ウォーレンバフェットはなぜ日本株に投資しないのか?

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日本

著名投資家のウォーレン・バフェットは、これまでに数多くの企業に投資し、実績を作ってきました。

彼がアメリカ人であることからも、主な投資先はアメリカの企業となっています。しかし、過去の実績では中国の石油会社「ペトロチャイナ」や韓国の鉄鋼会社「ポスコ」などにも投資をしています。(現在はいずれも売却済み)

つまり、バフェットの投資対象はアメリカ国内だけでなく、世界も視野に入っているということです。しかし残念ながら、これまでの彼は日本株に対しては一度も投資を行っていません。

ウォーレン・バフェットはなぜ日本株に投資しないのか?
その理由を考えてみました。

バフェットの投資ルールまとめ

ルール

ウォーレン・バフェットは株主宛ての手紙や書籍などで自身の投資手法について何度も語っています。過去にバフェットの銘柄選択ルールについても言及しているので、その内容を簡単にまとめます。

  • 誰にでもわかるシンプルな事業
  • 経営者が倹約家で優秀
  • 商品やサービスに独占力がある
  • 企業としてのブランド価値が高い(歴史ある企業)
  • 多額の負債を抱えていない
  • 高いROEを長年にわたり維持している(20%以上の企業が多い)
  • EPS(1株あたり利益)が着実に増加している

概ねこのような感じです。
これらのルールに当てはまる企業が、バフェットが長年投資し続けているコカ・コーラやアメリカン・エキスプレスになるわけです。しかし、日本株でこれらのルールに相当する銘柄はあまり思いつきません。

高いROEを長年にわたり維持している

ROE

ROE(自己資本利益率)は、バフェットが投資対象を選ぶ上で重視している指標の一つです。

株主から預かっているお金をどれだけ効率的に利用して利益を生み出しているかを測る指標で、一般的にROEが20%以上の企業は優秀と言われています。

米国企業は昔からROE重視の経営を行っている会社が多いため、日本企業と比較しても高ROE銘柄を良く見かけます。しかし、日本ではこれまでROEを重視した経営をしていない会社が多かったのも事実です。

これを見直すために、日本でもROEの高さを考慮したJPX日経インデックス400という指標が2014年から導入されました。

JPX日経インデックス400の導入をきっかけに、IRでROE重視の経営を掲げ始めた企業も増え、日本企業もようやくROEに対してテコ入れをし始めています。

高い成長率が見込める新興企業(東証マザーズ上場銘柄などのベンチャー企業)は、高いROEになっているケースが多いです。しかし、新興企業はバフェットが重視する「ブランド」を持っていません。

また、高いROEは一過性である可能性が高く、10年、20年と高ROEを続けられる企業はほんの一握りです。

バフェットが投資している米コカ・コーラ社は30%以上のROEを10年以上も継続している、まさにバケモノのような会社です。

誰にでもわかるシンプルな事業

シンプルな部屋

誰にでもわかるようなシンプルな事業を展開しており、経営者が優秀な会社は非常に珍しいです。

なぜなら、日本の企業の多くは売上を伸ばすために事業を多角化したり、M&Aによって新しい分野に事業領域を拡大することが多く、一つの事業を愚直に続けている会社はあまり見かけません。

また、提供している商品やサービスが国内または世界で圧倒的なシェアを誇っているという条件を付けると、さらに難しくなります。

一方で、前述のコカ・コーラ社は飲料を製造販売するという事業に特化し、その主力製品でもある「コカ・コーラ」は誰もが知る圧倒的なシェアを獲得しています。

一見、独占企業のように思えても、あっという間に他社にシェアを握られてしまうことも多いのが実情です。

日本株式は安定性に欠ける

不安定

ウォーレン・バフェットは、株式を債券に例えて投資するスタンスを持っています。

債券は安定した利益を毎年生み出してくれる金融商品です。よって、バフェットも、長年にわたり安定成長を続ける銘柄を好み、ベンチャー企業のようなグロース株(成長株式)には投資しません。

では、日本株はどうなのかというと、安定性に欠けています。マーケットの値動きを見るとわかるのですが、米国株は企業の業績に株価が連動することが多いです。

また、マーケットの参加者が多いので、株価が適切に形成されやすいです。一方で、日本株は好決算で売られたり、ちょっとした材料だけで、数日で株価が2倍、3倍に急騰することも良くあります。

外国人投資家の影響力が大きいと言われており、外国人が株を売ると日経平均株価にも大きな影響を及ぼします。

このように、マーケットが小さい日本では株価が安定しにくく、バフェットが求める「債券投資のような株式投資」が実現しにくくなっています。

人口が減少していく

右肩下がり

マーケットの安定性や経済成長は、人口の増加と深い結び付きがあります。投資をするなら当然、人口の増加に伴い経済成長が期待できる国に投資するほうが良いです。

しかし、日本は今後、人口が減っていくことが予想されており、高い経済成長を続けるのが難しくなっています。

一方で、アメリカは少なくとも2100年まで人口が増加すると予想されており、今後も高い経済成長が見込めます。(参照:世界の将来推計人口 国別ランキングと推移(2050年・2100年)【国連予測】

個別企業の状況だけでなく、国単位で見たマーケット環境においても、日本は「バフェット向き」の環境ではないように思います。

真実は定かではありませんが、こういった理由から、バフェットが日本株に手を出さないのだと思います。

バフェットが投資した日本企業が存在した

ユーザーコメントで「ウォーレン・バフェットはタンガロイという日本企業に投資している」との情報をいただきました。(ななしさん、ありがとうございました)

現在も保有し続けているかはわからないとのことですが、気になったので詳しく調べてみました。

調べてみると、ウォーレン・バフェットは現在(2017年12月)も、タンガロイ社のオーナーとして在籍していました。

ウォーレン・バフェット
バークシャー・ハサウェイ 代表取締役会長 IMCグループ オーナー

※IMCグループとは、タンガロイが所属するグループ会社です。

タンガロイが所属するIMCグループの資料にも「Berkshire Hathaway の一員として、われわれはみな、Berkshire Hathawayの倫理規程その他のポリシーに従う必要があります。」と書かれています。

タンガロイは、福島県いわき市を拠点として活動している切削工具大手で、古い歴史を持つ会社です。もともとは東芝系の会社だったようですね。

タンガロイに直接投資したわけではない?

タンガロイ

日本経済新聞などのニュース情報を頼りに調べてみると、ウォーレン・バフェットがタンガロイに直接投資をしたということではないようです。

まず、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2006年にIMCグループの株式を約8割取得し、子会社化していました。

IMCグループは、イスラエルの超硬工具メーカーの世界大手です。

つまり、IMCグループはバークシャー・ハサウェイ傘下の企業だったことになります。

その後、2008年にIMCグループがタンガロイを子会社化したことで、実質的に「バークシャー・ハサウェイ → IMCグループ → タンガロイ」という資本関係となり、実質的にウォーレン・バフェットがタンガロイに出資したということになっています。

もちろん、バフェット氏は子会社のM&Aに対する意思決定にかかわっているでしょうから、タンガロイがバフェット氏にとって魅力的な会社に移ったことに変わりはありません。

ちなみに、バークシャー・ハサウェイは2013年にIMCグループの残り約2割の株式も取得しており、現在IMCグループはバークシャー・ハサウェイの完全子会社になっています。

ウォーレン・バフェットの初来日

日本地図

ウォーレン・バフェットが初来日を果たしたのは2011年11月21日です。

実は2011年3月22日に、タンガロイの新工場の完成式典に参加するために来日予定でしたが、2011年3月11日は忘れもしない「東日本大震災」が起こった日です。

福島県いわき市を拠点としているタンガロイの新工場の完成式典は当然中止となり、バフェット氏の来日も先送りになってしまいました。

しかし、震災から9ヶ月後に新工場の復旧が終わり、2011年11月21日に晴れてウォーレン・バフェット初来日となったわけです。

バフェット氏が来日した時のことをタンガロイの社長がインタビューで語っていますが、本当にハンバーガーとコカ・コーラだけを食べるとのことです。

事前の情報で、バフェットさんは、ある種類のハンバーガーとある種類のコーラしか召し上がらないと知ったので、式典のときの食事はずいぶん変わったものになりました。

ハンバーガーも、ハンバーガーであればいいのではなく、マクドナルドのクォーターパウンダーがいいみたいです。

しかも、本来ならレタスやピクルスやチーズなど、肉以外の具材もたくさん入っているはずなのですが、それを全部抜いてしまって、ソースも味付けも一切なし。完全にパンで肉を挟んだだけのものです。

それを200個ほどマクドナルドに注文しました。コーラはものすごく甘いチェリーコークだけを、1日に何本も飲むとのこと。

チェリーコークは、日本の小売店で売っているお店が少ないので、ネットで探してなんとか手に入れました。

バフェット氏が日本企業に投資する日も近い

発見

タンガロイの新工場の完成式典で来日した際、バフェット氏は「日本企業に投資している」と発言しました。

日経平均株価が以前よりも格段に安くなっていることもあり、私の個人資産のポートフォリオの中にも一社日本企業があります。

具体的にどの銘柄かはわかりませんが、バークシャー・ハサウェイではなく、あくまでも個人資産からの投資で1社だけ日本企業に投資をしているとのこと。

また、バフェット氏はこのようにも語っています。

また、私たちが投資先を決めるために動き回って訪問することもありません。私たちは、連絡を取ってくる日本人、日本企業を待っているのです。ぜひ、私たちへ電話をかけてきてください。

バークシャー・ハサウェイの傘下に入りたいという素晴らしい日本企業が自らアプローチをすれば、最強の投資家「ウォーレン・バフェット」が日本企業に投資する日も近いかもしれません。

次の記事は「不動産投資をしないのがバフェット流!その理由について考えてみる」です。

また、バフェットが意識していると言われる「バフェット指数」の見方に関する記事はこちらです。

ウォーレン・バフェットに学ぶ

この記事の執筆者

執筆者の詳細プロフィール
右も左もわからない状態で株式投資をはじめ、10年以上が経ちました。その間に、引きこもりになったり、会社を設立したり、いろいろなことがありました。「いい人」がたくさんいる世界の実現が目標です。「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」 - アインシュタイン 姉妹サイト「今日の経営」でも記事を書いています。

より良い情報をお届けするため、川原裕也 がメンテナンスを担当いたしました。( 更新)

ありがとうございます。

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1件のコメント

ななし

有名なところでは
福島県の株式会社ダンガロイという企業に投資していました。
(現有しているかどうかまでは知識ありませんが)
トヨタの例を出すまでもなく、もはや日本の市場のみに依存している企業は
ほとんどいない現状で、日本の人口増加率等はあまり関係ない
と思います。ただ根っこが日本にあるということで、日本特有の事象に
影響を受けている可能性もゼロではないと思います。
いかがでしょうか。

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