投資家とビジネスマンの違いとは?ジム・ロジャーズが教える投資家の資質と待つことの大切さ
執筆者:川原裕也
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ひとことで「投資家」と言っても、その種類はさまざまです。
投資対象も違えば、投資スタイルも異なります。
たとえば、私のような長期投資家もいれば、インデックスファンドで運用する個人投資家もいますし、1日単位で取引を行うデイトレーダーもいれば、投資銀行に務めるようなプロ投資家もいます。
一般的に「投資家」と言えば「頭が良い(IQが高い、勉強ができる、天才、秀才)」というイメージが強いかもしれません。
なぜなら、成功している投資家はお金持ちですし、お金を動かすだけで労せず稼ぐことができているというイメージがあるからです。(実際にはそんなことはないのですが…)
しかし、成功している投資家の条件に「頭が良い(IQが高い、勉強ができる、天才、秀才)」というのは必須条件ではありません。
むしろ投資家には「社会不適合者」のような人がたくさんいます。
しかし、投資で成功を目指す人の多くが「勉強すれば(いろいろな投資の知識を得れば)投資で勝てるようになる」と考えます。
投資の基礎を詳しく学ぶことは良い面もありますが、場合によっては「間違った方向に努力をしてしまいかねない行為」になってしまうこともあります。
目次
投資家とビジネスマンは似て非なるもの
The Financial Pointerというサイトの「何もしないことに耐えろ:ジム・ロジャーズ」という記事は、とても参考になります。
著名投資家のジム・ロジャーズが、「投資家」と「ビジネスマン(金融マン)」の違いをわかりやすく語ってくれています。
記事の内容を要約すると、以下のような感じです。
- 投資家(ジム・ロジャーズ)がやっていることと、ビジネススクール(将来の金融マンなどを育てる学校)で教えている内容は全然違う
- ビジネス・スクールでは、投資理論ばかり教えるが、それが実際に投資での成功に役立つかどうかは疑問
The Financial Pointerの著者は以下のように解説しています。
ビジネス・スクールは投資家のための学校ではない。企業経営者や起業家になるための学校だからだ。
ビジネス・スクールの学生の進路の中に投資家は(ないとはいわないが)ほとんどない。金融界に進む人たちもほとんどが金融機関に就職する。仮にそれが機関投資家であったとしても、職種は投資とはならない。
むしろ、投資家からいかに手数料をいただくかの勉強をするのがビジネス・スクールだ。投資のリターンで飯を食うのと、投資家からの手数料で飯を食うのでは大きな違いがある。
私たち個人投資家は、自分たちのお金で相場を張り、投資リターンを得ようとします。もし投資に失敗すれば、自分の懐が痛みます。
一方で、投資のプロ(金融マン)は、多くの人からお金を集め、他人のお金で相場を張ります。投資に失敗しても自分たちの懐は痛みません。(給料は減るかもしれませんが)
投資に成功しても失敗しても、確実に手数料収入が得られます。
個人投資家は自分自信の資金で投資をするので、ようは「勝てばいい」のです。
投資理論を知らなくても、すべての投資銘柄について意見を述べることができなくても、なんら問題はありません。めちゃくちゃな運用ルールだとしても、誰も文句はいいません。
しかし、投資のプロはそうはいきません。
他人からお金を集める以上、論理立てた説明ができなければなりませんし、規律のある運用ルールに従って投資を実行する必要があります。
そうした論理や運用ルールを実践するために、投資理論を学ばなければならないのです。
テストで100点を目指しても投資では勝てない
個人投資家とプロの金融マンとの間には、こうした違いがあるにも関わらず、多くの個人投資家が、投資で勝つために、学校のテストで100点を取ろうとします。
言い換えると、アカデミックな勉強を追求することで、結果を出そうとします。
頭が良く、真面目な人ほどそういう方向に行きがちです。
しかしどれだけ理論を勉強しても、それが「投資で勝つ」ことに繋がるとは限りません。(理論の勉強が全く意味がないものだというつもりはありません)
私たちの人生では多くの場面で、たくさん勉強すれば結果が保証されています。しかし投資の世界においては、多くを知ったからと言って成功が保証されているわけではないのです。
なぜなら、投資の世界は極めて優秀な人、高いIQを持つ人たちの集まりだからです。
私自身、優れた学歴や職歴があるわけではありませんので、頭の良さでプロの投資家に勝つことは到底できませんし、投資理論についても深く知りません。
だからこそ、「個人投資家としての優位性」を最大限に活かして勝負する必要があるのです。
- A:投資家の最終目標は勝つこと
- B:金融マンの最終目標は外資系投資銀行に就職して高給取りになること
個人投資家は本来、Aを目標にしているはず。しかし、いつの間にかBを目指してしまっているケースがある。
そしてBは必ずしも「投資で勝つ」という最終目標を保証するものではない。
投資で勝つには1銘柄だけ知っていればいい
個人投資家が投資で勝つためには、極端な話、1銘柄だけ知っていればいいのです。
プロの金融マンは、幅広くいろいろな銘柄について知る必要があります。
しかし、多くの銘柄について知るということは、1銘柄あたりの理解度が薄くなることを意味します。
私たち個人投資家は、すべての銘柄について知る必要はないのですから、「これぞ」と思える確実な1銘柄を選びさえすれば、(その選択が正しければ)投資理論を知らなくても、プロの投資家を上回るリターンを得ることができます。
しかし優秀な人ほど、より多くを、すべてのことを知りすぎる傾向にあります。
その結果として、「ベータ」や「ポートフォリオの管理方法」といった様々な投資理論を勉強し、それらを用いることで、投資の判断基準が複雑怪奇なものとなっていきます。
よくわからない会社について幅広く理解するよりも、身近な存在で他の人よりも深く理解できる会社に投資するべきだと、著名投資家のピーター・リンチも語っています。
テンバガーの見つけ方、ピーター・リンチが教える10倍株の発掘法がすごい
机上の理論よりも、日常生活でアンテナを張り巡らせる方が大切。
投資銘柄を選ぶ上では、つい利益率やROEといった定量的な指標を気にしてしまいがちですが、こうした定量的なものよりも、提供する商品の流行やビジネスモデルといった、定性的な部分に着目して投資判断を下す方が大事だと、私は考えます。
「待つ」ことができるのも個人投資家の優位性
私たち個人投資家には「現金ポジションで待機できる」という優位性もあります。(プロは顧客からお金を預かっている手前、常に投資し続けなければならない)
また、「大きな株価変動を受け入れることができる」のも個人投資家の持つメリットです。(プロは一定の値下がりで強制的に投げ売りしなければならない)
一方で、前述のとおり「損した場合には金銭的な損失を負う(自腹で勝負する)」というのが、個人投資家の弱みです。
「休むも相場」という投資格言があるように「待てる」という優位性を活かさない手はありません。
AERA dot. (アエラドット) の「有名投資家が実践! 「コロナショックでお金を失わない方法」」という記事で、ジム・ロジャーズは以下のように語っています。
成功した投資家の多くは何もしない時間が長い。座って待って、何かを見つけたら、10年でも20年でも成長を待つ。だから成功した投資家の多くはたいてい何もしていないのだ。
最も気を付けなければならないのは、買ったものが「10」から「100」になったような時だ。売って儲けを出した後も、「もっと何かしなければいけない」と思ってしまう人がいるが、それをやってはダメだ。こういう時は何もしてはいけない。
「ビーチでリラックスする」「窓を閉めて何もしない」「落ち着いて忍耐強くなる」など、他に何かを見つけるまでは何もしてはいけないのだ。投資家にとって、とても大事なことなのだが、それを守れる人は少ない。
ドイツ人であっても、ロシア人であっても、日本人であっても、たいていは、「いつもゲームに参加していないといけない」と思ってしまう。投資家の悲しい習性だ。投資で一番大事なことはお金を失わないことである。資本を守るには、お金を作り出すことが極めて重要だが、まずは「お金を失わない」というルールを守らなければならない。
出典:AERA dot. (アエラドット)
バフェット・ソロスも待つことを大事にする
待つことを大切にしているのは、ジム・ロジャーズだけではありません。
著名投資家のウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスも、投資スタイルは違えど「待つこと」を大切にしています。
書籍「バフェットとソロス勝利の投資学」の第12章「することがないなら何もするな」に、そのエッセンスがまとめられています。
秘訣は、することがないときは何もしないことだ ― ウォーレン・バフェット
成功するためには暇な時間が要る。両手にたっぷり余るぐらいの時間が必要だ ― ジョージ・ソロス
出典:バフェットとソロス 勝利の投資学
株式についてはもう何ヶ月も大した投資をしていません。
いつまで待ち続けるのかというと、いつまでも待ちます。ただ買うためにだけに何かを買ったりはしません。何かいいものが手に入ると思ったときにしか投資はしないのです。(中略)
時間制限などありません。金が積み上がるなら、積み上がるに任せます。
~
何かやったことで給料がもらえるわけではありません。正しかったときにだけ報酬をもらえるのです。
出典:バフェットとソロス 勝利の投資学
ジョージ・ソロスは、友人のバイロン・ウィーンに対して以下のように言ったことがあるそうです。
バイロン、君の問題は毎日仕事にいって何かをしなければいけない(と思っている)ことだよ。私はそうじゃない。
(中略)私は仕事に行って意味があるときにしか仕事には行かない。(中略)
で、行ったときには徹底的に働くんだ。でも、君は毎日仕事に出て、毎日何かをやってるんで、特別な日があってもそれに気づかないんだ。
出典:バフェットとソロス 勝利の投資学
投資家の中には、投資効率を最大限に高めるために「現金を寝かせておくのは悪いことだ」と考える人もいます。
しかし、この記事を書いている時点で市場を賑わせている「新型コロナウイルス問題による株価暴落」のように、「いざ」というときには、現金を持っている人が強いのです。
「今は待つべきか」、それとも「動くべきか」。
これを的確に判断できる能力は個人投資家にとって大きな武器になります。繰り返しとなりますが「プロ」は「今は待つべきだ」とわかっていても、ルール上「待つ」ことを許されていないケースも多いからです。
そして、投資家にとってほとんどの時間は「今は待つべきとき」なのです。
書籍「バフェットとソロス勝利の投資学」の第12章「することがないなら何もするな」は読む価値のある、非常に役立つ内容です。
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