ウォーレン・バフェット推奨本!「投資で一番大切な20の教え」に隠されたヒント
執筆者:川原裕也
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投資に関する本は数多く出版されています。
私も様々な投資の本を読むことがあるのですが、その中でも特に本質的なことが書かれていると感じるのが、ハワード・マークスの「投資で一番大切な20の教え」という本です。
この本は、ウォーレン・バフェットが推奨している本として知られています。
投資本の中ではそこまで知名度の高い本ではありませんが、バフェットが推奨しているという部分に興味がわき、軽い気持ちで手にとって読んでみました。
「極めて稀に見る、実益のある本」――バフェットも大絶賛。バフェットは著者に対し「君が本を書くなら、必ず推薦文を寄せる」と日頃から本の執筆を促していたそうです。出来上がった本書をバフェットは大変に気に入り、バークシャー・ハザウェイの株主総会で配布したほどです。
明確な投資理論が書かれているわけでではなく、やや抽象的な内容が多いのですが、投資の心得として必要なことが書かれています。
良い一冊に出会えたと思いましたので、私自身の感想も交えて、本書の内容を紹介します。
目次
どれだけ数字を見ても勝てない理由
証券用語に「人の行く裏に道あり花の山」という言葉がありますが、投資で勝つためには人と同じことをしないことが極めて重要です。
よく、「投資は美人投票だ」と言われますが、そこに先回りするには「多くの人がまだ美人だと思っていない人が、実は美人であることに、誰よりも早く気づくこと」が必要になるわけで、それを突き詰めるとやはり「人と同じことをしないこと」が大切になってきます。
「投資で一番大切な20の教え」では、このことを「二次的思考」と表現しており、表面上で見えないような部分まで見ることの大切さを教えてくれます。
個人投資家で大きな結果を出している人を見ていると、多くの人に見えていないものが見えているように思います。
例えば、同じ将棋盤の目を見ても、私たち素人が見るのと、プロ棋士の羽生善治さんが見るのとでは、見えているものが違うということは理解できると思います。
投資の世界でも、勝ち続けている人とそうでない人の間には、これと同じことが起こっていると思うのです。
物事には「定量的 = 数字で表せるもの」と「定性的 = 数字で表せないもの」の2つがありますが、私は最近改めて、大きく勝つためには定性的な部分での投資判断が重要になってくるのではないかと考えるようになりました。
業績やPER・PBRといった数字で表せる「誰が見ても同じ指標」というのは、すべて、先行する株価に織り込まれていると考えています。
指標など誰が見ても同じである定量的なものを見落とすのは論外、定量的な指標の「解釈」によって勝ち負けが決まる。
加えて、多くの人が気づいていない定性的な部分を知ることで、勝ち負けが決まる。
このように考えるようになりました。
投資家が行うべきなのは「より未来の数字を予想する」ことなのですが、未来の数字を予想するためには「定量的」な情報では足りず「定性的」な情報を含めてこそ、より的確な予想ができるのではないかと思うのです。
株価が大きく値上がりする理由
株価が大きく値上がりするのは、誰もが予想していなかったサプライズが起こった時です。
例えば、これまで10の利益しか上げていなかった企業が、いきなり100の利益を上げるような事が起こると、株価は急上昇します。
しかし、これが「10 → 30 → 50 → 70 → 100」と5ヵ年計画や会社予想などの数値を元にして段階的に達成される場合、サプライズではなくなります。
言い換えるならば、遠くにオアシスが見えている状態はサプライズではなく、曲がり角を曲がると目の前にオアシスがあったというのがサプライズです。
つまり、定量的な数字の推移から読み取れる内容というのは、現在の延長線上の数字でしかなく、サプライズを予想しづらいのです。
一方で、パズル&ドラゴンズの大ヒットで株価が80倍以上になったガンホー・オンライン・エンターテイメントの例を考えると、
- スマートフォンが普及し、みんな電車でゲームをしている
- コンプガチャ問題があるぐらいモバイルゲームには中毒性がある
- パズル&ドラゴンズというアプリが面白いらしい
といった定性的な思考ができていると、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの経営陣ですら予想できていなかった、「社会現象のようなブームが、近い将来起こるかもしれない」という未来に賭けることができたかもしれません。
これからは、AI(人工知能)も様々な場面で活用されるでしょうから、業績予想やPER・PBRといった表面上の数字で見えていること、計算できることは、投資で勝つための優位性にはなりにくくなってくるかもしれません。
一方で、一見投資初心者が使いそうな手法である「◯◯が流行っているから」、「◯◯社長の人間性が良いから」といった定性的な情報が、投資で勝つための大きな武器になってくるのではないかと思います。
いずれにしても、多くの投資家にとって見えていないものが見えた時、それは投資で成功するための重要なヒントになり、そのような二次的思考は表面上の数値を見ているだけでは、簡単にはたどり着けないということです。
レバレッジは本当に有効か
投資の世界では、当たり前のようにレバレッジが使われています。
株式投資でも信用取引が盛んに行われていますし、FXや先物といった証拠金取引においてもレバレッジは日常的に利用されています。
しかし、「投資で一番大切な20の教え」では、レバレッジは希望を増大するだけのものであり、意味のないものだと言っています。
ここで問題なのは、レバレッジを使う(借りた金で資産を買う)ことが、投資の質の向上や、利益が生じる確率の上昇につながらない点である。
レバレッジは、利益あるいは損失が生じる際にその希望を増大させるだけである。
結論を言うと、未来に起こりうるリスクのほとんどは主観的で、見えにくく、定量化できないのである。
損失の確率を数値化することが難しい点を考慮すると、リスク調整後リターンについて何らかの客観的な指標を求める投資家(そのような投資家が多いのだが)にできるのは、いわゆるシャープレシオに注目することぐらいしかない。
シャープレシオとは、ポートフォリオの超過リターン(ポートフォリオの収益率から無リスク資産、つまり短期米国債の収益率を差し引いたもの)をポートフォリオの収益率の標準偏差で割った比率である。
この尺度は、一定的に取引されて値がつく公募証券には有効とみられる。ある程度の合理性を持っており、今ある中では間違いなく最良の指標だ。
レバレッジは「てこ」を意味し、投資効率や経営効率を高めるものであると言われています。
ファイナンスの世界でも、借入金を増やすほど経営効率が上がるとされているのですが、その一方でどこまで借入金を増やすのが正しいのか?という「最適資本構成」は未だに計算する方法がありません。
つまり、未来のことを誰も予想できないのと同じで、将来起こりうるリスクは誰にも予想できないのです。
最適資本構成とは、企業価値を最大化する負債(D:Debt)と株主資本(E:Equity)の構成比。Dの比率が高いと、財務レバレッジが高まり資金効率はよくなるが、支払い利息が増えて倒産リスクが高まる。
逆に、Eの比率が高まると、安全性は高まるが資金効率は悪くなる。この間で最も適したバランスを実現するのが、最適資本構成である。
1958年、F・モディリアニとM・H・ミラーは、税金がないという前提の下では、企業価値は負債と株主資本の構成比によらない、つまり、資金調達の方法は企業価値に影響しないということを証明した。これが有名なMM理論である。
しかし、実際の世界には税金がある。そして、金利費用は節税効果を伴うため、税金のある世界では、極力負債を増やすほうが、節税効果が増し、企業価値が高まることになりそうだ。
しかし、実際にはそう単純ではない。確かに負債を増やすことで節税効果は増すが、高すぎる負債比率は、企業の倒産リスクを高めたり、株主と債権者の間での利益相反に伴う機会費用などを生じさせたりする。
つまり、ある一定レベルまでは、負債を増やして節税効果を享受することが得策となるが、そのレベルを超えてしまうと、節税効果のメリットより、デメリットのほうが増えてしまうというのだ。
そのレベルが最適資本構成ということになるが、現在も、最適資本構成の理論的な導出方法は提示されておらず、各企業が手探りで模索しているのが現状である。
出典:グロービス
このような事実を考えると、レバレッジが必要になるケースは実はとても少ないのではないか?と思うようになりました。
実際私は、信用取引もFXのレバレッジ100倍も相当やっていたのですが、勉強していくうちにレバレッジに対する見方が変わってきました。そして、そのきっかけとなったのが、上記で紹介した本書の「レバレッジは投資の質の向上や、利益が生じる確率の上昇につながらない」という言葉です。
ウォーレン・バフェットはレバレッジをかけることが嫌いな投資家として有名ですが、このような考えが根底にあるのかなと思いました。
バークシャー・ハサウェイでバフェットのパートナーとして有名なチャーリー・マンガーもこのように言っています。
人を破滅させる三つとは、薬物と酒とレバレッジです。 (チャーリー・マンガー)
偉大なる投資家は投資効率の高さによって成功した
投資家といえば「リスクテイカー(リスクを取る人)」というイメージがあります。
しかし、投資で成功をおさめた偉大なる投資家はみな、「大きなリスクを取って大きな成功を手にした」のではなく「投資効率が他の人よりも高かった結果、成功を手にした」という事実があります。
大切なことなのでもう一度いいますが、レバレッジが投資効率を高めるものだと考えるのは間違いです。
下記はいずれも、「投資で一番大切な20の教え」からの引用です。
投資の達人として知られるウォーレン・バフェット、ピーターリンチ、ビルミラー、ジュリアンロバートソンらについて考えてみよう。皆高いリターンを上げているだけでなく、巨額の損失を出すことなく何十年も安定した成績を記録しているという点で卓越している。
他の投資家よりも低いリスクを取って同じリターンを達成するのは、素晴らしい偉業である。だが、ほとんどの場合、そうした偉業は影に隠れていて人目につかず、高度な鑑識眼を持つ者にしか評価されない。
長期的に投資に成功するための道は、闇雲にリスクをとることではなく、リスクをコントロールすることにある。
賢明なるポートフォリオ構築のプロセスは、特に収益性が高い資産を買い、それらを買う余地を作るために収益性の劣るものを売り、最も収益性の低い資産は避けることからなる。
投資機会が存在しないときに、それを生み出すことができない。
もっとも愚かしいのは、高リターンを約束しつづけることにこだわり、自らの利益を食いつぶす行為だ。いくら望んだところで、ない袖は振れない。
予想リターンが極めて低く、リスクプレミアムが小さい状況では、簡単な答えはないというのが実情である。
だが1つだけ、私が間違っていると最も強く感じる行動がある。それはリターンを追求するという典型的な過ちだ。
リスクは、皆が競って同じように取ろうとしている時ではなく、周りが避けようとしているときに取るのが望ましいのである。
どれをとっても、多くの投資家にとって耳の痛くなる本質を突いた発言ではないでしょうか。
私自身も、「手っ取り早く儲けたい、リスクを取って儲けたい」という気持ちが生まれることはあります。
しかし、市場にお金が落ちていないときは、落ちていないお金を拾おうとしても無理な話なのです。
成功する投資家というのは、落ちていないお金を無理に拾おうとせず、じっくりと待ちます。そして大勢の投資家がお金を地面にばらまいている時に、それをすべてかっさらうのです。
現在の位置を把握する
今、市場にお金が落ちている状況なのか、そうでないのか。
また、周りの投資家が「投資は楽勝だ」と思っているのか、そうでないのか。
相場は、大小はありますが上昇期と下落期を繰り返す「サイクル」を形成しています。
現時点が、サイクルのどの位置にあるのかがわかれば投資で勝つための大きなヒントになりますが、残念ながら現在のサイクルがどの位置なのかを把握することは簡単ではありません。
投資家には大きく分けて2つのタイプがいて、ジョージ・ソロスのようなタイプは「景気のサイクルを先読みして投資をする」手法を好んでいます。
一方で、ウォーレン・バフェットは景気にも気を配ってはいるものの、基本的には「景気は関係なく企業の価値に対して投資をする」手法を好んでいます。
つまり、景気が良かろうと悪かろうとそれらは無視し、ただひたすらよい投資対象を見つけることに注力するということです。
「投資で一番大切な20の教え」では、現在のサイクルを見極めるのが困難であっても、そうしようと思う努力をすることが重要だと説いています。
第一に考えられる答えは、サイクルは予測不可能だと受け入れることよりも、未来の予想にいっそう力を注ぐべき、というものだ。
より多くの労力を投入して結論を導き出す、その結論に重点的に賭けるようにするのである。
第二に考えられる答えは、未来は知り得ないことを受け入れ、手の尽くしようがないと考えてサイクルの存在をただ無視する、というものだ。
予測に力を注ぐ代わりに、良い資産に投資してずっと保有し続ける方法をとることは可能だ。
ただし、もう一つ考えられる答えがあり、これが圧倒的に正しいものだと私は考えている。
それは、ただ単に自分が今サイクルのどの位置に立っているのか、そして、どのような行動を起こすべきなのかを突き止めようとする点である。
今、サイクルのどの位置に立っているのかがつきとめられれば、次に何が起きるのか正確にわかると言っているのでは無い。
しかし、現状を理解すれば、将来の出来事とそれについて何をすべきかと言う点に関する貴重な洞察が得られる。我々に出来るのは、せいぜいその程度の事だ。
正解かどうかは別にして、現在の外部環境がどの位置にいるかは意識した方が良いと思います。
「株価が大きく暴落した時はチャンス」だと言うのはもはや常識ですが、暴落の大底がすでに来ているのか、まだ来ていないのかは見極めるのは困難です。
一般の投資家が、
- まだ楽観視しているのか
- 楽観視はしていないが絶望には達していないのか
- 絶望しているのか
どのような心理状態にあるのかに気を配るのは、暴落の大底を知る方法として意識すべきポイントだと思います。
投資は常に心理的に辛いものである
おそらくほとんどの投資家が、投資を始めた理由は「もっとお金持ちになりたい(言い換えると他の人よりもお金持ちになりたい)」ということだと思います。
私は、投資活動は社会貢献になりうるものだと考えていますが、自分自身のリターンを差し置いて社会貢献のために投資を始める人というのはごくわずかでしょう。
しかし、逆説的ですが「投資で一番大切な20の教え」に習えば、こうした「人よりお金持ちになりたい」という気持ちに耐えることが、投資で成功する秘訣であることがわかります。
相場が良い時期には平均的なパフォーマンスで十分である。
我々の目標は、相場が良い時には市場と同等のパフォーマンスを、相場が悪いときには市場を上回るパフォーマンスを上げることだ。
上げ相場の時期に市場に遅れをとらずについていくには、βの値が高く、市場との相関性があるポートフォリオを組まなければならない。
だが、上げ相場でβと相関性の助けを得るという事は、下げ相場に変わった時に打撃を受けることを意味する。
ウォーレン・バフェットもITバブルの時、周りの投資家がIT株で大儲けしているのを横目に見つつ、IT株には手を出していませんでした。
当然、周りの投資ファンドよりもパフォーマンスが悪く、新聞などで「バフェットは終わった」と書かれることもあったようです。
しかしその後、ITバブルは崩壊し、多くの投資ファンドが廃業に追い込まれたことは言うまでもありません。
つまり、株価が上昇局面にあり、周りが大きく儲けているときは、その成功を周りの投資家に譲る気持ちが大切です。
「周りが儲けているから俺はさらに儲けるぞ」という気持ちは、バブルを加速させます。そのような気持ちでは、自分がバブルの真っ只中にいることには気づけません。
「相場が良い時には市場と同等のパフォーマンスを、相場が悪いときには市場を上回るパフォーマンスを上げること」というのも、「投資で一番大切な20の教え」から学んだ、心に刻んでおきたい言葉です。
投資で一番大切な20の教えは何度でも読み返したい本
冒頭でも述べましたが、「投資で一番大切な20の教え」は明確な投資手法が書かれている書籍ではなく、抽象的な内容が多いです。
しかし、そのいずれもが本質的な内容です。私たちが様々な状況の中で、いつの間にか忘れてしまうことを、本書は思い出させてくれます。
こういった本は何度読んでも気づきがあります。
20の教えといえばギャン理論も有名なので合わせてご覧ください。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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