ラチェット効果に陥るな!ビジネスには良いが貯金には大敵となる習慣の力
執筆者:川原裕也
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私たち人間の生活を破綻させかねない「ラチェット効果」を学びます。
ラチェット効果とは、私なりに説明すると
- 慣れ・習慣
- 人間がもつ適応力
によって引き起こされる現象です。
例えば、現代は多くの人が交通系ICカード(SuicaやPASMO、ICOCAなど)を使って駅の改札を通過していますが、一昔前(私が子どもだった頃)は皆きっぷ売り場に並んで、自動券売機できっぷを購入し、改札を通過していました。
交通系ICカードで改札を通ることに慣れてしまった私たちにとって、今さらきっぷを購入して電車に乗るのはあまりに面倒で、考えられないことですよね。
昔は当たり前だったことでも、一度より良い生活を手に入れてしまうと、元の生活には戻りにくい。これが「ラチェット効果」です。
この記事ではさまざまな事例を交えながらラチェット効果を分析し、貯金生活の実現へ一歩前進したいと思います。
退化を受け入れられない人間
私たち人間は本質的に「成長の過程で幸福を感じ、退化の過程で不幸を感じるようにできている」と私は考えています。
言い換えると「得る喜びよりも、一度得たものを奪われることに、より大きな痛みを感じる」のが人間です。
人は退化を受け入れるのが苦手です。精神的な苦痛がともなうため、なんとしてでも退化を食い止めようとします。
例えば、老化現象から逃れようとするアンチエイジングなどがそうです。
肉体的な退化の他にも、私たちは「生活水準の退化」に直面することがあります。
例えば、不景気になって給与が下がり、今の家に住み続けるのが難しくなったことで、より狭い家へと引っ越さなければならない。などですね。
先ほどの交通系ICカードの話と同じですが、人は一度広い家に住むと、(元々住んでいた)狭い家へ戻ることにすごくストレスを感じますし、一度車のある生活に慣れてしまうと、車のない生活は考えられなくなります。
逆に言うと、最初はストレスを感じていても、一度小さな家に住み始めると、その生活にすぐ慣れ、それが当たり前になります。
一言で言うと「人間は高い適用力を持っており、どのような環境にも適用してしまう」ということです。
ラチェット効果という習慣の力
ラチェット効果の「ラチェット」には「歯止め」という意味があります。
大辞泉はラチェット効果について「物価が上昇して実質的な購買力が低下したり、増税などで可処分所得が減少したりしても、貯蓄を取り崩すなどして、消費者がそれまでの消費水準をしばらくの間維持しようとすること。」と解説しています。
つまり、
- 給料が下がった
- 商品の価格が上がった
といった状況でも、私たちは今の生活水準を維持しようとするのです。(たとえ貯金を取り崩してでも)
給料が少し下がったからといって、すぐに家賃が今より安い家に引っ越す人はほとんどいませんし、商品の価格が少し上がったからといって、食事の量を減らしたり、購入数量を減らす人もほとんどいません。
結果として、稼ぎが減ったり商品価格上昇で相対的に「購買力」が下がっても生活水準を維持しようとするので、その分私たちの貯蓄は減ってしまいます。
ラチェット効果を防いで貯金を継続するには
では、ラチェット効果による悪影響を防ぎ、確実な貯蓄を継続するにはどうすればよいか。
前回の記事「貯金できない人は意志が弱い、安田財閥「安田善次郎」が教える究極の蓄財術を学ぶ」でもお伝えしましたが、稼ぎを得たらまず最初にその一部を貯金し、残ったお金で生活するというルールを徹底することが大切です。
例えば給料20万円のうち4万円を貯金し、残った16万円で生活をしているとします。もし商品の価格が上昇(物価上昇)した場合、以前よりも16万円で生活することが苦しくなります。
こうして多くの人が生活水準を維持するために貯蓄額を減らし、(これまでの生活費は16万円で済んだのに)17万円を使って以前の生活を続けようとするのです。
しかし、このケースでは生活水準を落としてでも16万円で生活することを継続し、4万円の貯金を続け、貯蓄の取り崩しも行わないという姿勢が必要です。
むしろこれまで以上に仕事に打ち込み、給料を引き上げることで生活水準を維持・向上できるよう努めます。
給料が変わらない中で「生活水準の維持」を最優先にすると、ラチェット効果の悪影響によって毎月の貯蓄額を減らしたり、場合によっては貯蓄を取り崩さなくてはなりません。
ラチェット効果を活かした貯金法
現在の水準を維持しようとする「ラチェット効果」は人間にとって悪影響を及ぼしますが、見方を変えると「良い効果」ももたらします。
一般的によく言われているのが「ビジネスの成果」において生じるラチェット効果です。
例えばビジネスで一定の成果を出すと、次からその成果を出し続けなければ「なんとなく気持ち悪い」と感じるようになります。
最初は遠い目標だと思っていた「月100万円の売上ノルマ」でも、一度それを達成し、達成感によって気持ちの良さを味わうと、次から月100万円のノルマ達成がスタンダード(基準)となり、それ以下の数字では満足できなくなります。
この効果はソフトバンクグループ創業者の孫正義社長がよく利用しています。
孫正義社長は2006年、携帯事業会社のボーダフォンを買収しました。
当時、負け癖のついていたボーダフォンの意識を変えるため、まずは「契約台数 純増No.1」の実績を獲得することに注力しました。
これまで「No.1」とは縁遠かったボーダフォンにとって「契約台数 純増No.1」は勝ち癖をつけるきっかけとなりました。
一度「No.1」を獲得すると次からそれが当たり前となり、結局「契約台数 純増No.1」は5年以上続いたのです。
同様に、「純利益も一度1兆円を超えると、次からはそれが当たり前となり、それを達成しないとなんとなく気持ち悪くなる」と孫社長は語っています。
こうした「ラチェット効果の好影響」は人間の「成長意欲」から生まれるものです。
もちろん無理して成長をしようとするといずれ破綻を招きますが、「何かを一度でも達成し実績を作ること」は自分にとって想像以上に大きなメリットをもたらします。
一度でも100万円を貯めたことがあるか
ラチェット効果の好影響を貯金に活かすことを考えてみます。
これまでの人生で一度でも100万円を貯めたことがありますか?
今、100万円の貯金など縁遠いと感じている人でも、まずは全力で100万円を貯めるという実績を築く。
一度でもそうした実績を作り上げることができれば、それがスタンダードとなり「手元に100万円の貯金がないと気持ちが悪い」状態になり、結果として貯金習慣を身につけられます。
また、将来的に何らかの理由で貯金を取り崩さなくてはならなくなっても「一度達成すると、再び達成しなければ気持ち悪い」というラチェット効果によって、あなたの貯金額は再び100万円に戻ろうとします。
次回予告:
成功者の言うことを聞くとお金持ちになれないのはなぜか。その理由を教えます。
いわゆる成功者は「特殊な事例」によって生まれているケースが多く、彼らの成功哲学には「再現性」がありません。
しかし多くの人が成功者の真似をすれば自分も同じように成功でき、お金持ちになれると考えます。
いわば、特殊な例を真似することに人生を捧げているのです。
また最近は、SNSを巧みに利用して成功者のように振る舞い、手っ取り早くお金持ちになれるという「理想郷」をばらまく人も大勢います。
彼らの言うことを聞いても、お金持ちになれないばかりか、場合によってはカモにされてしまうこともあるのです。
では、誰でも確実にお金持ちになれる真実に迫ります。
「今、私は貯金を頑張っています」という人をみんなで応援しあう「貯金部 掲示板」を開設しました。
貯金に関する話題をみんなで語り、それぞれが貯金できる人になり、目標金額を貯められるようになることを目指す掲示板です。
↓この記事が役に立ちましたら、ひとことコメントをいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました
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