、東証一部全銘柄の平均値に対して、現在の株価が割安かどうかを判断できるのです。
TOPIXのPERは日本経済新聞のサイトなどで閲覧できます。
計算方法
PERの計算方法は3つあります。
PER = 現在の株価 ÷ EPS(1株あたり利益)
PER = 時価総額 ÷ 当期純利益
PER = PBR(株価純資産倍率) ÷ ROE(自己資本利益率)
上のものほど一般的に用いられます。
「現在の株価」は、時価総額を発行済み株式数で割ったものであり、EPS(1株あたり利益)は当期純利益を発行済み株式数で割ったものです。
よって、「PER = 現在の株価 ÷ EPS(1株あたり利益)」で計算しても「PER = 時価総額 ÷ 当期純利益」で計算しても結果は同じとなります。
また、上記3つの計算式はバラして組み替えることができ、「EPS(1株あたりの利益) × PER(株価収益率) = 株価」と表すこともできます。
PERを単純に計算するだけでなく、いろいろ組み替えてそれぞれの関係性をイメージすることが大切です。
PERの計算で使われる、EPS(1株あたり利益)や当期純利益などは、会社四季報を見れば過去の数値も含めてすぐに調べられます。
もちろん、決算短信や有価証券報告書を見ても載っています。
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会社四季報の見方を徹底解説、株式投資の初心者が知っておきたい基本
ヤフーファイナンスで手早くチェック
上場企業のPERを手早くチェックする場合は、ヤフーファイナンスがおすすめです。
1.ヤフーファイナンスにアクセスし「企業名」を入力
2.画面をスクロールし「参考指標」をタップ
3.現在のPERが閲覧できます
ヤフーファイナンスの場合、「会社が提示している今期の予想利益」と現在の株価で計算した結果を、PERで表示しています。
何年分の利益で投資額を回収できるか
PERは、投資金額を何年分の利益で回収できるか?を知るための指標としても使えます。
例えば、PER10倍の銘柄だったら、現在の純利益が10年続けば理論的には投資金額と同じだけの利益を手にすることができます。
株価1,000円でPER10倍の銘柄の場合、EPS(1株あたり利益)は100円となります。
つまり、1,000円を投資すれば、理論上はその企業は毎年100円の利益を生み出すため、10年経てば1,000円(投資額相当)の利益が得られる理屈です。
しかし実際には、企業の利益は毎年変化します。業績が向上して利益が増えることもあれば、その逆もあります。
また、1株あたり利益の全額が配当金として株主に払い戻されるのではなく、実際に株主に配当されるのは1株あたり利益の30%程度(配当性向30%の銘柄の場合)が普通です。
利益の一部を配当金として分配し、残りは企業の中に内部留保として蓄積され、業績をさらに伸ばして株価の上昇をもって還元するという考え方です。
PERは「何年で投資元本を回収できるか?」に相当しますが、これはあくまでも理論値であることを覚えておいてください。
PERを使った投資手法
PERの数値によって割高か割安かを判断する。
一般的にはこの知識だけでも十分なのですが、ここからはもう少し深く解説をしていきたいと思います。
そもそも、PERの数字を見ただけで割安か割高か判断できるなら、株式投資は簡単です。しかし実際にはそう簡単にはいかないのが株式投資です。
ここからは、より実践的なPERの使い方「PERを使った投資手法」について解説します。
PERが高い株ほどよく上がる
PERが高ければ割高、低ければ割安と聞けば、多くの投資家がPERの低い銘柄を狙うことを考えると思います。
しかし、実際の株式市場ではPERが高い株ほどより上昇する傾向が見られるのも事実です。
なぜこのような現象が起こるのでしょうか。
それは、PERは「割高・割安」を測る指標である一方、「投資家の期待値(企業の将来の成長期待度)」を測る指標でもあるからです。
例えば、PER50倍の銘柄を買った場合、これまでの認識だと「投資金額を回収するのに50年もかかる」と考えてしまいます。
しかし、PER50倍の株価が付いているということは、投資家がそれだけその銘柄の成長性に期待している「人気株」と言い換えることができます。
なぜ、PER50倍の株がさらに上がるのかというと、現在のPER50倍は将来のPER10倍かもしれないからです。(何を言っているかまだわかりませんよね?)
投資をする上でとても重要なポイントなので、慎重に読み進めてください。
企業の利益が上がるとPERが下がる
PERの計算方法は「PER = 株価 ÷ EPS(1株あたり利益)」でした。
株価が5,000円でEPS(1株あたり利益)が100円の場合、PERは50倍となります。一般的には割高な銘柄と考えられます。
しかし、現在は1株あたり利益が100円でも、2年後に新製品の発売が予定されていて、その製品名が「iPhone」と呼ばれる携帯電話だったとするとどうでしょうか。
現時点で「iPhone」という製品はまだ発売されていないので、iPhoneは企業の利益には貢献していません。
しかし、2年後にiPhoneが発売された場合、その新製品は爆発的に売れる可能性が高いと、投資家は未来を予想するわけです。
その結果、2年後にiPhoneが発売され、iPhoneが爆発的に売れ、その銘柄の1株あたり利益が500円まで急成長したとすればどうでしょうか?
iPhoneという新製品が爆発的に売れ、利益が増加した段階で改めてPERを計算すると、「株価5,000円 ÷ 利益500円 = PER10倍」になります。
2年前まではPERが50倍で割高だった銘柄が、利益の急激な増加によって一気にPER10倍という割安銘柄に変化したのです。
そしてもちろん、iPhoneを開発した革新的な企業が、2年後にPER10倍という割安な状態で放置される可能性は低いです。
iPhoneがこれからも売れ続ける、または次の新製品への期待が高まるのであれば、引き続きその銘柄はPER50倍で評価されるかもしれません。
1株あたり利益が500円に増加した銘柄が、さらにPER50倍で評価された場合、株価がどうなっているか計算することができます。
これも先ほど紹介した計算式「1株あたりの利益 × PER(株価収益率) = 株価」に照らし合わせて、
「利益500円 × PER50倍 = 株価25,000円」と計算できます。
当初株価5,000円でPER50倍という割高に見えた銘柄は、投資家の期待が続き、かつ業績が著しく向上したことによって、2年後に株価25,000円(当時の5倍)まで上がる可能性があります。
これが、PERの高い銘柄ほどさらに上がる理由です。
PER10倍が割安、PER50倍が割高という目安は、現時点における利益を元にして考えた判断に過ぎません。
投資家は常に未来を予想して株式を先回り買いするため、その会社の利益が今後急上昇すると考えられる場合、現在のPER50倍銘柄は将来のPER10倍銘柄と見ることができ、割安と判断することができます。
言い換えるとPERは「投資家の期待度を表した数値」であり、PERが高いほど「近い将来、利益が大きく増加すると投資家が予想している」と考えられます。
低PER株は成長期待がない
逆に言うと、PERが低く「割安」とされている銘柄は、投資家が将来の成長を予想していないことになります。
PERが低い銘柄は、
- 将来の業績悪化が予想されている
- 利益の成長期待がない安定銘柄
だと投資家に判断されている可能性が高いです。
つまり、「不人気株」ということになり、株価の大幅な上昇が見込みにくい銘柄となります。
安定的に配当金を得たい場合はそうした銘柄に投資しても良いのですが、PER10倍の株を買って、10年かけて投資資金を回収するとなると気の遠くなる作業であることも事実です。
わかりやすく言えば、リスクは高いが手っ取り早く儲けたいなら高成長で高いPERが付いている銘柄、安定運用でじっくりと配当が得られれば良いという場合は低PER銘柄を狙うと良い、どちらも投資家のスタイルによって判断する形となります。
特別損益によるPER異常値に注意
PERはEPS(1株あたり利益)によって大きく変化します。
1株あたり利益とは、税金や突発的な損益(特別損益)を含めた最終利益です。
企業の中には、子会社の売却などによって得た売却益が大きく、それが一時的な利益として計上されることも少なくありません。
このような場合、今期だけEPSが跳ね上がることになり、PERが一時的に大きく下落します。
PER5倍で割安だと思っても、実はそれは特別利益によるEPSの一時的な増加が原因で、来期になってEPSが通常の値に戻ると、PERが20倍となり、割安とは言えなくなっているということもあります。
逆に、赤字の会社はPER0倍として表示される事が多いのですが、なんとかギリギリ黒字転換をして、1円のEPS(1株当たり利益)を確保できたとします。
このような場合は、PER100倍などの異常な数値が出ますが、一度黒字転換した後は来期になるとEPSが一気に高まる可能性もあり、翌年にはPERが20倍になっているということも少なくありません。
リスクの高い銘柄は低PERになりやすい
有利子負債(借金)が大きい株や、市況悪化の影響を受けやすい「リスクの高い株(ファンダメンタルズの弱い株)」は低PERになりやすいです。
PERは個別銘柄の割高・割安を評価する場合に使えますが、業種によって平均的なPERは異なります。
例えば、有利子負債が大きく、市況の影響を受けやすい代表的な業種は「不動産業」です。
不動産関連銘柄は全体的に低PERとなっていることが多いです。
これは、不動産銘柄がビジネス面・財務面においてリスクが高いと考えられているため、積極的に買い進まれない結果、PERが低くなってしまうのです。
個別銘柄でいうと、借金が多いソフトバンクグループや製造業の銘柄もPERは低めです。
低PERの銘柄を見つけた時、「財務的・ビジネス的にリスクが高いと判断された結果なのか」「利益成長が見込めないと判断された結果なのか」など、PERが低い理由を考えることはとても大切です。
成長著しいITベンチャーがPER30倍で評価されていてもさほど割高とは思いません。
それは、将来の大きな利益成長が期待できるからです。
一方、普段は低PERの代表格である不動産関連銘柄が、全体的に買い進まれ、平均してPER30倍で評価されると、私は不動産バブルを疑うかもしれません。
このように、銘柄ごと、業種ごとに妥当なPERが異なっているということも覚えておいて損はありません。
PERを制すもの投資を制す
表面的なPERだけを見て割高・割安を判断することもできます。
しかし、重要なのはそのPERが付けられている理由を探り、中身を見ることです。
また、それと合わせてPERの変化に着目することで、将来の株価を予想することができるようになってきます。
ファンドマネージャー「苦瓜達郎さん」の著書は、PERを活用した投資手法としてとても参考になります。
こちらの記事で取り上げていますので、あわせてどうぞ。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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