株価が下がる?株式併合のメリット・デメリットと実施理由を解説
執筆者:川原裕也
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株式併合(かぶしきへいごう)とは、企業が現在の発行済み株式数を束ねることによって、発行数を少なくすることを言います。
例えば、現在の発行済み株式数が1,000株、1株あたりの株価が300円の会社があるとします。この会社の時価総額(企業価値)は「1,000 ✕ 300 = 30万円」です。
この会社の10株を1株にする株式併合を行うと、発行済み株式数は100株になり、1株あたりの株価は3,000円になります。
株価が上がったようにみえますが、時価総額は「100 ✕ 3,000 = 30万円」なので企業価値は変わりません。
株式併合のポイントは、
- 発行済み株式数が少なくなる
- 見かけ上の株価が上がる
- 株式併合しても企業価値は変わらない
の3つです。
株式を買いやすくする方法に「株式分割」がありますが、株式併合はこの逆の施策となります。
目次
株式併合のメリット・デメリット
では、なぜ株式併合をする必要があるのか。その理由は様々です。
しかし、最初に結論を言っておくと「企業価値が変わるわけではないので、株主にとってはどれも大したことがない理由」であることがほとんどです。
見かけ上の株価が大きく変化するので、株式市場ではつい株式分割や株式併合が大きな出来事だと考えられてしまいます。しかし、実は「株式併合」は重要な施策というほどのものではありません。
続いて、株式併合のメリットについて考えてみます。
株式の管理コストを引き下げる
上場企業が株式併合を行う理由として、最も多いのは「株式の管理コストを引き下げるため」だと思います。
多くの人に自社株をもってもらうため「株式分割」を行う企業がある一方で、株主数が増えるとそれだけ管理コストが高くなります。(郵送費用だったり、株主優待だったり)
会社の業績が良ければ問題ないコストだと思いますが、業績が悪化して苦しい状況において、これらのコストは少しでも減らしたいというのが本音です。
そこで、株式併合をすることによって発行済み株式数を減らし、結果として自社株を保有する株主を少なくすることで、上記のような管理コストを引き下げられます。
わかりやすく言うと、自社株を持つ株主が10万人いると、10万人に通知書類を郵送したり、株主総会のために大きな会場を用意しなくてはなりません。
しかし、自社株を持つ株主が10人なら、ほとんど費用をかけずに株主を管理できます。
こうした理由から、「株式併合は業績が悪い企業が行うもの」というネガティブな印象を持つ投資家も多いです。
再建が進めやすくなる(少数株主を追い出す)
株式併合は、場合によっては持株数の少ない少数株主を追い出すことに繋がります。
もちろん、上場企業がそのようなことをすると、株主代表訴訟に発展しますので最大限に配慮されていますが。。。
例えば、現在100株保有している企業の株式が、10:1の株式併合を行った場合、100株主は端株(最低単元以下)の株式しか保有できません。(最低単元が100株の場合)
端株しか持っていない株主は、配当金や株主優待を受け取ることができず、株主としての権利も失います。(端株を持っていても株主総会には参加できません)
繰り返しますが、上場企業では通常、このようなことは起こりませんので安心してください。
問題が起こるのは、TOBなどによって上場廃止になる銘柄を持ち続けた場合です。
株主によっては、保有株が上場廃止になっても持ち続け、株主としての権利を主張したいという人がいます。
しかし、上場廃止後は再建などを進めやすくするため、(上場廃止後の株式を一定の株価で買い取るなどの)最大限の配慮が提案された上で、少数株主を排除する動きがおこります。
それでも強引に株式を持ち続けた場合、経営陣(大株主)が株式併合を実施することによって、上場廃止前の株主の保有株式数を1単元以下の「端株」の状態にしてしまうのです。
端株になってしまうと、株主としての権利を失ってしまうので結果的に追い出されてしまうということです。
なお、単元未満株式(端株)は一括処分できるので、その処分代金を現金として返還できる仕組みとなっています。
詳細はこちらの記事で解説していますので、興味のある方は一読ください。
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TOB銘柄に飛びつく前に知っておきたいこと、初心者がよくする失敗は…
東証のルールに従うため
東京証券取引所は、
- 売買単位を100株に統一する
- 株式の最低購入価格を5万円以上50万円未満にする
という方針を掲げています。
「売買単位を100株に統一する」ことは、2018年10月の時点ですでに完了しています。
以前は売買単位(最低単元)が10株、1株、1,000株、銘柄によっては50株単位というものもあり、わかりづらかったのですが、現在はすべての銘柄が100株単位での売買となりました。
「株式の最低購入価格を5万円以上50万円未満にする」については、株価変動の影響もありますので、現時点でも強制されていません。(例えば任天堂の株を買うには最低でも300万円ほど必要です)
ただ、東証がこのような方針を掲げている以上、企業としてはそれに沿う形で発行済み株式数を調整しなくてはなりません。
これまで1,000株単位での売買だった銘柄を100株単位に変更する過程で「1,000株 → 100株」への株式併合を行う企業が数多くありました。
また、最低購入価格が5万円に達していないので、発行済み株式数を少なくして100株の購入に必要な金額を底上げするという取り組みも見られます。
このように、東証の方針に沿うことも、株式併合を実施する理由のひとつです。このケースでは、業績の良し悪しに関係なく株式併合が行われます。
株価への影響
株式併合すると見かけ上の株価が上がりますが、その後の株価への影響はどうなのか。
まず、前提として覚えておきたいのは「株式併合をしても、株式分割をしても企業価値は変わらない」ということです。
見かけ上の株価は大きく変化しますが、会社の価値が変わるわけではありません。
しかし、株式併合や株式分割を行った直後は、株価が大きく動くことも多く、少なからず影響があると思います。
株式併合によって株価が上がると書いているサイトもありますが、私自身の経験からすると「株式併合の後は株価が下がることの方が多い」と思います。
なぜ、株価が下がりやすくなるのかはわかりませんが、私はこのように考えています。
人は高いものを売りたがり、安いものを買いたがる
投資家の心理として、高いものは売りたがり、安いものは買いたがる傾向にあると思います。(これまで安かった株が高くなったり、これまで高かった株が安くなるならなおさら)
株式分割をすると株価が上がりやすくなるのは有名です。これはこれまで高かった株がより多くの人にとって買いやすくなり、流動性が増すからです。
一方、株式併合は株主数を減らす行為ですから、株式はこれまでよりも買いにくくなります。株を買う人が少なくなることで買い支えがなくなり、結果的に株価が下がりやすくなります。
ただ、例外もあります。
流動性が少なくなることで1株あたりの希少性が増すので、値動きが激しくなり、上昇基調に入ると、大きく株価が上昇することも少なくありません。
業績の悪い会社が株式併合を行うことが多い
前述のとおり、株式併合はコスト削減策の一環として業績が悪い会社が行うケースが多いです。
このような会社は、株式併合をしたからといって業績が改善するわけではなく、さらに業績が悪化することが少なくありません。
結果として、一時的に株価が高くなったように思えても、その後の業績の推移によって株価が再び下がることになります。
あくまでも私の経験上ですが、好業績が続く会社は連続的に株式分割を行いますし、良くない会社は株価が低迷する度に株式併合をしているように思います。
大切なことなのでもう一度繰り返しておきます。
上記のように短期的な株価への影響はあるかもしれませんが、企業価値は変わらないのが株式併合の本質です。
次の記事:株式分割って儲かるの?株主への経済的メリットをまとめてみます
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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