サンクコスト効果とコンコルド効果とは、株式投資の心理学
執筆者:川原裕也
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余裕がない時に限って勝負に負けてしまう。
こんな経験がありませんか?
ここでいう「勝負」というのは、パチンコや競馬のようなギャンブルでも良いですし、株式やFXの投資でも良いです。また、好きな人に告白するというのも「勝負」と言えるでしょう。
余裕がある時は勝負に勝てることが多いのに、余裕がないときに限って勝負に負けてしまう。
これは不思議でもなんでもなく、冷静さを欠いているために負けるべくして負けている典型的な負けパターンです。
人間は心理面に大きな欠陥を持つ生き物です。
「自分にもその欠陥が存在するのだ」ということに気づき、客観的に見れるようにならなければ、自分もまた大勢と同じような過ちを犯してしまいます。
株式市場がパニックを起こすのも、人間の心理的な欠陥が原因です。もし、人間がいかなる時も合理的な行動を取る生き物であれば、株式市場が暴落したりバブルが起こることはありえないからです。
サンクコスト効果とコンコルド効果
投資をする上で、必ず知っておきたい心理学があります。
それが、「サンクコスト効果」や「コンコルド効果」と呼ばれるものです。
ちなみに、サンクコスト効果とコンコルド効果は同じ意味です。
過去の過ちを正当化できない人間の弱みが破滅を生む
投資をするすべての人に共通することがあります。
それは「自分は他の人よりも頭が良いと思っている」という事実です。
自分が他の人よりも頭が悪いと本気で思っている人は、大切な自分のお金を市場に投じても損するだけだとわかっているので、投資には手を出しません。もしくは、投資信託などを通じてプロに任せるという判断をします。
自分は他人よりも頭がいいと思っている人(または自分は投信のプロよりも高いパフォーマンスが上げられると思っている人)が集まった場所が、投資のマーケットなのです。
自分は頭が良いと思っている人ほど「本当は自分が頭が良くなかったこと(自分の過ち)を認められない」傾向にあります。
これが、投資においてサンクコスト効果がよく語られる理由です。
サンクコストは日本語で「埋没費用」と呼ばれます。
わかりやすく言い換えるとサンクコスト効果とは、「もったいないから捨てられない心理」のことです。
もったいないから捨てられない
下記のようなことを見聞きしたことはないでしょうか?
・何年も赤字を出している事業があり、回復の見込みがないのは明らかなのにその事業から撤退しない企業
・好きになった人に3回フラれているのに、諦められないどころか最初よりもさらに燃えてしまう
・読み始めた小説が30ページでつまらないと分かったのに、もったいないと思い最後まで読んでしまう
・使わないとわかっているのに高額な買い物だったから捨てられない。いつの間にかそういったもので部屋が溢れかえっている(似合うと思って買った服など)
・投資銘柄の業績が悪化して株価が下がってしまった。投資をした当初の「業績が良くなる」というシナリオが完全に外れているのに損切りできない
こうした「過去に発生している出来事がもったいないという心理によって現在の意思決定に影響を及ぼしている」ことが、サンクコスト効果です。
どのシチュエーションもあるあるなのでわかりにくいかもしれませんが、
・赤字を出している事業 → 普通なら撤退するという判断を下せる
しかし、何年もにわたって相当な資金を投資しているのでサンクコスト効果が働き、やめられない
・好きになった人にフラれた → 普通ならそれで諦める
しかし、2回、3回も告白してしまったので、引くに引けなくなっている
・つまらない小説 → 普通なら途中で読むことをやめるべき
しかし、本を買ってしまい、しかも30ページ読んでしまったので、投じたお金と時間がもったいなく感じ、最後まで読んでしまう
・使わないとわかっている物 → 不要なものは捨てるべき
しかし既にお金を投じてしまっている、間違った買い物をしたという判断を認めたくないので、捨てられない(いつか着る、いつかは必要になると思い、先延ばしにする)
・普通は業績の悪い会社の株なんて買わない
しかし、投じたお金を失ったり誤った判断を認められずに、その株を購入した理由はいつの間にか変わってしまい徹底できない
失った時間やお金(サンクコスト)を取り戻したいと思ってしまうために、捨てるべきものを手放せないのがサンクコスト効果です。
買って失敗した「着ない服」をいつか着ると思って捨てずにとっておくだけなら、家にそういったものが溢れるだけなので、人生において大きな損失にはなりません。
しかし、株式投資の場合は株価変動によって悪い株はどんどん値下がりし、価値が目減りする可能性があります。
少しの損で済んだはずが、悪い株をすぐに手放す勇気が持てず、大きな損失に発展してまったり、10年以上も塩漬けで保有し続けるハメになってしまったというエピソードは少なくありません。
嘘のような話ですが、デイトレでなんとなく買い、本の少しの利ざやを得てその日のうちに売却する予定だった銘柄を、5年以上保有し続けたという話も結構あります。
コンコルド効果とサンクコスト効果は同じ意味
サンクコスト効果は別名「コンコルド効果」とも呼ばれています。
コンコルドとは、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機のことです。通常の飛行機のように旅客を乗せて、マッハ2の速度で移動する夢のような乗り物だったのだとか。
しかし、開発は難航し、一度受注した案件もキャンセルが続き、コンコルドが完成する前の段階で「商業的に利益を出すのは難しい」というのはわかっていました。
ただ、コンコルドの開発にはすで莫大な資金が投じられていたため、これ以上お金をかけて機体を完成させても採算の目処が立たないにもかかわらず、さらに資金を投じて機体を完成させることを強行しました。
まさに、負けるとわかっていても勝負してしまう後に引けないプライドのような感じです。
その結果、コンコルドはもちろん商業的に成功せず2003年には全機が運行停止となり、さらにはこうした事例を教訓として「コンコルド効果」という名前まで生み出してしまいました。
サンクコスト効果(コンコルド効果)が私たちに及ぼす影響は大きく、政府ですら正しい判断ができないこともあります。
実際、上場企業の決算や事業運営を見ていても、サンクコスト効果から逃れることができずにいると思われるケースが少なくありません。
サンクコスト効果とは、それくらい「人間に備わっている大きな心理的欠陥」の1つなのです。
しかしこれは、逆に言い換えるとサンクコスト効果を知った上でそれを対処できれば、株式市場でも優位に立てることを意味します。
サンクコスト効果に立ち向かうために
では、サンクコスト効果に惑わされずに合理的な判断をするにはどうすればよいか。
それは、「NOW(ナウ)」を意識することです。
過去のことは忘れて、今からスタートするとすればどういう判断を下すのかを考えます。
これは個人投資家で巨額の資産を築いた人の考え方ですが、「いくら儲けたから売るとか、いくら損したから損切りする」というのはどうでもいいのだそうです。
今この瞬間、保有銘柄の投資判断が売りだと思ったから売る。その結果、売却価格が買値より安ければ利益になるし、買値より高ければ損切りになります。
その人は、「含み損益がいくらか?」という考えは一切もっておらず、「時価の資産はいくらなのか?」という考えを持っていました。
例えば、トヨタ株を3,000円で1,000株買ったとします。この時点で手持ち資産は300万円です。
しかし、その後トヨタ株が500円の値下がりをし2,500円になったとします。この場合、多くの投資家は買値の3,000円を気にするあまり「50万円の含み損になっている」と考えます。
一方で、前述の個人投資家は「含み損がいくらか?」ということは全く考えず「現在250万円の資産を持っている」と考えます。
そして常に、そのトヨタ株が現時点で買いか売りかを合理的に判断し、投資をおこなっています。
上記の考え方を持つことで、過去のサンクコストを無視して投資判断ができるので、100万円の利益になっていようが、100万円の損失になっていようが、ニュートラルな心理で売買できるのです。
ちなみに、ここで取り上げた「個人投資家」とは、cisさんのことです。いまではすっかり有名になられましたね。
次の記事は「ギャンの価値ある28のルールまとめ、ルールを守れないなら退場するだけだ」です。
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