IPOで気をつけたいロックアップ期間とは?暴落の前に売り抜けを
執筆者:川原裕也
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短期間で投資額の2倍、3倍の利益も夢ではないIPO投資(新規公開株投資)。
さらに新規公開株への参加は損するリスクも小さいということで、個人投資家にとても人気がある投資手段です。
IPO(新規公開株)に投資をする上で気をつけるべきポイントはたくさんありますが、今回はその中でも最も注意すべき「IPOのロックアップ期間」についてまとめます。
IPOで稼ぐ方法は大きく2つある
IPOで大きく稼ぐ手段は2つあります。
- 新規公開株の公募に参加し、抽選の結果IPO株を取得し、初値で売却する
- 上場後のIPO株の値上がりに賭けて投資する
このうち、上場前のIPO株を公募で取得する方法は、危険な銘柄を選ばない「選択力」で勝負が決まります。極端に言えば、変な銘柄さえ掴まなければ勝てる可能性は極めて高いということです。
一方で、公募売出しの株数は限られているので、低い当選確率の中からIPO株をゲットしなければなりません。わかりやすく言えば無料の宝くじに参加しているようなものです。
逆に、上場後のIPO株に投資する方法は、通常の株式投資と同じですので、利益を得られる可能性もあれば損をする可能性もあります。
特にIPO株は値動きが荒いので、よりハイリスクな取引と言えます。
ロックアップ期間終了後の暴落に注意
企業が自社株を公開する前は、たいてい
- 創業者や役員
- ベンチャーキャピタル
- 親会社
などの利害関係者が大量の株式を保有しています。
株式を公開すると市場で自由に売買できるので、大株主の一部は大量の株式を売却して利益確定を考えます。
特にベンチャーキャピタル(通称VC)は未公開株に投資をして、株式公開後に売却して利益を得るというのが仕事ですので、上場後すぐに保有株を売ってくること多いです。
とはいっても、上場直後に大株主が大量の保有株を売ってしまったら、売り圧力が強すぎて株価が暴落してしまう危険性がありますよね。
こうした問題を避けるために「上場後一定期間は、大株主は保有株を売ってはいけませんよ」というルールを定めています。これが「ロックアップ期間」です。
つまり、上場後に株式を売却してくる可能性が高いVCが大株主一覧にいても、ロックアップ期間中は持ち株を売れないので、株価への影響は限定的だと見ることができます。
逆に考えると、ロックアップ期間終了後は自由に株を売れるようになるので、ロックアップ期間が終わると株価が暴落するということも十分考えられます。
ロックアップ期間を調べる方法
ロックアップ期間を調べるには、証券会社などから公募の段階で開示される「新規発行並びに株式売出目論見書」をチェックします。(通称:目論見書)
目論見書はPDFでも交付されているので、そのIPO株の引受を行っている証券会社のホームページなどで誰でも入手できます。
目論見書の中に書かれている「ロックアップについて」という項目に、ロックアップ期間に関する内容が記載されています。
例えば、靴の通販サイトを運営するロコンド(3558)の目論見書には下記のように書かれています。(読みやすくするため、一部をはしょっています)
3.ロックアップについて
本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である田中裕輔、田村淳、藤樹賢司、田村達裕、菊地鉄也及び浜口数馬は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日後90日目の平成29年6月4日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等を行わない旨合意しております。また、売出人であるアント・リード・グローバル投資事業有限責任組合、ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、テクノロジーベンチャーズ2号投資事業有限責任組合、秋里英寿、アント・リード2号投資事業有限責任組合、WiL Fund I, L.P及びネオステラ1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日後90日目の平成29年6月4日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって主幹事会社を通して行う売却等は除く。)を行わない旨合意しております。
また、当社は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日後180日目の平成29年9月2日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の発行、当社株式に転換もしくは交換される有価証券の発行または当社株式を取得もしくは受領する権利を付与された有価証券の発行等を行わない旨合意しております。
なお、上記のいずれの場合においても、主幹事会社はその裁量で当該合意の内容を一部もしくは全部につき解除できる権限を有しております。
(中略)
また、当社は、主幹事会社との間で、ロックアップ期間中は、主幹事会社の事前の書面による承諾を受けることなく、当社普通株式及び当社普通株式を取得するする権利あるいは義務を有する有価証券の発行又は売却を行わないことに合意しております。
なお、上記のいずれの場合においても、主幹事会社は、その裁量で当該合意内容の一部若しくは全部につき解除し、又はその制限期間を短縮する権限を有しております。
事前に書面などで承諾を受ければ、ロックアップ期間中であっても株式を売却できるようになっていますが、このような場合はIR(開示情報)がリリースされますし、また信用失墜になってしまうのでまず行われません。
ロックアップ期間で確認したい項目
目論見書から読み取れる情報で、ロックアップに関する重要な項目をまとめます。
まず、「ロックアップ期間が何日なのか?」ということです。今回の事例(ロコンドのIPO)では上場日から90日となっていましたが、銘柄によっては180日や60日のケースもあります。
次に、「ロックアップがかかっていない大株主がいるか?」です。役員やVC、利害関係会社などには大抵ロックアップがかかっています。しかし、ロックアップの説明箇所に名前の上がっていない大株主が存在することもあります。
そしてもう一つは、「ベンチャーキャピタルをはじめ、短期的に保有株を売ってくる可能性がある大株主がいるか?」です。
創業者や役員、取引関係会社といった大株主にロックアップがかかっていることは多いです。
しかし彼らは長期的な利害関係者なので、上場後も保有株を手放すことは少ないです。(多少売ってくることもありますが、その比率は微々たるものです)
ロックアップには解除条件がある
ロックアップ期間中は大株主が必ず保有株を売却できないかというとそうではありません。
下記をよく見てみるとわかるのですが、(読みにくい文章なので読み飛ばしていただいて構いません)
売出人であるアント・リード・グローバル投資事業有限責任組合、ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合、テクノロジーベンチャーズ2号投資事業有限責任組合、秋里英寿、アント・リード2号投資事業有限責任組合、WiL Fund I, L.P及びネオステラ1号投資事業有限責任組合は、主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日後90日目の平成29年6月4日までの期間中は、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって主幹事会社を通して行う売却等は除く。)を行わない旨合意しております。
「引受人の買取引受による売出し及びその売却価格が「第1 募集要項」における発行価格の1.5倍以上であって主幹事会社を通して行う売却等は除く」と書かれているのがわかります。
これはつまり、ロックアップ期間中であっても上場後に株価が急騰して公募価格の1.5倍以上になれば、大株主はロックアップを気にせず市場で株式を売却できるという意味です。(銘柄によって公募価格の2倍というケースもありますし、この条件が定められていないこともあります)
つまり、IPO株が人気化して株価が大きく上昇しているのを見て飛びつくと、「ロックアップ解除条件」に達して大株主が一気に大量の保有株を「爆弾」のように投下してくるかもしれません。(実際にこういうケースは見受けられます)
IPO投資をする上で、この部分はとても気をつけなければならないポイントです。
落とし穴にはまらないために
IPO株は期待収益率の高い「楽に儲かる投資」と言い切っても良いと思います。
手軽に儲かるからこそ、IPOの公募抽選に多くの投資家が殺到し、ほとんど当選しないのですが。。。
ただ、IPO投資にも「この記事で述べたような落とし穴」は存在します。
何も知らずにただ盲目的にIPO株を買っていると、公募割れ銘柄を掴んでしまったり、上場後の天井で買ってしまい長期的に株価が低迷するということになりかねません。
正しい知識を身につけて投資をすれば、これほど良い投資方法もなかなか存在しないので、基本的なところだけはしっかりと学んでおきましょう。
次の記事、IPO(新規公開株)で稼ぐ、証券会社ごとの抽選方式を比較でさらに深いIPO情報を明らかにしています。
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最後まで読んでいただきありがとうございました
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