不動産投資で失敗したサラリーマン投資家の教訓から学ぶ3つの原則

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空室物件

2018年に入って、スルガ銀行の「かぼちゃの馬車」事件や、東証一部の上場 TATERUの「預金残高改ざん」事件が立て続けに起こり、不動産業界に暗雲が立ち込めています。

本来なら不動産投資は、ある程度お金を持っている人だけが利用する投資商品です。

しかし、好調な不動産市況と金融環境によって、サラリーマンのような一般の人でも気軽に、不動産投資に手を出せるようになったところに、問題の本質があります。

担保となるような土地もない、現金すらほとんど持っていなくても、フルローンに近い借入をして、一棟アパートの大家になることができたのです。

しかし、担保も土地もない人が一夜にして、不労所得を得る「勝ち組」に転身できるほど世の中は甘くありません。

この記事では、不動産投資で失敗したサラリーマン投資家の教訓から学べる、「投資の原則」を考えてみたいと思います。

返せない借金をしない

借金

不動産投資において「返せない借金をするな」などと言っても、鼻で笑われるかもしれません。

なぜなら、不動産投資は「購入物件の担保化」を裏付けとして、レバレッジありきで投資するのがごく当たり前のことだからです。

しかし、投資は常に最悪の事態を想定して動かなければ生き残れません。投資を続ける限り、どれだけ確率が低くても、いつかは大きな凡ミスをしてしまうのですから。

常に全力で相場を張っていては、つまづいた時に大けがをしてしまいます。

不動産投資でも「地面師」のような詐欺師がいます。もし、投資物件の売り手が地面師だったら、投資額はすべて焦げ付いてしまいます。

また、詐欺師でなかったとしても、自分にとって不利な投資案件を持ちかけられていることに気が付かない可能性もあります。

つまり、不動産投資とて安全・簡単であることは決してなく、リスクと隣合わせの「投資」だということです。

そのような状況で、返せる見込みのない借金をして、フルレバレッジで勝負をかけるというのは常軌を逸した行為です。

今回の事件では、お金を貸したスルガ銀行が批判されていますが、Twitterではとても参考になる意見がありましたので掲載します。

武富士さんは「嫁に貸すんじゃなくて、旦那のサラリーマンの社会的信用を担保に貸すんだ」と反論したそう。結果は武富士の勝利

かぼちゃの馬車も物件自体はどうでもよくて、リーマン投資家の安定した給料というCFと一流企業は辞めないという社会的信用が担保。

yumi-yumi

リーマン大家は自分は不動産投資だと勘違いしていたが、実態は「消費者金融(サラ金)」としてスルガ銀行は貸し出していた。不動産担保付きの消費者金融と考えれば金利も納得。

yumi-yumi

スルガ銀行は、表向きは「不動産投資ローン」として融資していましたが、仮に物件の評価が最悪でも、不動産担保付きの消費者金融と割り切って融資をしていたという見方ができます。

ようは、借り手が馬鹿げた用途にお金を使おうとしていても、お金を貸す側は干渉しない。担保と信用(属性)があれば、適切な金利を設定した上で貸すのは当然という考え方です。

借りたお金の使いみちが馬鹿げた行為かどうかは、投資家自身が判断しなければならないということです。

そして、自分が馬鹿げた行為をしようとしているのかどうかわからないのであれば、(不動産投資をしないことが健全ですが)少なくとも返せる見込みのない借金はしない方がいいのは当然です。

不動産業者は物件を売れば確実な儲けが入ります。また、銀行は担保や財産の差し押さえなどを使う「回収のプロ」ですから、当然貸し出す前に確実に儲かることを計算しています。

結局、リスクを背負う(それも最初から負けが確定しているリスク)のは、何も知らない投資家なのです。

自分で投資判断を下す

不動産利回りの計算

いかなる投資商品でも、投資判断は自分自身で下さなくてはなりません。(いわゆる、投資は自己責任というやつです)

しかし「◯◯が儲かると言っていた」「〇〇で話題になっている」「先輩が買っている」「信頼している人に勧められた」など、他人を見て投資判断を下してしまう人が大勢います。

こうした行為は、自分で意思決定しているように見えても、結局は「横にならえ」をしているだけです。

例えば、株式市場には常に買い手と売り手が存在します。(買い手・売り手がいるからこそ取引が成立します)

この時、買い手は安すぎると考えて買おうとしており、逆に売り手は高すぎると考えて売ろうとしているわけであって、両者の考えは相違しています。

つまり、買い手と売り手はどちらか一方が正しく(賢く)、どちらか一方が間違っている(バカ)のです。

しかし、不動産投資においては不動産業者を信用するサラリーマン投資家が多すぎるように思います。

例えば、今回のTATERUの問題では「到底儲かりそうもない投資案件に、フルローンで投資していた人が多かった」ことがわかっています。

レントロール(不動産物件の家賃の一覧表)の数字が水増しされていたり、起こりうる可能性のあるリスクがシミュレーションに反映されていないなど、業者(売り手)にとって都合の良い資料になっていたのです。

不動産業者のこうした姿勢を批判したくなる気持ちもわかりますが、一方で売る側の立場からすると、自社の商品を都合のいいように、良い商品に見えるようにプロモーションするのはマーケティングの一環とも言えます。

シミュレーションはあくまでも試算であり、その数値を業者が保証していない以上、それらの資料を信用するべきではないのです。

不動産業者に真摯な対応を迫るよりも、自分自身でその家賃が本当に妥当かどうか、シミュレーションを引き直してみることが大切なのは言うまでもありません。

こうしたことすら怠り、業者の言う通りになると思って投資判断を下してしまったら、それは買い手と売り手、どちらが間違っている(バカ)かは明白でしょう。

不動産投資家として有名な玉川陽介さんは、2018年9月16日の日経ヴェリタスでこのように言っています。

専業投資家の玉川陽介氏は「セミナーなどで素人を集客して売るような商法に投資妙味はない。」と断言していた。

出典:日経ヴェリタス 2018年9月16日号

セミナーを積極的に開催しているなど、素人相手に商売をしている業者は、それがたとえ不動産投資であっても、株式投資であっても、疑ってかかるべきなのです。

安全マージンを確保する

車間距離

安全マージンとは、購入価格と本質的価格の差のことです。言い換えると「問題に対処できる余裕度」です。

ベンジャミン・グレアムという著名な株式投資家がこの考え方を提唱したのですが、これは株式投資や不動産投資だけでなく、あらゆる投資商品に応用できる考え方です。

不動産投資は基本的に、買った瞬間に利回りが確定します。家賃は下がることはあっても、基本的に上がることはないからです。

しかし、数十年という運用期間においては様々なトラブルが生じる可能性があります。

  • 空室率が想定よりも高い
  • 近所に競合物件が出現し、家賃を下げざるを得ない
  • 台風の影響で一部保険適用外の修繕費が生じた
  • 居住者が自殺し、資産価値が下がって売却が難しい
  • 近所で動物がゴミを漁るので清掃費が見積もりよりかさんでしまった

などなど、起こりうるリスクはいくらでもあります。

もちろん私たち投資家は、管理会社などと協力しながら、これらの問題を1つずつ解決していかなくてはなりません。

しかし、追加のコストがかかってしまった時点で「当初想定していた利幅が小さくなる」ことが確定します。

ギリギリの利回り、ギリギリのシミュレーションで投資をすると、こうしたトラブルが起こった時に、当初描いていた計画が総崩れになりかねません。

まして、フルローンでレバレッジを効かせた状態で、予想以上の空室が発生すると、途端にキャッシュフローが赤字になります。

キャッシュフローの赤字に耐えられるだけの現金を持っていなければ、想定外の問題が生じた時、即破綻となってしまいます。

しかし、十分割安な価格で購入し「安全マージン」を大きく確保しておくことで、少々の追加コストや利回りの減少を吸収することができます。

これが、「安全マージンの確保」という考え方です。

「完全なる投資家の頭の中」という書籍で、安全マージンを「高速道路の車間距離」に例えたわかりやすい解説があります。

公開市場でトレードする投資家にとって、安全域は高速道路の車間距離に似ている。どちらも目的は予想を不要にすることにある。

前の車と適切な車間距離を空けておけば、今見えることには反応する必要があるが、前の車の運転手の行動を予想する必要はない。

しかし、高速で運転しているときに、前の車との車間距離が数十センチしかなければ、ただ反応するだけでなく、予想もしなければならない。そうしなければ、衝突してしまうからだ。

簡単に言えば、グレアム式バリュー投資家の目的は株を十分安く買うことであり、そうすれば株式市場の短期的な価格変動を予想する必要はなくなる。

出典:完全なる投資家の頭の中

投資期間中には予想外のトラブル発生がつきものです。不確実性の予想を不要にするという意味でも、十分な「車間距離」が必要なのです。

このように言うと、「安全マージンなんて取っていたら、ほとんどの投資物件が当てはまらないじゃないか。投資商品は常に適切な市場価格で売りに出されているのだ」という意見が聞こえきそうです。

しかし、それで良いのです。良い投資案件とはそう簡単には見つからないものなのです。

業界用語で「千三つ(せんみっつ)」という言葉があります。1,000件の投資案件の中で、実際に投資できるのは3件しかないという意味です。

特に不動産業界は競争が激しいですから、セミナーで初心者を集めている業者から提案された物件が「十分な安全マージンの取れた、千三つの優良物件である可能性」は皆無と言って良いでしょう。

不動産であれ株式であれ、時間と労力をかけて投資判断を下すことが、自らの安全を守り、結果へとつながる唯一の道です。

いろいろな人の話を聞くと「不動産を買えば人生勝ち組」のように考えている人が大勢いることに気づきます。(それくらい不動産と不労所得という言葉が強く結びついているのでしょう)

しかし、そのような話は全くの大嘘で、「利回りがほとんど取れていない大家さんも大勢いる」のが真実です。

余談ですが「千三つ」という言葉には「不動産屋の話しは千に3つの真実もない大嘘ばかりだ」という意味もあるそうです。

ということで、不動産投資で失敗したサラリーマン投資家の教訓から学ぶ3つの原則についてお話させていただきました。

次の記事は、「著名投資家のウォーレン・バフェットが不動産投資についてどのように考えているか」です。あわせてご覧ください。

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この記事の執筆者

執筆者の詳細プロフィール
右も左もわからない状態で株式投資をはじめ、10年以上が経ちました。その間に、引きこもりになったり、会社を設立したり、いろいろなことがありました。「いい人」がたくさんいる世界の実現が目標です。「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」 - アインシュタイン 姉妹サイト「今日の経営」でも記事を書いています。

より良い情報をお届けするため、川原裕也 がメンテナンスを担当いたしました。( 更新)

ありがとうございます。

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