やさしく理解するソーシャルレンディングの仕組み、失敗から学び危険を回避
執筆者:川原裕也
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毎月分配収益が得られるソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)は、新しい資産運用先として注目されています。
ネット証券大手のGMOクリック証券が、ソーシャルレンディング業界大手のmaneo(マネオ)と提携するなど、少しずつ一般への認知も広がっている状況です。
しかしながら、一部の業者に行政処分が下される問題もあり、まだまだ発展途上の投資商品であることは否めません。
私自身もこれまでに様々なソーシャルレンディングに投資をし、その問題点や危険性が見えてきたので共有したいと思います。
この記事は、これからソーシャルレンディングを始めようと思っている人に、是非読んでいただきたいと思います。
目次
ソーシャルレンディングの仕組み
ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)の仕組みは、上記の画像の通りです。
登場するプレイヤーは3人なので、それぞれわかりやすく解説します。
お金を借りたい「借り手」
ソーシャルレンディングにはまず、「お金を借りたい」という「借り手」が存在します。
彼らは通常「事業者」であり、不動産事業や貸金業、再生可能エネルギーの発電所の建設事業者だったりします。
ソーシャルレンディングの案件の中には、アミューズメント施設(パチンコ店)の運営をする事業者が「借り手」であることもあります。
貸金業法の規制により、ソーシャルレンディングでは彼らの具体的な社名は伏せられているのですが、どういった事業を営み、借りたお金をどのような目的で使うのか?に関しては、開示されています。
借り手は決して低くない金利でお金を借りたいと言ってきます。
この理由としては、
- 短期資金なのでスピーディーに借りたい
- 返済順序が劣後するメザニンローンで調達したい
- 建設前の物件なので担保がない
などがあり、決して銀行からお金が借りられない倒産寸前の会社というわけではありません。
また、その他に「貸金業やパチンコ店のような、銀行からお金を借りにくい業種である」というのも、事業者がソーシャルレンディングでお金を借りようとする主な理由です。
ソーシャルレンディングでは、貸し倒れが起きないよう、事前にソーシャルレンディング業者が審査を行ってから案件を組成するようにしています。
業界大手のmaneoは以下のように説明しています。
■なぜ銀行から借りないの?
・創立後の年数が浅く、企業としてまだ銀行の融資対象にならない。
・必要資金が少額であるため、銀行が融資に消極的である。
・融資では掛け目が低く、多額の自己資金が必要となる。
・毎月の元本返済があり、事業のキャッシュフローと合わない。
・建物が竣工するまでは担保の対象とならないので、建築資金の融資が受けられない。
・銀行からも借りているが、資金調達の手段を増やしたい。出典:maneo
例えば、貸金業者は「サヤ取り」ビジネスなのでどれだけ高金利でお金を借りても、それよりも高い金利でお金を貸せる借り手を見つければビジネスとして成立します。
また、不動産業者や再生可能エネルギーの建設業者は、借りたお金で物件を建設し、施工済み物件を売却することで返済原資とします。
アミューズメント施設(パチンコ店)の場合、新台入れ替えにお金がかかります。新台を入れるにあたってお金を借り、それらを稼働させることで資金回収をはかります。
いずれのケースでも、短期的な資金需要というのは生まれるもので、こうした借り手がいるからこそ、年率18%でお金を貸す消費者金融のビジネス版「商工ローン」が存在しているのです。
商工ローンの金利が最大年率18%であることを考えると、年率10%前後で借りたいと言うソーシャルレンディングの「借り手」も正常な事業者であるとわかるかと思います。
利回りを得たい「投資家」
ソーシャルレンディングにおける「貸し手」となるのが、私たち「投資家」です。
投資家は利回りを求めて、投資先を常に探しています。
身近な投資先としては、
- 定期預金
- 株式投資
- 債券(国債・社債)
- 投資信託
- Jリート
などがあります。
いずれも、リスクが大きいものはリターンも大きいのが普通であり、ハイリスク・ハイリターンの案件に投資するかどうかは、投資家の判断に委ねられます。
ソーシャルレンディングの場合は、ミドルリスク・ミドルリターンと位置づけられています。利回りはリスクに応じて年利5%~10%まで幅広いです。
ソーシャルレンディングは、実質的には投資ではなく融資となるため、原則として借り手が保有する不動産などを「担保」として取ることができます。
借り手が万が一、借りたお金を返せない場合は、担保を売却して資金回収が図れます。
また、債券のように毎月分配型であり、あらかじめ償還期限が決まっているのもソーシャルレンディングの特徴です。
投資家は、資金を投じて毎月の利息収入を得ます。そして償還日に貸したお金を一括返済してもらう仕組みです。
債券と同じく、ソーシャルレンディングは元本保証ではないので少なからずリスクもあります。担保を売却しても資金を全額回収できない場合は、元本割れが起こります。
しかし、ソーシャルレンディングは「1案件数万円から投資ができる」ので、複数の投資案件に分散投資をすることでリスクを低減し、トータルで利益が出せるようなポートフォリオを組むことができます。
例えば、銀行や金融事業者は、住宅ローンや消費者金融などの様々な方法でお金を貸し出します。
貸したお金がすべて返済されるわけではなく、中には返済ができずに焦げ付く案件もあります。
しかし、住宅ローンも消費者金融も数多くの顧客に分散投資をしているため、その中の一部が焦げ付いてもトータルで利益を出すことで、ビジネスを行っています。
ソーシャルレンディング投資を成功させるためには、信頼のおける業者にしぼり、さらに投資案件を厳選することが大切です。
また、自分が安全だと判断した投資案件をさらに複数に分散させることで、リスクを低減させることがポイントとなります。
ソーシャルレンディング業者
ソーシャルレンディングの素晴らしい仕組みは、貸し手と借り手を繋げる仲介人となる「業者」が直接的なリスクを負わず、投資家に対して金融商品として売出したことです。
例えば、お金を借りたい事業者は年率12%で資金調達をします。
その資金の出し手となるのが投資家で、貸し倒れ時にリスクを負う必要がありますが、年利10%のリターンを得るチャンスが生まれます。
そして、借り手と貸し手を仲介するソーシャルレンディング業者は、運営手数料として年率1%~3%程度の収益を得ます。
これまでは、金融事業者が自らリスクを取って借り手に資金を貸す必要がありました。
しかし、ソーシャルレンディングでは、金融事業者が抱えていたリスクを投資家に引き渡すことで、より多くの事業者に資金を貸し出せるようになります。
極端に言えば、年率18%でお金を借りたい事業者がいても、投資家がハイリスク・ハイリターンな投資だと認識した上で、年利16%なら投資しても良いと判断すれば、業者は年率2%の手数料を得られます。
そして、これまで借りるのが難しかった事業者は資金調達に成功し、高い利回りを探し求めていた投資家も効率よく資産運用ができ、「三方よし」の状態が作れるわけです。
これが、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)が生み出した仕組みです。
私が気になっているソーシャルレンディングの危険性
私自身、資産の一部をソーシャルレンディングで運用しているのですが、その中で気になっている危険性もいくつかあるのでまとめておきます。
自転車操業になっていないか
ソーシャルレンディングでは事業者の詳細な財務データは開示されていません。
貸付先となる会社が信用できるかどうかは、審査を担当するソーシャルレンディング業者にかかっています。
高金利の短期借入は、基本的に短期間で終わらせるのが普通です。
仮に年率15%で資金を借りたとして、それを短期で完済するのであれば利息は大した金額にはなりません。
しかし、年率15%で継続的に借りるようになると、それはつまり事業で15%以上のリターンをあげなければ赤字になることを意味しています。
事業で15%以上のリターンを上げるのは相当ハードルが高いため、継続的に高金利で借りている事業者は、自転車操業になっているのではないか?という疑惑が浮かび上がります。
事実、ネットの口コミを見ていても「◯◯プロジェクトの業者(借り手)はもう何年も年率15%で借りているからそろそろやばそう、資金を引き上げることにした」という意見を見かけます。
毎月分配型の金融商品は、いわゆる「タコ配」状態になりやすいのも事実です。
リターンが大きい投資案件には当然、大きなリスクもつきものです。資金を引き上げるタイミングを見極めたり、分散投資によって万が一デフォルトが発生してもトータルで損失とならないようにするのは、投資家の腕の見せ所です。
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これからデフォルト率が上がる
現私は今後、ソーシャルレンディングでデフォルト(貸し倒れ)を起こす案件が増えてくると考えています。
現状のデフォルト率は異常なくらい低いと思っていて、これが今後も続くとは思えないのです。
ソーシャルレンディングは安心・安全だということを吹聴するブログが少なくありませんが、定期預金と同じ感覚で元本保証を望むのであれば、私はソーシャルレンディングをおすすめしません。
「少なからずリスクがある金融商品だ」ということを理解することはとても重要なポイントです。
長い間、ソーシャルレンディングをやっていれば失敗することや元本割れに直面することもあると思います。
しかし、「的確な投資案件の見極め」と「分散投資によるリスク低減」をしっかりと行えば、ソーシャルレンディングは非常に有効な投資商品だと考えます。
逆に、絶対にやってはいけないのは、1つの案件に多くの資金を投入することです。
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まとめ
・ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)の仕組みは「三方よし」の素晴らしいビジネスモデルである。
・元本割れの可能性があり、今後デフォルト率は上がると考えている(中には自転車操業状態の会社も存在する可能性あり)
・投資先が破綻しても利益が出せるよう、「投資案件を見極める目」、「分散投資によるリスク低減」をするのが投資家が汗をかくべきところ。この2つを徹底していれば、トータルで上手くいく
投資案件の中には、利回りは低めでも担保カバー率が十分な案件や、上場企業による保証がついたもの、また3ヶ月などの短期間で償還を向かえるものなどもあります。
高利回りの案件だけでなく、バランス良く分散投資をすることが、ソーシャルレンディングで稼ぐためのカギだと思います。
次の記事は「ソーシャルレンディング初心者が心得ておくべき7つの攻略法」です。
最後まで読んでいただきありがとうございました
こちらの記事にコメントが投稿されました
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