国内株式インデックスファンド(TOPIX)の違いを比較、どの投資信託を選ぶべきか
執筆者:川原裕也
※記事内に広告を含む場合があります
当サイトは更新を終了しました。
長きにわたり当サイトを愛読、応援くださった方々には誠に感謝しております。
※この記事の内容は執筆時点のものです。サービス内容・料金など、現時点の最新情報とは異なる場合がございます。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
国内株式インデックスファンドには、大きく分けて
- 日経平均株価に連動するタイプ
- TOPIX(東証株価指数)に連動するタイプ
の2つがあります。
日経平均株価の方が知名度は高いのですが、「日経平均」が主要な225銘柄から構成される指数であるのに対して、TOPIX(東証株価指数)は東証一部全銘柄で構成される指数です。
また、日経平均株価は単純平均で計算、TOPIXは時価総額加重平均で計算するという点でも違います。
※日経平均株価には株式分割・株式併合・採用銘柄入れ替えなどの影響を考慮し、指数の連続性を保てるよう修正が加えられているため、厳密には単純平均ではありません。
一般的に「国内株式インデックスファンド」というと後者を選択する方が多く、また多くのファンドでもTOPIXをベンチマークに採用しています。
信託報酬が低いと評判の国内株式インデックスファンド(TOPIX)である、
- 三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド
- <購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIX インデックスファンド
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
を比較してみると、意外な違いに気づくことができました。
この記事は、数ある国内株式インデックスファンドのうち、どれを選べばよいか迷っている方におすすめです。
2019年7月1日付けで、eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)がベンチマークを「TOPIX(配当込み)」に変更すると発表しました。
この記事はベンチマークの変更前に書いたものですので、「eMAXIS SlimはTOPIX(配当なし)を採用している」という記述は無視して読み進めてください。
3本の国内株式インデックスファンド(TOPIX)の比較
特定の株価指数に連動するインデックスファンドの場合、基本的にはどの商品を選んでも結果は同じです。
信託報酬(運用会社の手数料)や、わずかな運用結果の差(ベンチマークに対する乖離)、そして、その他コスト(監査費用など)によって、結果に差がつくものの、基本的には信託報酬が低いほど有利であることに変わりはありません。
ただし、結論から言うと私自身は今回取り上げた3つの投資信託すべてに分散投資をしています。
全部同じなら、その中で一番良い商品を選んでも、全部買っても、大きな差はないだろうという考えです。
というのも、ここ数年は運用会社同士で「信託報酬の引き下げ競争」が行われているため、将来、信託報酬の高低が逆転する可能性があるからです。
もちろん、その時々で最も信託報酬が低いものを買っていくという方法が合理的です。
しかし、私が3つの国内株式インデックスファンドに分散投資をしているのには、他にも理由があります。
まず、記事執筆時点(2019年4月)における、3本の国内株式インデックスファンドの特徴をまとめます。
- 信託報酬:0.176%
- 純資産:227億円
- その他費用(直近本決算時点):0.017%
- ベンチマーク:TOPIX(配当込み)
- 運用会社:三井住友DSアセットマネジメント
POINT
今回の3本の中で信託報酬は最も高い、その他費用も高い。
- 信託報酬:0.1749%
- 純資産:229億円
- その他費用(直近本決算時点):0.007%
- ベンチマーク:TOPIX(配当込み)
- 運用会社:ニッセイアセットマネジメント
POINT
純資産は最も多い、どの指標においても平均的な印象。
- 信託報酬:0.154%
- 純資産:77億円
- その他費用(直近本決算時点):0.006%
- ベンチマーク:TOPIX(配当なし)
- 運用会社:三菱UFJ国際投信
POINT
信託報酬が最安、後発なので純資産は最も少ない、その他費用においても低コスト、配当なしのTOPIXをベンチマークにしている。
運用報告書(全体版)を見ると、eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)は毎回、ベンチマークを3%ほど上回っていることがわかります。
ベンチマークに対してプラス乖離が続いているのは、eMAXIS Slimが特別優秀だからではありません。
配当なしのTOPIXをベンチマークにしている一方で、eMAXIS Slimは分配金を出さずに配当込みで運用しているため、配当金相当分、ベンチマークを上回る(プラス乖離になる)ことになります。
※信託報酬等は税込で表記しています
※その他費用とは、主に売買委託手数料とその他費用(監査費用など)の合算です
このように比較してみると、三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンドはやや不利な印象を受けます。
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)は数値上は優秀なのですが、ベンチマークを「TOPIX(配当なし)」にしているため、真の実力が不透明になっていると感じました。
訴訟に積極的な三井住友・DCつみたてNISA
一見すると不利に見える、三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンドですが、「訴訟に積極的」という目立たない特徴があります。
過去の運用報告書(全体版)を見ると、有価証券報告書の虚偽記載を行った、オリンパスと東芝に対して損害賠償請求訴訟を起こしています。
うち、オリンパスの案件については和解金が得られ、その分が投資家のリターンとしてきちんと戻ってきています。
同様に、東芝に対しても訴訟を起こしていますが、こちらはまだ和解金を得られていません。
- オリンパスの有価証券報告書虚偽記載に対して訴訟(第7期)
- 訴訟費用と和解金の差額を利益として計上(マザーファンドの基準価格+27円分)
- 東芝の有価証券報告書虚偽記載に対して訴訟(第6期)
- 訴訟を起こしたという通知。和解金はまだ得られていない。
運用報告書にこのような記載があるのは、「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」だけです。
eMAXIS(Slim)やニッセイTOPIX インデックスファンドにはこのような記載は見られませんでした。
つまり、上場企業が不正をして株価が下がり、インデックスファンドに投資している投資家が間接的に損を被っても、泣き寝入りをしている可能性が高いということです。
「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」はもともと、DC(年金)専用ファンドとして組成されたという経緯があります。
年金資産を運用するという目的からも、こうした問題に対してきちんとした対応をしているのではないか、と思いました。
インデックスファンドの問題点
すべての銘柄を機械的に買う「インデックスファンド」は、優秀な企業に投資できる一方で、怠惰な経営をしているダメな企業にも投資をしてしまいます。
また、保有する銘柄数があまりに多い(例えばTOPIXインデックスファンドなら、東証一部全銘柄の株を保有している)ため、株主総会における議案の良し悪しをきちんと精査できないと言われています。
例えば、悪質な経営をしている上場企業が、株主総会で株主にとって不利な議案を出しても、インデックスファンドが多くの議決権を持っている場合、その議案の問題を見抜くことができず、機械的に「賛成」してしまう恐れがあります。
結果として、インデックスファンドが影響力を持つほど(インデックスファンドに資金が集まるほど)、不適切な適切な経営が承認されてしまうという可能性が、問題点としてあげられます。
アクティブファンド運営者が、インデックスファンドを批判する時のネタは、大抵こうした「スチュワードシップコード」に関するものです。
投資信託の運営者は、私たち投資家の代理人として企業の株主となり、株主総会の議案を正しく評価していく必要があります。
しかし、インデックスファンドはその特性上、すべての議案に時間をかけて精査することや、悪質な会社の株を売却するといったことができません。
今回取り上げた「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」は、議決権の行使状況は不明ではあるものの、株主に対して明らかな不正を行った上場企業に対して、訴訟を起こし、投資家が負った損失を取り返しています。
信託報酬が高いとは言え、こうした姿勢はとても評価できると個人的には思います。
株主の利益を守るための訴訟、他のインデックスファンドにも是非お願いしたいです。
貸株で副業をするeMAXIS Slim
信託報酬の低さで評判のeMAXIS Slimは、前述のとおり「配当なしのTOPIX」をベンチマークにしています。
よって、運用報告書では毎回、ベンチマークに対してプラス乖離であると報告しています。
しかしこれは、eMAXIS Slimが配当(分配金)を出してないことによって生じます。
実際は、他のTOPIXインデックスファンドと同様に、TOPIX(配当込み)に対しては、信託報酬やその他手数料相当分のマイナス乖離になっているはずです。
eMAXIS Slimのユニークな特徴は「運用資産を貸株にして金利収入を得ている」という点です。
最近は個人投資家の間でも、証券会社に保有株を貸し付けて、金利収入を得るという手段が確立されています。
eMAXIS Slimの運用報告書(全体版)には、以下のような記載があります。
信託財産の収益向上を目的に、 保有株式の貸し付けを行っています。 貸付契約額は、 期末
時点で概ね純資産総額の5割程度となり、 信託財産に若干の収益寄与となりました。
運用資産の約半分を貸付に回しているとのことです。
三井住友・DCつみたてNISAや、ニッセイTOPIXインデックスファンドにはこのような記載がないため、保有株の貸し付けを行っているのはeMAXIS Slimだけだと思われます。
このようなちょっとした手間をかけて、私たち投資家のリターンを嵩上げしてくれるという取り組みはありがたい限りです。
一方、「貸株」には
- 議決権を失う(株主としての権利を失う)
- 証券会社が破綻すると貸した株が戻ってこない
というリスクがあります。(貸株の詳細解説はこちら)
1.に関しては問題ありません。eMAXIS Slimは配当金を受け取っていますので、配当落ち日に合わせて貸株を一時休止し、議決権はきちんと取得しています。
2.に関してもほぼ問題はないと思いますが、これについては「貸株」という副業で利益を得る上で、極めて小さいリスクを負っていると考えるのが正しい見方かと思います。
結論
運用報告書(全体版)に目を通してみると、TOPIXインデックスファンドの中でも微妙な運用方針の違いに気づくことができます。
信託報酬はやや高いと感じるものの、きちんと訴訟をして投資家利益の保護に努めてくれる「三井住友・DCつみたてNISA」。
配当なしのベンチマークを採用することで、真の実力がわかりにくいものの、貸株による運用効率化や信託報酬の低さが目立つ「eMAXIS Slim」。
すべてにおいて平均的な立ち位置の「ニッセイTOPIXインデックスファンド」。
冒頭でも述べましたが、私自身は、それぞれ特徴があるものの、どれを買っても概ねTOPIX(配当込み)と同じ動きをするのなら「全部買っておこう」という結論に至りました。
低コストなTOPIXインデックスファンドには、知名度の低い「Smart-i」シリーズという選択肢もあります。
りそなアセットマネジメントが運用しており、地味に信託報酬引き下げによる対抗も行っている、ダークホースです。
あわせて読みたい:
Smart-iシリーズの評価とおすすめ商品、りそな最強のインデックス投信
こちらの記事も読まれています
最後まで読んでいただきありがとうございました
こちらの記事にコメントが投稿されました
-
P さんがコメントしました - 2023年12月18日
決算書の「百万円」や「千円」の単位を素早く読む方法 -
No Name さんがコメントしました - 2023年10月8日
プロスペクト理論とは?投資に活かす方法、あなたの知らない心理学の世界 -
DCF法くん さんがコメントしました - 2023年8月21日
DCF法の世界一わかりやすい解説、割引率の決め方やエクセルでの計算方法 -
No Name さんがコメントしました - 2023年8月19日
DCF法シミュレーター -
にゃん太郎は長生き さんがコメントしました - 2023年6月19日
証券マンがおすすめするファンドラップの評判を信じて買って良いのか
0件のコメント